海外ミステリー小説

『闇という名の娘』- ガラスの天井に阻まれた女性刑事の物語を描く北欧ミステリ

64歳の女性警部であるフルダ。

定年まであと数ヶ月となり、人生の終わりについて考えていたところ、早期退職を促されてしまった。

自分が担当していた事件は、既に若手に振り分けられており、部屋もあと2週間で明け渡さなければならない。

それでもフルダは、期日までは何か仕事をしようと、未解決事件の再捜査を始めた。

あるロシア人女性の溺死事件で、前任者による捜査では「自殺」という結論が出されていた。

しかしフルダが少し聞き込みをしてみると、不可解な点がいくつも出てきた。

真相究明のために、単身で捜査をするフルダ。

しかしこれが、大きな悲劇を巻き起こすことになり―。

アイスランドの人気ミステリー「フルダ・シリーズ」の第一弾!

優秀な女性刑事の孤立奮闘

『闇という名の娘』は、退職を目前に控えた女性刑事フルダの物語です。

退職するその日まで、仕事に懸命に取り組む姿、人生を振り返る姿などが描かれています。

ベースは刑事ミステリーですが、ヒューマンドラマとしての色合いも強い作品です。

見どころは、フルダが捜査で苦心するところでしょう。

フルダは刑事最後の仕事として、エレーナというロシア人女性が溺死した未解決事件の再調査を選びました。

この事件は、前任者には「自殺」として処理されていましたが、フルダにはそうは思えませんでした。

頭部に傷があったり、自殺の動機がなかったりで、むしろ他殺の匂いがプンプンするのです。

そこでフルダは、売春組織の関係や黒幕の存在などを徹底的に調べ上げ、事件の核心に近づいていきます。

前任者が簡単に「自殺」と処理したことを考えると、フルダはとても優秀ですね。

ところが、事件はスムーズには解決しません。

同僚たちが非協力的すぎて、フルダが孤立奮闘せざるを得なくなり、ミスも増え、状況がどんどん悪くなっていくのです。

この展開にはハラハラドキドキし、「え、フルダ、一人で大丈夫?」「周りの人たちは、なぜこんなに冷たいの?」と、フルダのことが心底心配になります。

そして最後の最後で、とんでもない大どんでん返しが起こります。こここそが、本書最大の見どころ!

「ミステリーで、こんなオチって、ありえる?」と、目を疑いたくなるほどの衝撃的なラストですので、ぜひフルダの孤立奮闘を見た上で、このシーンにたどり着いてください。

読了後はきっと、唖然、茫然として、心の整理に勤しむことになるでしょう。

悪しき風習との孤独な戦い

フルダの冷遇は、かなり以前から行われていたようです。

有能で数々の難事件を解決させてきたにもかかわらず、地位は警部止まり。

しかも「2週間後には退職しろ」と一方的に勧告される有様です。

いわゆる「ガラスの天井」、女性の地位を実績に関係なく頭打ちにするという、悪しき風習ですね。

フルダは甘んじて受けるものの、心の奥底ではこの「女性を軽んじる」という考え方に、強い抵抗を感じています。

そしてその思いが、彼女が担当する事件への向き合い方にとてもよく出ています。

たとえばエレーナの事件では、簡単に「自殺」として片付けられたことに納得できず、「実際には売春婦として男性に利用され、捨てられたのでは?」と考え、単独で必死に調査を進めます。

またそれとは別に、フルダは轢き逃げ事件で、加害者の女性を見逃します。

なぜなら轢き逃げの被害者は小児性愛者であり、加害者女性の息子も餌食になっていたからです。

彼女は子供たちがこれ以上餌食になることが耐えられず、発作的にその小児性愛者を轢いてしまったのです。

これを知ったフルダは、事件を解決させることよりも、彼女を見逃すことを選びました。

もちろんこの選択は、刑事としては間違っています。

それでもフルダは、女性が泣き寝入りせねばならない現状に我慢がならず、彼女なりの方法で救おうとしているのです。

署内に誰も協力者がいない中で、孤高の戦いを続けているのです。

その姿はとても潔く、思いやりにあふれていて、それでいて痛々しい……。

そして衝撃のラストシーンも、フルダのこの戦い方があるからこそ、読者の心に強く強く突き刺さることになります。

第二弾、第三弾、そして映画化も?

北欧ミステリにはずっしりと重いイメージがありますが、本書はその筆頭と言えるかもしれません。

そのくらいテーマが重く、社会の闇や心の闇の深さを感じさせる作品です。

しかも物語の合間合間に、フルダの過去も描かれているのですが、これがまた暗く悲しい。

一人娘は13歳で自殺し、夫とは52歳の時に死別し、フルダはもう長いこと孤独に生きているのです。

職場はもちろん家庭にも居場所がなく、行間からはその寂しさや息苦しさが滲み出ています。

だからこそ、女性が安心して過ごせるよう配慮しながら仕事をするフルダの姿は、読み手の胸を熱く震わせます。

とにかく心に重く響く作品ですので、日頃から北欧ミステリーの重さを好む人であれば、夢中になって読めること間違いなし!

そして『闇という名の娘』は、シリーズの第一弾であり、全部で三部作となっています。

ラストまで読んだ方は「え?この続きがあるの?」と思うかもしれませんが、ある仕掛けが施されているのです。

いずれも既に日本語版が出版されていますので、『闇という名の娘』の読了後に、ぜひ読んでみてくださいね。

また『闇という名の娘』は、アメリカでも話題になっており、映画化も決定しているそうです。

完成後には、ぜひ日本でも上映してほしいですね!

ABOUT ME
anpo39
年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)
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