先日、米澤穂信さんの「古典部シリーズ」の最新刊『いまさら翼といわれても』が発売されました。
私も大好きなシリーズなのでね、さっそく読ませていただいたんですが、ちょっとこれはやばいですね。
すばり、シリーズ最高傑作かもしれないです。大げさとかではなく。
米澤穂信『いまさら翼といわれても』
今作は
1.「箱の中の欠落」
2.「鏡には映らない」
3.「連峰は晴れているか」
4.「わたしたちの伝説の一冊」
5.「長い休日」
6.「いまさら翼と言われても」
の6編からなる短編集です。
今回は、その中の4編のあらすじを少しだけご紹介させていただきましょう。
[aside type=”normal”]細かく書くとそれだけでネタバレになってしまいそうなので、大まかにあらすじを説明しています。[/aside]
1.「箱の中の欠落」
奉太郎たちが通う神山高校で行われた生徒会選挙。
その投票結果がおかしなことになっている、ということを、選挙に関わった福部里志が奉太郎に相談するお話。
いきなりの名短編です。
このお話では「犯人は誰か?(ホワイダニット」」「なぜ行ったか?(ホワイダニット)」を完全に省き、「どうやって犯行を成し遂げたか」、つまり「ハウダニット」のみに焦点を当てた物語になっています。
他のものを省き、「ハウダニット」にだけ集中出来るからこその面白さを味わえます。
一体犯人はどうやって厳重な管理下の中、投票を操作することができたのでしょうか?
というミステリなんですが、そこはやっぱり古典部シリーズ。
ミステリであり、素晴らしき青春の1ページでした。
2.「鏡には映らない」
このお話の探偵役となるのは伊原摩耶花。解決すべきは、中学時代に奉太郎が起こしたある事件。
なぜ奉太郎は、皆で作った卒業制作にあんな手抜きをしたのか?
おかげで奉太郎は中学の誰もから冷ややかな目で見られることになった。
摩耶花はあの時、確かに奉太郎はそういうことをしてもおかしくない人物だと思っていた。しかし、古典部で奉太郎と一緒に行動してきた中で、摩耶花は違和感を覚える。
「奉太郎は皆で作る卒業制作に、理由もなくあんな手抜きをするようなヤツではない」、と。
摩耶花は独自に調査を始めます。
今回はミステリ用語で言う「ホワイダニット」、つまり「なぜこんな事をしたのか?」という動機を探るお話。
これね、最高でしたよ。
謎解き過程も真実も当然面白いんですけど、やっぱり青春小説なんですよね、これ。古典部にみんながどんどん好きになっていく。ああ、愛おしい。
5.「長い休日」
古典部シリーズの主人公・折木奉太郎は『やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に』ということをモットーにしています。
まさに奉太郎そのものを表すような言葉であり、私自身もシリーズの最初から「奉太郎はそういう人物なのだな」と当たり前に思っていました。
そして今回は「なぜ奉太郎はそのような事を言うようになったか」、に迫るお話です。
それには、奉太郎が小学生の時に経験したとある出来事が関係していて・・・。
まさかここにきて、シリーズ6作目にして奉太郎という人物の核心を突く物語が読めるとは。
と感動したと共に、なんて苦いんだ、と思いました。ああ、実に古典部シリーズらしい苦味。たまりません。
6.「いまさら翼と言われても」
神山市主催の合唱祭。そこでソロパートを任されている千反田えるが、当日になっても会場に現れない。
合唱が始まるまで残り数時間。千反田えるはなぜ現れず、そしてどこに行ったのか。
奉太郎は里志や摩耶花たちの証言を元に、千反田えるの居場所を推理していく。
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読後感やばい。
なんていうお話を最後に持ってくるんですか。
苦い。苦すぎるよ米澤さん。
わかりますよ、これが古典部シリーズの良さなんですけど、いつにも増して苦すぎやしませんか(´ノω;`)
でも、最高でした。やっぱり古典部シリーズが大好きです。
神山市が主催する合唱祭の本番前、ソロパートを任されている千反田えるが行方不明になってしまった。夏休み前のえるの様子、伊原摩耶花と福部里志の調査と証言、課題曲、ある人物がついた嘘―折木奉太郎が導き出し、ひとりで向かったえるの居場所は。
古典部シリーズ好きには必読の、最高の一冊でした。
古典部シリーズを一言で言うと「ミステリの名を借りた青春小説」という言葉がピッタリです。
私も最初はミステリを読もうとこのシリーズを手に取ったのですが、知らず知らずのうちに「上質な青春小説」として読んでいることに気がつきました。
しかし、青春小説といっても「爽やか」「キラキラ」「汗と涙と友情」とかそういうキーワードは全く当てはまりません。
古典部シリーズで描かれる青春は非常に「苦い」。この苦味がこそが最高の魅力なのです。
そして今作『いまさら翼といわれても』はその苦い青春が特に表現されています。
さらに古典部メンバー4人の過去と未来を知ることができ、前よりももっと4人を好きになる。もう後戻りはできません。
「古典部シリーズは今まで読んでいたけど今回はどうしようかな?」と思っている方は、もう迷わず読んじゃってください。
最高傑作”かもしれない”
私がタイトルで最高傑作”かもしれない”、と言い切っていないのには理由がありまして。
それは、シリーズ作品全部が最高傑作だからなんですよ。比較ができない。
最新刊が出るたびに「これはシリーズ最高傑作だ!」って思っちゃうんですよね。
シリーズを追うごとにどんどん古典部メンバーを好きになっていき、メンバーの新たな一面を知ることができて、よりシリーズに対する愛情が深みを増していく・・・。
だから読むたびに上乗せで面白く感じちゃうから、毎回最高傑作ってことになっちゃうんだと思うんです。助けて。
必ず順番に読んでね。
というわけで、今作『いまさら翼といわれても』は今まで古典部シリーズを読んできた方には間違いなくオススメできるのですが、「今回が古典部シリーズ初めて!」という方には決してオススメできません。
シリーズを順番に読み、古典部4人の出会いとこれまでの経験、それぞれがどのような人物でこれまでに何があったか、を知っているからこそ最大限に楽しめる作品となっているのです。
ちょっと大変かもしれませんが、本当に面白いシリーズですので後悔はさせません。しかも非常に読みやすいので、どんどん読み進めることができますよ。
読む順番は
1.『氷菓 (角川文庫)』
2.『愚者のエンドロール (角川文庫)』
3.『クドリャフカの順番 (角川文庫)』
4.『遠まわりする雛 (角川文庫)』
5.『ふたりの距離の概算 (角川文庫)』
6.『いまさら翼といわれても』
です。
こちらの記事も参考にしていただければ幸いです。
➡︎【氷菓】米澤穂信「古典部シリーズ」の順番や感想、あらすじなどをご紹介!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
それでは、良い読書ライフを!(* >ω<)=3
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