『ワトソン力』-主人公と読者がリンクする?他力本願で解決する本格ミステリの詰め合わせ!

大山誠一郎先生と言えば、昨年2020年冬、浜辺美波さんが主演を務めたドラマ「アリバイ崩し承ります」の原作者としても有名なミステリ作家です。

「アリバイ崩し~」は『本格ミステリ・ベスト10』でも1位を記録する作品で、私もドラマを全話見ましたが、割と深夜枠だったのに本格的なミステリが楽しめたので毎週楽しみにしていました。

時間と場所、一見アリバイがあるような事件の裏をかいていくストーリーがクセになりつつも、どこかコメディタッチで見やすい印象でした。

そんな大山先生の作品で今回ご紹介するのは『ワトソン力』です。

『ワトソン力』は「アリバイ崩し~」の後に発売された大山先生の最新作の小説(2021年3月現在)で、こちらもかなり評価が高く話題となっているのです!

むしろ「アリバイ崩し~」より良かったという意見もあるレベルの秀作とされています。

そんな『ワトソン力』のあらすじや口コミ、魅力を余すことなくご紹介いたします。

目次

大山誠一郎『ワトソン力』のあらすじ

警視庁捜査一課に所属する和戸宋志。彼は捜査一課という華々しい部署に所属しているものの、正直あまり目立った手柄がなかった。

しかし、そんな和戸にはある特殊能力があった。それが、『ワトソン力』。

このワトソン力というのは、和戸の傍にいる人々の推理力を飛躍的にアップさせるという何とも不思議な能力だったのだ。

和戸が謎に直面すると、そばにいる人間が必ずワトソン力を発揮して無事に事件を解決してくれる。

つまり、ホームズはワトソンがいるから事件をうまく解決できていたのでは・・・という何とも妙なからくりを仮定した力なのだが、これがまたすごい。

7つ+1つの事件に遭遇する和戸。どれも人が殺される。その殺人現場に残されたダイイングメッセージや、どう考えてもあり得ない雪の日の犯罪、バスジャックされたバス内にあった死体。

しかし、この事件を解決するのはいつも和戸ではない。和戸の周りの人物たちであり、それぞれのストーリーで名探偵が変わっていくのだ。

さぁ、主人公は一切解決しないという新しい形のミステリが今、幕を開ける!

 

あらすじを見てもわかる通り、今までにないタイプの作品だという事がわかります。

ほんのりSFチックなのですが、事件やアリバイなどは本格的。しかし、解決する人物が事件に居合わせた人の違いによって変わってくるので、それぞれの話し方や考え方から解決へと導いていくのです。

そのため1つの小説なのにたくさんの名探偵がいて、1冊で何倍もおいしいミステリとして確立しています。

合間合間で読みたい人にはお勧めです。

大山誠一郎『ワトソン力』の口コミ【読者の感想】

それでは実際にこの本を読んだ方の感想や口コミをご紹介いたします。

 

『気楽に読め、こんなにほっこりするミステリは初めて読みました。非常にほんわかしたストーリーが各々で繰り広げられます。
内容はミステリ系であるため犯人は誰なのか考えながら読み進めることとなります。
通常のミステリにはない観点で物事を考えることができる作品です』

 

『名探偵のホームズが好きなので、ワトソンの言葉に釣られて拝読しました。
推理モノにしては主人公の設定が面白いなと思いますが、能力ではなく無意識のうちにできたらさらに良かったのではないかと思うので、if世界線の話も作って欲しいと思いました』

 

『読んでいてストーリー的に非常に面白さを感じさせる作品だと思います。
内容がかなり凝っている一面もあり、予想外な展開に興味を惹かれました。
個人的な見解ですがアリバイ崩しの作品よりも続編を期待してしまいました』

 

『ストーリーよりもアイデアが勝っているようなところがありました。
単純にミステリ魂をくすぐられるので、ミステリ好きには純粋に楽しめる本だと言えます。
キャラクターも魅力的で特に主役なのにほぼ物置状態の和戸さんの奇妙な存在感が良かったです』

やはり「ワトソン」という単語から自然とホームズを彷彿とさせ、ミステリとして謎解きを楽しみたいという人が多い印象でした。

そして、その期待をしっかりと裏切らないつくりに感動する意見が大部分を占めています。

本格的なミステリに最近出会えずモヤモヤしていた人でも満足する内容となっています。

まるでお菓子の詰め合わせのようなおいしい作品

このストーリーの醍醐味はやはり解決者が事件により違う事、主人公が最初から最後までいい塩梅に脇役なところでしょう。

私たち読者は和戸目線で事件を見ている感覚に陥ります。

そして、周りの人物が難なく解決していく姿は愉快でどこか痛快です。

解決する人物がそれぞれのストーリーで違うのですから、解決までの道筋も口調も、そして性別も変わってきます。

つまり、1冊の本の中でたくさんの名探偵に出会えるお菓子の詰め合わせのような作品なのです。

例えばこの事件を1つ前の名探偵が解いていたらどうなっていただろうか、と空想するのも楽しいですし、自分が和戸だった場合に推理してみるという楽しみ方もあります。

また、あまりにも和戸が主人公なのに脇役感があるところが読者としても感情移入しやすく、ある意味普通の人間である和戸と自分たちを重ね合わせることによってこの本への没入感を高めています。

起こっている事件は殺人ですし、もう少し暗くなってもおかしくない内容なのですが、不思議な世界観によって殺人特有の血なまぐささやグロテスク感、シリアス感も薄れているので何かの合間にサクサクっと読めてしまいます。

通勤時間や通学時間の少しの合間を見てあっという間に世界に溶け込めてしまう名作でしょう。

そして、ホームズがもしもワトソンがいたから名探偵になっているのだとしたら、もしこの「ワトソン力」が存在するのだとしたら・・・と考えながらホームズの作品を読んでみると、また違った気付きが出来るのかもしれません。

面白さを詰め込んで飽きさせない素晴らしい本作を是非一度読んでみてください!

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)

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