澤村伊智さんといえば、「ぼぎわんが、来る」や「恐怖小説 キリカ」などで有名なホラー作家さん。
賞もたくさん獲ってる方ですし、「ぼぎわんが、来る」は映画化も決定されているわけでございます。
で、この『ずうのめ人形』はその澤村さんの2作目になるんですね。
今回はめでたく『ずうのめ人形』が文庫化したのでご紹介できればと思います。
ではいってみましょー。
澤村伊智『ずうのめ人形』
まず表紙。表紙がこわいっっ! この本読んでいいのかっていうくらい怖いっ!
単行本と文庫で表紙が違うわけですが、それぞれ違った不気味さがありますね……。
どう?怖くない??
で、その表紙をなんとか乗り越えてページを進むわけですが。
主人公は藤間。小さなオカルト雑誌の編集部のアルバイト。
ある時、原稿の提出が遅れたまま連絡が取れなくなったライター湯水の自宅へ、学生バイトの岩田と督促に向かうことになった。
気楽な会話をしながら湯水の自宅へたどり着いた二人だったが、そこで見たものは……。
そして湯水の自宅にあった原稿が思わぬ事態を招きはじめる。
原稿にかかわる人々が次々に不可解な死を遂げるなか、藤間自身の身にも危険が迫ってくる。
原稿に隠された謎とは?そして「ずうのめ」の意味とは?
読みやすく、怖い。ホラーのお手本のような作品。
見どころ読みどころは満載です。
まずはですね、構成がすごく上手!(プロの人に失礼……すみません……当たり前なのですが)いや、ほんとに。澤村さんの文章はぐんぐん読まされちゃうというか。
もちろん相当怖くて、ページめくるの嫌だ、とか今晩トイレいけなくなったらどうしてくれるんだ、ていうくらい怖いんだけど、でもぐいぐい読まされちゃうんです。それこそ呪いにかかったように。
藤間が原稿を読み進めていく形をとっていくので、藤間の周囲で起きていることと、原稿が交互に出てくるという構成なんだけど、なんていうんだろ、もうちょっと知りたい、ていうところで切れて場面がかわってしまう、というか。
あまり書くとネタバレになっちゃうのでやめますが、後半この構成がすごく活きてくるんです。そこがまたいい。
文章の描写が細かめなので、映像が浮かんでくる感じで読みやすいところもよいですよ。
映画とかドラマを見てるような感じで読めちゃいます。
あとはね、確かにホラーはホラーなんだけど、人形が生まれた経緯とかがとっても悲しくて、そういう意味では単なる怖い本、ていうより、人の心の闇を描いた文学作品としても読めるんじゃないかと思うわけです。
闇がまた次の闇を生んでいくんですよね……あーこわ。
なんとも言えない読後感が残る。
実は、読後感は全然悪くないです。トイレいけます。
全然スッキリはしないけどね。うん、すっきりはしません。いろんな意味で。
一応事件は解決するんだけどね。
だって闇は闇を生んでくし、自分だったらどうしただろうって悩んじゃうし、こんな例はこの子に限ったことじゃなくていろんなところで発生してんだろうなとか。
赤い糸はなにを象徴してんだろうか、とかそもそもホラーってなんなんだろうとか、どんどん抽象的なこと考えちゃったりしてね。
でもね、後味が悪くないのはなんででしょね。
たぶんだけど、登場人物のキャラクターなのかな。みんなまっすぐ生きてるというか。だからかな。
まっすぐすぎて絡み合って悲劇が起こるんだけど、誰も悪意があるわけじゃない。この本においては。
悪意がないなら何やってもいいのか、ていう話かもしんないけど、なんかね、共感しちゃうというかね。
ま、読んでみてください。
人によって受け取り方は様々だと思うけど、でもいろんな読み方とか感じ方をさせてくれる本だし、ただ怖いだけ、じゃないってことはわかってもらえると思うな。
おわりに
うん、表紙は相変わらず怖いけど(いまだに表紙を下にして置いている)なんだかあったかい本で好きです。
え?ホラーなのにあったかい?おかしくない?よね。おかしいよね。
でもね、そんな感じ何です。たぶん、人は人と出会ってあったかくなるわけで。誰もが誰かを求めてる。
そういう思いが伝わってくる感じがします。
よじれるとこわいけどね。人間ってこわいね。
ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ。
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