早坂吝『探偵AIのリアル・ディープラーニング』-AIを探偵とした斬新ミステリ登場!

○○○○○○○○殺人事件』をや『ドローン探偵と世界の終わりの館』など、いつも予想をはるかに超えた展開で読者を楽しませてくれる早坂 吝さん。

今回も期待しないわけにはいきません。

AI探偵が活躍するなんて、まさに現代ならではの感じがしますね。そして表紙のキャラクターが可愛い。

 

まあ早坂さんの作品は毎回探偵のクセが強すぎるので、正直「AI」が探偵でももう驚きません。

さてさて、今回は一体何をしでかしてくれるのでしょうか。

 

『探偵AIのリアル・ディープラーニング』

 

大学教授だった父さん、合尾創(あいおつくる)が亡くなった。

現場となったプレハブは全焼。

警察曰く、急な心臓発作で倒れ、ストーブの角に後頭部をぶつけ、打ち所が悪くて亡くなった、という。

 

消防隊が到着した時、離れのドアは全て施錠されていた。

つまり密室だった。

 

当然ただの事故だと思えない合尾輔(あいおたすく)は、父さんの部屋を捜索することにした。何かヒントがあるかもしれない。

と、一枚の写真たてに、妙な浮き上がりがあるのを発見。

調べてみると、一枚のSDカードが出てきた。

 

こんな所にあるなんて、明らかに隠してあったものだ。

さっそく輔はSDカードをパソコンに挿す。

 

すると、完全に僕好みの容姿と服装をした女性アバターが現れた!

「初めまして。私は合尾創教授によって開発された人工知能の《刑事》相以。あなたはどなたですか」

ボーカロイドのような人工的な声出ではなく、リアルな女性の声だった。

SDカードに入っていたプログラムでビデオ通話のようなものが起動し、世界のどこかにいる女性と通話が始まったのか?

一瞬そう思ったが、相手は人工知能を自称している。

P.20より

びっくり仰天ではありますが、この自称《人工知能》であり《刑事》の相以をスマホに移して、一緒に事件を捜査することになったのでした。

刑事は、名探偵となる。

しかし相以ちゃん、刑事と名乗っておきながらかなりのポンコツでした。

警察の捜査に関する大量の情報はパソコンの方に保存されていて、火事と一緒に燃えちゃったんです。

このままでは完全に役立たず。

そこで思いついたのが、「古今東西の名作推理小説を電子書籍で千冊読む」ことでした。

そうすることで、推理や探偵関する知識が相以にインプットされると思ったのです。

もしそれができれば、今回の事件だって一瞬で解けるかもしれない!

 

そして翌日。

パソコンの中にいた相以は生まれ変わっていた。

「初めまして」

(省略)

「《刑事》改め《探偵》の人工知能、相以でございます、輔さん」

「び、びっくりしたよ。『初めまして』とか言うからさ。昨日の記憶はあるんだよね」

「もちろん。輔さんに言われて、名作と呼ばれる推理小説を千冊読破しました。その結果、《刑事》から《探偵》に転職したのです」

P.58より

AIが進化しながら事件を解決していく面白さ

「大量の情報さえあれば、今まで教えることが難しかったことも、コンピュータが自ら学習できるようになった」(P.14)

AI(人工知能)の進歩はこの頃目覚ましいものがありますよ。

有名なところでは、囲碁や将棋のプロ棋士がAIに負けたと話題になりました。

現代のAIは、まだ人間に劣るところがたくさん存在します。

それをAIが苦手な人にも上手に説明し、物語に組み込んだのが「探偵AIのリアル・ディープランニング」です。

一番の見どころは、なんと言ってもAIの進化だと思います。

「犯人がトンネル効果で密室の壁をすり抜けた可能性です」

(P.48)

最初はこんなちんぷんかんぷんな推理ばかりしていた『探偵』のAIである相以が、どんどん進化していきます。

人間の感情なんて、少しも理解していなかったのに、様々な事件を通して、まるで人間のように成長します。

最後の方では輔を慮る言葉までかけるようになります。

また、AIが単純に推理だけでなく、犯罪のトリックにも使われているのが物語に深みを増しています。

双子という設定の相以と以相。

この二人は、二人だからこそわかる犯罪と推理を積み重ねていきます。

人間が考えるとは思えない、AIだからこそ考えつく斬新な相以デアは変テコでも驚きを与えてくれます。

凝り固まった頭に新しい刺激になること間違いなしです。

AIの功罪について上手に描かれた作品

AIというと少し前までは身近とは言いづらいものでした。しかし、現在はスマホにもAIが搭載される時代です。

呼びかければスマホが答えてくれるなんて、10年前なら考えられなかったことですよね?

