今回は、先日 2016/9/22に発売された雪富千晶紀(ゆきとみちあき)さんの『死と呪いの島で、僕らは』について、感想やあらすじなどをご紹介させていただきます。
今作は2014年に『死咒の島』というタイトルで刊行されたのですが、今回文庫化にあたって『死と呪いの島で、僕らは』というタイトルに変更されました。
のちに説明しますが、この変更はとても良かったと思います。私自身、このタイトルと表紙絵でビビッときてしまったわけですから。
というわけで、早速ご紹介へ参りましょう!(●>ω<)っ)
雪富千晶紀『死と呪いの島で、僕らは』
舞台となるのは、伊豆諸島の東に位置する須栄島(すえじま)。
ある日この島の砂浜に、長い間海の底に沈んでいたと思われる巨大な客船が打ち上げられ島は騒然となります。
「一体どうしてこんなものが、どうやって砂浜に打ち上がるのか?」
そんな矢先、漁師の一人が行方不明となり捜索が開始されます。
そしてそれが、この須栄島に降りかかる災いの始まりだったのです。
物語の主人公は、高校生の白波杜弥(しらなみもりや)。彼は同級生の打保椰々子(うつぼややこ)に密かな思いを寄せていました。
しかし椰々子は十六年前に島に流れ着いた女の子であり、クラスメイトからはもちろん、島の人間誰もが彼女に話しかけようとはしなかった。
まさに「いないもの」のように扱われていたのです。
クラスの誰からにも「いないもの」のように扱われる少女・・・
なんか綾辻行人さんの『Another(上) (角川文庫)』に登場する見崎鳴(みさきめい)ちゃんを思い出しますねえ。。(ω`●)
というように、今作はこんな二人の少年少女を中心とした「青春ホラー小説」となります。
東京都の果ての美しい島。少女、椰々子は、死者を通し預言を聞く力を持ち、不吉だと疎まれている。高校の同級生で名家の息子の杜弥は、そんな彼女に片想い。
しかし椰々子が「災いが来る」という預言を聞いた日から、島に異変が。浜辺に沈没船が漂着し、海で死んだ男が甦り、巨大な人喰い鮫が現れる。
ホラーの他にもいろんな要素が満載の青春小説!
今作はオカルトや民俗学、怪談、神話、呪い、ミステリなどなど様々な要素が入り混じった贅沢な作品となっております。
キーワードだけ見れば、明らかにおどろおどろしい雰囲気が満ち溢れていますよね。
では怖いのかというと、これが怖くないのです。
いわゆる日本特有の、じっとりねっとりしたジメジメした怖さというものはありません。
一言でいえば、「呪われた島を舞台にしたボーイミーツガール作品」という感じですね。
なので読後感は良いです。まるでホラー小説を読んだような気がしません。
ホッとしました・・(´ω`。)
ここで単行本と文庫本の表紙を比べてみましょう。
〈単行本〉
〈文庫本〉
とても同じ作品だとは思えませんよね。
タイトルと表紙絵のどちらも、文庫本の方が「青春」っぽさを強く感じます。
まさに物語の内容は文庫本のイメージがぴったりです。今回の文庫化にあたって、この部分にとても感動しました。
タイトルと表紙絵ってやっぱり大事だよなぁ、、と改めて思った次第です(●´I`)
ホラー小説大賞〈大賞〉作品はだてじゃない!
今作は第21回ホラー小説大賞で〈大賞〉を受賞された作品です。
それだけでも「面白いだろうな」と思うのに、この文庫版の帯をみてくださいよ。
選考委員である綾辻行人さん、貴志祐介さん、宮部みゆきさんが全員一致で大賞に選んだんですよ。
しかも裏には
綾辻行人氏「モダンホラーの王道、”ホラー愛”に満ちた力作」
貴志祐介氏「豊かな想像力と描写力。即戦力ルーキーとしてホラー・シーンを牽引するような活躍を期待」
宮部みゆき氏「候補作のなかでも頭ひとつ抜けていた。旨いなあ。」
『死と呪いの島で、僕らは』 帯より引用
なんて書かれているんですよ。
これはズルいですよね!この帯を見て、一体どうやったら買わずにいられるというんですか!
しかも帯がゴールドで輝いてますからね。本屋さんで平置きされている中でとても目立ってましたし。
完全に帯で買わされた形になりましたが、読後感も良かったので大満足でございます(●´ω`●)
というわけで今回は、雪富千晶紀さんの『死と呪いの島で、僕らは』を簡単にご紹介させていただきました。
途中で説明したように、今作はホラー小説でありながら「日本らしいジメジメした後を引くような怖い作品」ではありません。
しかし「数々の災いが起こる島で繰り広げられる少年と少女の物語」としてとても面白く、怖いのがあまり得意でない方でも十分に楽しんでいただける作品だと思います。
どうぞ、参考にしてただければ幸いです(●´∀`)ノ
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