殺人事件の起こる場所は、予測しえないものです。
ミステリー作家さんたちはこれまで、ありとあらゆる場所での殺人事件を描いてきました。
無人島や古いお屋敷といったいかにもという場所での殺人も恐怖心を煽りますが、「そんなところで?」と思うような意外な殺人事件も引きこまれますよね。
今回は青崎有吾さんの裏染天馬シリーズである『図書館の殺人』が文庫化したので紹介させていただきます。
他にも『体育館の殺人』『水族館の殺人』『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』というシリーズ作品を出しており、『図書館の殺人』はその4作目。
若い作者さんなので、今の時代の空気感を描写するのに長けていて、本が苦手な方もスラスラ読める作品となっております。
「平成のエラリー・クイーン」とも呼ばれる青崎さんの見事な推理劇をぜひとも堪能してください!
青崎有吾『図書館の殺人』あらすじ
舞台は風ヶ丘高校、主人公は高校生です。
高校生探偵が活躍する物語なので、学園物が好きな方にも入っていきやすいでしょう。
期末試験対策に図書館に向かった袴田柚乃は、警察と何やら話している裏染天馬に会います。
何でも、殺人事件が起こったのだとか。袴田柚乃は、裏染天馬とともに被害者の残した二つのダイイングメッセージの謎に迫ることになります。
まあ裏染天馬はダイイングメッセージなんて意味がないと言い切るんですけどね。面白いキャラしてますほんと。
「ダイイングメッセージが? 重要? 刑事さん寝ぼけてるんですか目を覚ましてください。ダイイングメッセージなんかに着目して何がわかるっていうんです? なんの意味もあリません。それこそ時間の無駄です」
「む、無駄とはなんだ。重要に決まっているだろ。被害者が書き残した……」
「そうです、被害者が書き残しました。ですが他人が何を考えてたかなんて僕らには絶対わかりません。わかったような気になったとしてもそれは当て推量です。ましてや相手はもう死んでるんですからね」
P.112より
おりしもテスト期間中ということで緊迫感漂う舞台設定、そして意外な犯人へとつながっていくストーリー。
これまでも鮮やかな推理で解き明かしてきた裏染天馬は、今回の事件も解決できるのでしょうか。
被害者はなぜ殺されなければならなかったのか、犯行の動機は何なのか、名探偵と女子高生のコンビとともに、推測しながら読み進めていきましょう。
何より読みやすく、推理が素敵
ライトノベルのような軽やかな会話、コミカルな場面が多くて読みやすいところが魅力的です。
また、主人公はオタクということで、キャラ立ちしているところも印象に残ります。
裏染天馬自身にも秘密や過去があり、そういった掘り下げも読者を増やしている魅力なのでしょう。
面白いミステリーは読みたいけど重い雰囲気の本は苦手、グロテスクな描写はちょっと、という方にも安心して読める一冊です。
本の知識もちりばめられているので読書好きな方にもおすすめです。
ミステリーのよいところは、事件のゆくえを追いながらいろいろな知識を吸収できるところでもあります。
推理ものを読んでいると人体の仕組みや警察の捜査方法にくわしくなったり、意外な教養が身につくこともありますよね。
主人公がオタク設定なこともあって、豊富な知識量に圧倒されそうになることも多いです。
裏染天馬みたいなクラスメイトがいたら、学園生活が楽しくなるだろうなあ(?)。
一作目から順番に読んでね!
ポップな雰囲気、しっかり組み立てられたロジック、個性的なキャラクターの三点がそろっていて、謎が解けた後も読み返したくなりますね。
裏染天馬にはまだまだ秘密がありそうなので、今後も注目したくなります。
長い物語ですが、軽く読めるので読後感も爽快。
旅のお供に持っていきたい一冊です。
高校生探偵である主人公に、自分の学生時代を思い出しながらときめいてしまうかも。美少女キャラもたくさん出てきますので、男性にもぜひ読んでほしいです。
また順番に読むのとそうでないのでは面白さが変わってきますので、必ず
1作目『体育館の殺人』
2作目『水族館の殺人』
3作目『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』(スピンオフ短編集)
4作目『図書館の殺人』
の順番に読みましょう。
本当に裏染天馬シリーズは期待を裏切りません。青崎有吾さんの力量にドキドキさせられっぱなしです。
学園物が好きでいろいろ読んできて、次は推理ものも読んでみようかなと思い始めた方にもぴったりですね。
いずれ映像化もされるんじゃないかな、とキャストを当てはめながら読んでみるのも楽しいです。
描写がしっかりされているので、人物の姿も思い描きやすく、笑えるシーンもあって、角度を変えた読み方ができます。
「ダイイングメッセージ」といったミステリーで定番のものについても想像をめぐらせられるでしょう。
秋の夜長にぜひ、図書館を舞台にしたミステリーを読んでみてください。
あ、ちなみに「読者への挑戦」もあるのでぜひ挑戦してみてくださいね。私はお手上げでしたけど。
現時点で手がかりはすべて出そろっている。あなたがその気にさえなれば、裏染天馬と同じ推理をたどり、解決編に先立って、城峰恭助を殺した犯人を指摘することができるだろう。
そしてあなたは、本を閉じたあとで小さな満足感に浸ったり、SNSでフォロワーに自慢したり、サイン会に行って作者と握手しながら「解けましたよ」と勝ち誇ったりすることができるだろう。
作者はちょっと困ったような顔で愛想笑いを返しながら、それを嬉しがるだろう。
P.364.365「読者への挑戦」より引用
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コメント
コメント一覧 (4件)
大好きな全作大当たりの超絶論理シリーズです。
クイーンの「ヨードチンキの推理」にあやかって「折れたカッターの推理」と呼びたい本書の白眉!
論理ってこんなにも色気のあるものなのかと教えてくれる作品ですね。
また、動機は共感出来ない方が面白いと信じて疑わない僕には最高の犯人設定でした。
早くも次作は「映画館の殺人」かな「歴史民俗資料館の殺人」かなと、予想を膨らませ楽しみにしてます!
ほんとこのシリーズは当たりばかりですよね!
そうそう、そうなんです、「折れたカッターの推理」がたまらないんですよこれ。ゾクゾクします。
論理最高ですよねえ。フーダニットとしてもよくできている傑作だと思います。
次作「映画館の殺人」来そうですね!
なに館かなー。楽しみに待ちましょう!
図書館の殺人もやっと読めました!
やっぱり彼は大好き!
天馬最高です(笑)
あ、なんか、さっき体育館の殺人に
書きこみ二回しちゃってますo(T◇T o)
かぶってるのは消しちゃってください(笑)
おお、図書館も読んだのですね!
もう第4弾ともなると完全に彼の虜になっちゃいますよね!
天馬のキャラも推理も最高です。早く続編読みたいなあ。