スティーヴン・キング氏が学生時代に執筆した、マニアにとっては非常に貴重な「青いエアコンプレッサー」。
日本では長く翻訳されることのなかった、インターネット上での男女のやり取りをリアルに描く「ネット」。
ホロコーストについて描いた小説が大ヒットし、アメリカのテレビ番組に呼ばれたイギリス人作家の苦悩を描く「ホロコースト物語」。
ロンドンで起きた奇跡をときにユーモラスに、ときにホラーテイストを交えて描く「ピジンとテリーザ」。
その他「アエリアーナ」、「世界の終わり」、「墓場のダンス」、「炎におぼれて」、「道連れ」、告げ口心臓」、「愛するお母さん」、「キーパー・コンパニオン」の計12篇収録しています。
キング氏のファンサイトの管理人が、キング氏にゆかりのある小説家たちに執筆を依頼したという貴重なアンソロジー短編集です。
闇のシャイニング リリヤの恐怖図書館
世界最大のスティーヴン・キング・ファンサイトを20年間運営してきた編者が、キングゆかりの著者たちに自ら執筆・掲載の交渉を重ねて編み上げた傑作ホラー短編集。
スティーヴン・キングのファンサイトはネット上にたくさんありますが、その中でも最大のファンサイトを20年間運営してきた管理人のハンス=オーケ・リリヤ氏が編集したということで、今作は日本でも話題になりました。
キング氏未発表の非常に貴重な短編も収録されており、ファンにとっては必見です。
その他にも、キング氏に影響を受けた、また深い関わりのある小説家たちの短編も一度にまとめて読むことができます。
キング氏の独特の世界観やホラー小説を楽しみたいという方は、ぜひこの短編集を読んでお気に入りの作家を見つけてみてください。
日本では無名な作家の作品もあり、意外な出会いがあるかもしれません。
中でも注目してほしいのがヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト氏の「キーパー・コンパニオン」です。
リンドクヴィスト氏はスウェーデンのキングとも呼ばれており、青春小説とホラー小説を掛け合わせた話題作を次々に発表しています。
日本でも「モールス」などが有名です。このアンソロジーのために書き下ろしたという今作は、人気作家が集まるアンソロジーのラストにふさわしい名作です。
「クトゥルフの呼び声」という実際に大人気のゲームを元にし、リアルな若者の感性を描くホラーに仕上がっています。
他の作品も随所にキング氏へのリスペクトが見られるものばかりで、ファンなら思わずクスリと笑ってしまうかもしれません。
また、エドガー・アラン・ポーといったキング氏に影響を与えた古典ミステリ作家の短編も収録されています。
キング氏の作品をいくつか読んでから本作を読むとより楽しめますが、ホラーや不思議な話が詰まった短編集を気軽に読みたいという方にもおすすめです。
ホラーマニア、キング氏のファンにとってはたまらない一冊。
編者のリリヤ氏はキング氏のファンサイトを20年間運営しており、この度のアンソロジー発行に至りました。
リリヤ氏本人が執筆の依頼をしてやっと出来上がったという本書ですが、その熱量が読んでいる側にも伝わってきそうな勢いです。
2020年9月に日本でも翻訳されたものが出版されました。
扶桑社からホラーやファンタジー小説が発表されるのは久しぶりとのことです。
扶桑社は雑誌やムック本などの出版が多く、かなりのマニアでなければ本作は見つけにくいかもしれません。
大型書店にしか置いていないという声もありましたので、気になる方はネットショップもチェックしてみてください。
アンソロジーということで、海外のホラー小説になじみがなければキング氏以外の作家の名前を知らない…という方も多いでしょう。
しかしリリヤ氏がぜひ執筆してほしいと依頼した作家の名作ばかりが揃っていますので、読んでみる価値はある一冊です。

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