麻耶雄嵩『友達以上探偵未満』-探偵に憧れる二人の少女と本格ミステリの合わせ技

麻耶雄嵩さんの新刊『友達以上探偵未満』が発売しました。

表紙には可愛い女の子が二人。

でもどうせクセが強い変化球で来るんでしょ?と思っていたんですが、まさかのストレートを放り込んできましたね。

これは予想外。しかし、こういう麻耶さんも好きです(´∀`*)

『友達以上探偵未満』

 

「伊賀もも」と「上野あお」という〈探偵〉を目指す二人の女の子が、様々な事件に首を突っ込んでは活躍していく青春本格ミステリー。

全3遍からなる作品集です。

まずキャラクターがいい。可愛い。

また文体も雰囲気もライトなのに、やっていることはちゃんと本格もの。ありがたや。

1.『伊賀の里殺人事件』

放送部の部長から「伊賀の里で行われるミステリーツアーの取材をしてほしい」と頼まれた伊賀ももと上野あお。

このイベントでは参加者が芭蕉か忍者の衣装をそれぞれ着て、クイズラリーをしているのだそうです。

そこで殺人事件に巻き込まれちゃうわけですが、なんと「見立て殺人」だっていうから驚いてしまう。

「死体は雨上がりに発見され、死体の下には蓑が置いてあったんだよね。これって芭蕉の俳句『初時雨猿も小蓑をほしげなり』の見立てじゃないの?」

P.52より

そして休む暇もなく、続けて俳句に見立てられた殺人事件が起きて……。


という、みんな大好き見立て殺人ものです。

当然「犯人はなぜわざわざ俳句になぞらえて殺人を犯したのか」という、見立てに対しての理由が重要になってきます。

また、「参加者が芭蕉か忍者の衣装を着ていた」という条件もポイントになってきそうです。

とても丁寧に構成されているので頑張れば解けるかも?

2.『夢うつつ殺人事件』

一人の女生徒が、偶然耳にした男女の会話。

それは二年生の愛宕(あたご)という生徒の殺害をほのめかすものだった。

しかし、夢うつつにぼんやり聞いていたので、正確なことはわからない。

だがその後すぐに、女生徒のカバンに真っ赤な右手の手形がつけられるという事件が起きた。

これは盗み聞きをしたことに対しての脅しか。

万が一を考え桃青コンビに相談をするが、ついに悲劇は起きてしまった。


伊賀野高校にまつわる幽霊の存在を背景に、綺麗なロジックをお目にかかることができます。

青春ライトミステリーっぽくて、ちゃんと本格しているんですよねえ。このバランスがうまいなあ。

3.『夏の合宿殺人事件』

伊賀ももと上野そら。

二人の少女がなぜ探偵を目指し、今の状況になったのか。その過程が綴られていきます。

このあらすじは知らない方が楽しめるでしょう。ぜひ本章で!!(手抜きではありません)

コミカルであり本格な麻耶ミステリー

探偵役のキャラクターがたっているし、人が殺害されているのに重い雰囲気がなくスラスラ読める。

でも内容そのものは正統派本格ミステリ。

他の麻耶作品(メルカトルなど)に比べてもかなり読みやすい仕上がりになっています。

真相についても衝撃的な大掛かりトリックを使ったものでなく、論理に論理を重ね丁寧に推理をしていきます。逆に新鮮でした。

また「問題編」と「解決編」に分かれて構成されており、読者への挑戦状があるのも嬉しいですね。

※この小説は犯人当てになっています。次へ進む前に、しばし立ち止まり誰が犯人かを考えてみてはいかがでしょうか? 一句詠むだけでも構いません。

P.101ページ

非常に丁寧に伏線やヒントが散りばめられているので、がんばれば解けるかもしれません。ぜひ挑戦してみてください(私は無理でした)。

 

随所に放り込まれるネタにもニヤニヤ。

あまりに勢いがつきすぎて、反動で後頭部を背後の壁にぶつけてしまう。

「いたっ」と、ももは頭を抱えながら、「危ない。危ない。アナザーなら死ん……違う!」

P.102より

まさか「アナザーなら死んでた」ネタを麻耶作品でお目にかかれるとは。歓喜。

探偵とは

最終話の『夏の合宿殺人事件』を読み、この作品には「探偵とは何か」というテーマに基づいて書かれたものだと感じました。

そしてタイトル『友達以上探偵未満』の意味。ああ、なるほどなあ、と。それで『友達以上探偵未満』なのか。

最終話を読んでからまた最初から読み直すと、新鮮な気分で読み進めることが出来るようになっています。

「だからあの時ああだったんだ」「この時あおはこう思っているんだろうなあ」とか、いろんな描写や感情がわかってくるんですよね。

だから二人の女の子が織りなす青春小説としても楽しめる。超シリーズ化希望です。

もっと彼女たちの活躍を見させてください。麻耶さん!

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2 Comments

アラシナオヤ

これも面白かったですね。ライトミステリはたまに作中の雰囲気やキャラの魅力ありきで、ミステリ部分がおざなりにって作品も無いではないと思うんですよ。それはそれでいいんですが、その点さすが麻耶さんらしい正統派な本格推理でとても楽しめました。僕もシリーズ化希望です!

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anpo39 anpo39

ですね〜。麻耶作品にハズレなし。
ただのキャラクター小説にせず、コミカルな部分と本格な部分を丁度良くミックスさせているんですよね。
たまにこういう正統派でくるから麻耶さんはたまりません。
ほんとキャラクターの魅力抜群ですのでシリーズ化してほしいですよねえ。。

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