ファンタジー

晃人『闇の奴隷』- 闇の奴隷と化した娘が辿る壮絶な冒険譚!

凶暴な魔物たちによって理不尽な侵略を受け続ける人間たち。

そんな魔物たちの頂点に立つ魔王を打ち払うべく、「光の英雄」と呼ばれる4人の勇者たちが立ち上がります。

いよいよ魔王討伐の旅へと出発する前夜、彼らとは無縁の農家の娘であるクレイは、国の催す前夜祭で彼らの姿をただ見つめることしかできませんでした。

非力な娘は彼らに全てを託し、自分自身は変わらない毎日を過ごします。

しかしある日の夜、突然経験したこともない痛みを全身に浴びた彼女は頭の中で禍々しく響く声に魂を支配されてしまいます。

なす術もなく絶対的服従を迫られた彼女は魔王と自称する声の主からある残酷な命令を受けることに。

それは「光の英雄たちを殺せ」というものでした。

魔王の強大な力を与えられたクレイは、苦渋の決断で魔王の命令に従い、光の英雄たちを殺害するべく旅に出ることを決意。

過酷な運命を辿ることになった1人の娘が英雄たちと対峙する時、悲しくも美しい物語が動き始めます。

本記事は晃人様より依頼されたものになります

魅力的に練り上げられた「魔法」のある世界

本作の魅力のひとつは細かく設定された「魔法」の要素です。

邪悪な魔のものである魔物はその凶暴な性格と力で人々を脅かしています。

そしてそれらを唯一消滅させることができると言われている「光の魔法」を操る4人の英雄たち。

主人公であるクレイも少しは魔法を使えるのですがその力は弱く、戦いの経験もない彼女には魔物に対抗する術を持たないのでした。

というのも彼女の住む世界では魔法を習得するには血の滲むような努力が必要で、「魔導書」と呼ばれる魔法の解説書を読み解かなければならないのです。

さらに魔導書に書かれている文字は読む人間によって違って見えるため、習得する当人たちが一から独力でその特殊文字を読み進めるしかありません。

そのほかにもせっかく魔法を会得しても使用の際に「真言」と呼ばれる各魔法固有の言葉を頭の中で唱えなければならない、魔王の使う「闇魔法」は人間には使えないなど、細部まで丁寧に練り込まれた設定が存在します。

この設定が魔法の偉大さと重要性を効果的に表し、光の英雄たちの強大さを物語っています。

そんな彼らと魔王に支配された主人公・クレイが繰り広げる種々多様な魔法戦には読む手を止められないほどの臨場感があり、夢中になって楽しめること間違いなしです。

「命」と「痛み」の物語

本書は過酷な運命を余儀なくされた娘が辿る「命」と「痛み」の物語とも呼べます。

突然有無を言わせぬ邪悪な力で自由を奪った魔王からの命令によって光の英雄たちを殺さなければならなくなった主人公・クレイ。

自分たち人間を魔物から守るために命をかけて戦う彼らに刃を向けることに彼女は当然、大きな迷いと罪悪感に苦しみます。

作中ではたびたび、それまではクレイの視点から語られていたのが、光の英雄たちからの視点に変わります。

それぞれの背景、現在に至るまでの決して平坦ではなかった道のり、愛おしく思う家族の存在。

彼らの視点から彼らの人生を追体験することで、読む側は彼らに人間としての温もりを感じ、彼らも懸命に生き抜いてきた末に今この場所に立っているのだと認識するでしょう。

そのように命の存在と重みを「付与」することで、彼らとクレイの戦いに一層悲痛な思いを抱き、クレイ自身が抱いているであろう葛藤や良心の呵責をありありと感じることになります。

特に光の英雄の一人で、思いやりと優しさに溢れた女性でもある僧侶・アインとの戦いが描かれた章は必見です。

その「痛み」こそがこの物語の筋骨に沿って流れる「血」となっており、一気に読み進めてしまうほど本書を生き生きとさせる彩となっているのです。

闇の奴隷と化した娘が辿る壮絶な冒険譚

魔物を唯一消し去ることができると言われている光の魔法を駆使して世界を守ろうとする4人の勇者たち。

そして彼らに倒されるはずだった魔王がとり憑いたのは1人の農民の娘でした。

本書はそんな悲運な娘・クレイを主人公に、魔王の命令のもと勇者殺害のため旅立つ彼女の冒険譚となっています。

全体的には辛く悲しい空気の中物語は進んでいきますが、束の間訪れる勇者たちとの温かいやりとりやちょっとしたユーモラスな会話が適度な息抜きとなって、読み進めていく助けとなるでしょう。

また、さまざまな種類の魔法が作中に登場し、瑞々しい描写で書かれているそれらを使った激しい攻防戦には臨場感があり、さながらアニメを見ているかのように頭の中で次々と映像として流れていきます。

そのため普段小説を読まない方でもとても読みやすい作品となっていておすすめです。

そして物語終盤、彼女たちが生きる魔法世界における隠された事実が明らかになるとともに、クレイが辿り着く結末には胸が熱くなること必至です。

罪深く長い旅路の果てに彼女が見せるあるひとつの意志に読者は心揺さぶられ、全く違った世界の話を読んでいたはずなのにどこか共鳴し、勇気づけられることになるでしょう。

なので、今、生きることに少なからぬ苦しみを感じている人、痛みを感じながらも懸命に日々を過ごしている人たちにもこの小説をおすすめできます。本書が1つの救いを提示してくれるでしょう。

晃人氏著『闇の奴隷』、ぜひご一読ください。

1章までならいつでも試し読みできる!

ありがたいことに、この作品は1章までならいつでも試し読みできます。

しかも今なら数日間無料でダウンロードでき、一冊丸ごといつでも読めます!

ぜひお気軽に読んでみてくださいな!(*’▽’*)

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anpo39
年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)
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