澤村先生の比嘉姉妹シリーズをご存知でしょうか。
比嘉姉妹とは、比嘉真琴、琴子という二人の巫女姉妹と、真琴の彼氏野崎などが登場するホラーシリーズです。
全5作発売されており、一作目である『ぼぎわんが、来る』は漫画化をしたことで話題となり、さらに2018年には岡田准一さん主演の映画『来る』として公開されました。
そんな比嘉姉妹シリーズの待望の新作が2021年1月に発売されました。それが今回紹介する『ぜんしゅの跫』です。
今回は短編集となっているのですが、今までのシリーズを読んだうえで楽しむとさらに楽しめる構成にはなっているものの、これだけでも澤村先生のホラーワールドを存分に楽しむことが出来る作品です。
では、早速本作についてのあらすじやレビューを紹介していきましょう。
澤村伊智『ぜんしゅの跫』比嘉姉妹シリーズのあらすじ
この作品は全5話の短編集です。それぞれの作品名はこちら。
・鏡
・わたしの町のレイコさん
・鬼のうみたりければ
・赤い学生服の女子
・ぜんしゅの跫
それでは一つずつ簡単なあらすじを紹介いたします。
鏡
田原秀樹は、第一子の出産を間近に控えていた。そんな中、田原の取引先の息子夫婦の結婚式に参加することになった。
結婚式自体は至って普通に和気あいあいと進んでいく。しかしふとした時に、田原は自分にしか見えない光景を目撃し、一人で不安な気持ちになる。
しかし、その光景が見えていたのは田原だけではなく、新婦の友人である野崎にだけは見えているようで・・・。
そして、キャンドルサービスが野崎と田原のいる席に回ってきた。
その時新婦と野崎が話したのだが、新婦は野崎に写真を見せられる。それを見て突然新婦は急に取り乱したのだ。一体なぜなのか。
『ぼぎわんが、来る』を読んでいると深く楽しむことが出来る作品かなと思います。
わたしの町のレイコさん
高校生の飛鳥は、叔母の弥生のことが大好き。
弥生は人気オカルト雑誌の編集部で働いているのだが、その分たくさんのオカルト物語を知っていた。
飛鳥は弥生のオカルトを聞くのが大好きだった。
そんなあるとき、飛鳥はいつものように弥生の話を聞いていたのだが、それが有名な怪談『トイレの花子さん』についてだった。しかし、飛鳥が知っているのは、『花子さん』ではなく『レイコさん』だった。
飛鳥が知る噂話の中のレイコさんは、男根を欠損している奇妙の人物である。さらに、レイコさんの質問に正しく答えられないと、その人の男根を無残に切り取られてしまうというのだ。
弥生はただの噂話かなと思ったのだが、この内容を調べたところ、実はこの話にはこのようになってしまった経緯がちゃんとあったらしく・・・。
過去の事件と今がどうつながるのかがゾクゾクするストーリー展開です。
鬼のうみたりければ
野崎が、元同期で十年以上連絡をとっていなかった希代子の話を聞くところから話は始まる。
希代子は結婚し、義母の介護をしながらもつつましく穏やかに楽しい日々を送っていたのだが、ここで夫の健太郎が仕事にクビになるというトラブルが発生する。
そして健太郎はすぐに仕事を探すわけでもなく、定職につかなくなってしまった。こうして今まで楽しかった生活はがらりと変わってしまう。
何もかも辛くてどん底な気分の希代子。そんな時、健太郎が信じられない話をする。
なんと、「自分には双子の兄・輝がいて、九歳の時に神隠しにあったのだ」と言うのだ。
神隠し=北朝鮮に拉致されたと考えていたのだが、そんな時、行方不明になっていた輝が、三十年ぶりに帰ってきたのだ。
何故急に輝が戻ってきたのか、どこか不思議なストーリー展開に引き込まれます。
赤い学生服の女子
古市俊介は三ツ角大学病院に入院していた。なぜなら事故でワゴン車の下敷きになって脳にダメージを追ってしまうという重症だったからだ。
そんなある日、古市がいた四人部屋で一緒に入院していた一人・水品が亡くなったと告げられる。
水品は生前、『赤い学生服の女子に会ってくる』と口にしていた。
実はこの病院には『赤い学生服の女子』に関する噂が流れていた。
どうせただの噂だろうと思っていた古市も赤い学生服の女子を目撃する。そして驚くことに古市と一緒に目撃した蒲原が翌朝亡くなっていたのだ!
