海外ミステリー小説

『ワニの町へ来たスパイ』- アメリカ本国でも大人気の、型破りなミステリシリーズ1作目

中央情報局(CIA)の凄腕秘密工作員・フォーチュンは、任務遂行のため潜入先でスパイ活動を行っていた。

しかし、そこで派手に暴れてしまったことが原因となり、何者かに狙われる身となってしまう。

身の危険を感じ始めた彼女の所属先であるCIAは、フォーチュンにルイジアナにあるシンフルと呼ばれる田舎町への一時潜伏を命じた。

その町では、”元ミスコン女王の司書で、趣味は編みものをすること”という、彼女とは正反対の人間を装うことが求められ、なるべく静かに暮らすことを指示されていた。

しかし、現地へ到着するや否や、住む家の裏の川で人骨を発見してしまう。

平穏な生活とは裏腹に、またもや波乱の事件に巻き込まれた彼女は、今後どうなってしまうのだろうか……。

小さな町の事件が巻き起こす、ドタバタミステリーをお楽しみください。

個性的な登場人物が創り出す、ユーモラスなミステリー

この本では、CIAに所属する秘密工作員(スパイ)であるフォーチュンという美しい女性が主人公となって、物語が進行していきます。

フォーチュンはスパイという職業上、命の危険に関わる任務を日々遂行しています。

彼女がルイジアナの小さな町に潜伏することになったのも、マフィアから狙われることを危惧したCIAからの命令だったためです。

冒頭から彼女の経歴や派手な人間性を知ったことで「小さな町でも何かやらかしてしまうのでは?」という不安と期待感を読者に感じさせ、あっという間に物語の世界観へと引き込まれます。

軽快なテンポで物語が進んでいくのが本書の最大の特徴といえますが、小さな町で巻き起こる事件の偶然性や個性的な登場人物の存在にも目を離せません。

特に、主人公のフォーチュンと町を仕切る軍人上がりの老婦人達が繰り出すドタバタ感満載のやりとりは、まるでアメリカ映画の世界観に入ってしまったかのような没入感で、サクサクと読み進めることができます。

人骨発掘事件を主題とする謎解きミステリーを楽しみたい方はもちろん、物語の過程で描かれる登場人物達の臨場感満載のやりとりに感情移入したい方にも、ぜひおすすめしたい1冊です。

冒頭で起こる不穏な雰囲気をぶった斬るストーリー展開

フォーチュンは命の危険から逃れるために、シンフルと呼ばれる小さな町で身を潜めることを余儀なくされることとなります。

このとき、スパイとは無縁の場所といえる田舎町であったとしても、常に周囲の人物を警戒しながら暮らさなければならないはずです。

しかし彼女は、こうした状況であるにもかかわらず、現地に到着するや否や「自宅裏の川で白骨死体に出くわす」という、平穏な町とは正反対の事件を目の当たりにします。

そのうえ、自宅裏に死体が埋まっていた事実がきっかけで、彼女は田舎町暮らしの1日目から目をつけられてしまう始末です。

冒頭から緊迫感のある物語が素早く創り上げられていくため、この本を読み進めながらフォーチュンの立場を思うと、焦りや緊張感でいっぱいになってしまうことでしょう。

とはいえ、本作では存在感抜群な登場人物達の大胆な言動もあってか、こうした絶望的な空気感を良い意味で裏切るようにストーリーが進行していくため、全体的に明るい印象を感じながら最後まで楽しむことができます。

物語で登場するパワフルかつ痛快なキャラクターの存在と、事件解決の過程で築かれていく仲間意識の変化が巧妙に描かれている点は、本書の魅力の1つといっても良いでしょう。

読めばたちまちファンになる、型破りミステリ・シリーズ!

著者のデリオンさんは、ルイジアナ州のカルカシュー郡カーライスに生まれ、2006年に長編ミステリー小説「Rumble on the Bayou」で作家デビューを果たしました。

これまで執筆してきた作品の多くは、著者の生まれ故郷であるルイジアナを主に舞台とした物語で、いずれの作品もユーモラスな描写が含まれているのが特徴的です。

今回ご紹介してきた『ワニの町へ来たスパイ』の作品もまたユーモアに溢れており、スパイの主人公と軍人上がりの屈強な老婦人達が繰り出すウィットに富んだやりとりは、読んでいる人を飽きさせません。

発掘された白骨死体の事件が醸し出す緊張感の中、こうした面白可笑しいやりとりがテンポ良く進行していくため、この1冊を読むことでミステリーとコメディーを交互に楽しむことができます。

また、思いがけないところで二転三転するストーリーにも、ぜひ注目しておきたいところです。

著者のデリオンさんが長編ミステリーの名手というだけあって、本作では、ミステリー小説ならではの緊張感のある世界観が巧妙に創り出されています。

小さな田舎町で突如巻き起こる事件や数々の登場人物から生まれる強い団結力は、読者の推理を働かせる工夫が盛り沢山なうえ、大きく感情を揺さぶります。

難解なイメージのあるミステリー要素が散りばめられながらも、読みやすい文体と軽妙な会話が物語の理解を深め、最後にはスッキリとした読了感を味わうことができるでしょう。

閉鎖的空間でのミステリー要素を求めている方はもちろん、個性的な登場人物が創り出すユーモア満載の物語に感情移入したい方も、ぜひ読んでみていただきたいです。

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anpo39
年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)
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