それが今では誰もが電化製品に話しかけています。

AIは物事を忘れやすく、悩んだりする人間の補助にうってつけの存在です。

彼女たちは記憶をなくしたり、勘違いをすることはありません。その能力は人間より遥か上です。

ともすれば、作品中で『オクタコア』が考えたように、AIがすべての事支配する方がうまくいくかもしれません。

この作品はその可能性について、よく考える機会を与えてくれます。

AIは本当に人間より優れているのか、特に印象的だったのは、この一文です。

引用「理想論だけでは、人工知能に人類の統治者にするのは不可能だからだ」

P.342

人間を治める上で、綺麗事ばかりではやっていけません。

真面目に、綺麗に、生きようとする人ほど、生きづらさがあるというのは、誰もが感じるものです。

AIは人間よりも正確に情報を集め、分析し、予想することができます。

それでも人間が生活する上で出てくる面倒くさいものに対応するには、まだ難しいようです。

『探偵』の相以は、現実的な事件を通してとても人間らしくなっています。それでも難しいと彼女は言っています。

この機会に、人間らしさについて考えてみても面白いかもしれませんね!

まとめ:緻密で奇想天外な推理が面白い!

ミステリとしても、ラノベとしても非常によくできた、面白い作品でした。

まず、ミステリとしては『AIが引き起こす事件』を『AIが解決する』というスタンスが斬新。

人間だったらしないような、行動を彼女たちは論理だけで組み立てます。また、AIに存在する問題点も違和感なく説明されているので、世界に入り込みやすいです。

複雑怪奇に見える人間の行動こそ、必ず理由があり、AIの方が単純な間違いで変な行動をしてしまう様は見ていて面白かったです。

短編連作形式をとっているので、一冊で何個もの事件を楽しむことができます。

さくさく進むので、ミステリにありがちな間延びした感じを受けにくく、あっという間に終わりのページまで来てしまいます。

ラノベらしい、個性的なキャラクターたちの躍動感に目を見張る作品です。

小説を呼んでいるというより、ドラマを見ている気分になることができます。

ミステリやAIが好きな人なら、その内容にニヤニヤすること間違いなしです。

ぜひ一度読んでみてください!

 

(うちのPCにも相以ちゃん来てくれないかなあ)

 

『○○○○○○○○殺人事件』が文庫化!メフィスト賞らしさ満点のタイトル当てに挑戦しよう 早坂吝『ドローン探偵と世界の終わりの館』の強烈なひっくり返しはもはや芸術です

4 Comments

ヨウタイガ

これは面白そうな設定ですね。ちょうどこれから◯◯◯◯◯◯◯◯殺人事件を読むところなので、早坂さんワールドを楽しんでみようと思います。

返信する
anpo39 anpo39

おー!◯◯◯◯◯◯◯◯殺人事件も読むんですね。
ヨウタイガさんなら絶対楽しめるはずなので、私もヨウタイガさんが読む姿を想像してワクワクしています笑
ぜひ早坂ワールドを堪能してください!

返信する
ちぃ

若手注目株断トツ筆頭の早坂吝氏めはないですか!
この人ガチガチの本格ミステリやってくれるから好きなんですよね。
ラノベテイストとかエロとかよりもパズラーとしての印象が強いです。
今、青崎有吾氏と並んで新作が一番楽しみな作家です。
今度はAIが探偵ですか。
何だかんだらいちちゃんが一番衝撃的ですが、ドローン探偵も面白かったし今度も楽しみです。
夏の暑さも強烈な論理の衝撃で吹き飛ばして頂きたい・・・。

返信する
anpo39 anpo39

そうなんですよ、若手注目株断トツ筆頭の早坂吝氏なんですよ。
わかりますわかります、この人は私たちの大好物を書いてくれる方です。
私も毎回新作を楽しみにしておりまして。
まあ。らいちちゃんと比べるとあれですけど、この探偵も非常にいいキャラしてました。
いいですねえ、我々にとっては論理の衝撃が何よりの暑さ撃退方法です。。。

返信する

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です