しかし古市は赤い学生服の女子の正体に思い当たる節が・・・噂と死の因果関係とは、学生服の女子は一体何者なのか。
病院と怪談話という鉄板ネタではありますが、やっぱりぞわっとさせてくれるのはさすがです。ホラー好きにはたまらない作品なのではないでしょうか。
ぜんしゅの跫
ちょっとしたことがきっかけで琴子は真琴に怪我を負わせてしまった。そのことを琴子は後悔していた。
後悔した琴子は、その償いとして真琴の受け持っていた仕事を全て自分が一手に引き受けた。その仕事の中には『足音の怪』というものがあった。
実は半年前から杉並区近辺で連続した事件が発生していたのだが、この事件の共通点は『足音だけは聞いた』という点。
どの被害者たちも加害者の姿は見ていないのに、足音だけは聞いたと揃って言うのだ。
この案件は野崎と真琴が全く手がかりを掴めていない案件として持っていたものだった。
そこで予定がない夜、琴子は野崎と共に事件解決のため、見回りを開始したのだが、そこで遭遇してしまったものは・・・。
『跫』はあしおと、と読みます。この見えない通り魔は一体どうやって姿を見られないようにしていたのか、足音の正体は何なのか、ゾクワクが止まらない内容です。
澤村伊智『ぜんしゅの跫』比嘉姉妹シリーズの口コミ【読者の感想】
それではこの作品を実際に読んだ方々の感想や口コミをご紹介致します。
『澤村伊智さんのホラーは特に比嘉姉妹シリーズは大好きなので今回の野崎と真琴の関係性は非常に良かったです。
そしてそこから派生するホラー展開も非常に良かったです。短編なので気軽に読めるのも楽でした。澤村伊智さんのホラーは外れがなくて素晴らしい』
『ものすっごく怖いという感じはないのですが、後ろがゾワゾワしてくるような恐怖を感じました。読み進めていくと、フッと後ろが気になってくるようで、読みながら何度も振り返ってしまいました。
足音しかしない怪物の正体が気になって気になって仕方ありませんでした』
『怖いけど覗きたくなる。気になるけど怖くてページをめくれない。
けどやっぱり気になってめくる。その日は一人でシャンプーができない。
すごく面白いです。これだけ葛藤をしながら読めるということは、文字が映像としてしっかり私たち読者に語り掛けてきているのだと感じます』
どのホラー好きもしっかりと怖かった、面白かった、はずれがなかったというくらいの素晴らしい短編集です。
大きな事件ではなく、日常に潜む恐怖が絶妙
短編集ということで起承転結のスピード感があるため、どうしようもないホラーは出てこない印象ですが、だからこそ身の回りでも起きるのではないかというゾクゾク感が逆に怖さを引き立てています。
また、この短編集の中に出てくる登場人物は、今までの4作に出てくるサブキャラだったり、今までの事件ありきで読むと楽しい部分も多いので、既存作を先に読んでおくことをお勧めします。
しかし、この作品だけを呼んでも良質なホラーとして、そしてどこかミステリとしても楽しめるので安心していただければと思います。
口コミにもあり私も強く思うのですが、澤村先生のホラーははずれがありません。
文字の擬音が耳の後ろをすーっと通り抜けていく、少し部屋が寒く感じるような素晴らしい作品たちです。
深夜にBlu-rayを借りて一人でホラー映画を観るのが好きな方々がこの本に夢中になりそうだと感じました。
本当に内容が面白すぎて眠れなくなります。恐怖で眠れなくなる人もいると思いますが。
明日仕事で早く眠らないといけない日や、台風等で外がうるさくて怖い夜に読むのはおすすめしません。
良くも悪くも眠れなくなります。ぜひ比嘉姉妹シリーズの最新作、手に取ってゾクゾクワクワクしてみてください。
比嘉姉妹シリーズの読む順番
①『ぼぎわんが、来る』
②『ずうのめ人形』
③『ししりばの家』
④『などらきの首』
⑤『ぜんしゅの跫』
です!
コメント
コメント一覧 (2件)
うちの奥さんがこのシリーズ大好きで、5作全部持ってるのですが…
積ん読の中に埋もれてしまっており、結局未だに手をつけてないシリーズです
こうやって改めてあらすじを見てみると、また更に気になる度が増すもんですよね 今読んでいる緋色の囁きが終わり次第、ぼぎわん..からとっかかろうと思いますw
時間が全然足りない( ˙-˙ )
こはるさんこんにちは〜(*’ω’*)
5冊揃っているなんて素晴らしいじゃないですか!
このシリーズはほんと面白いので、ぜひぜひ読んでみてくださいな!
時間は……足りませんよね……私もです……( ;∀;)