『短編ミステリの二百年1』-俊才による珠玉の12編を新訳で収録した傑作アンソロジー

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二百年にわたる短編ミステリを総合的に捉えた名作揃いのアンソロジーです。

ロンドンの社交クラブでミステリー小説を読んでいた主人公が聞いた不思議な事件を巡る「霧の中」。

クリームタルトを持った若者から事故に見せかけた自殺を提案し合う自殺クラブの話を聞いた主人公がそのクラブに入会する「クリームタルトを持った若者の話」。

世間的に高く評価される詩を書いているのにサラリーマンの夫の収入に頼るしかない女流作家を描く「創作衝動」。

崖っぷちに立たされた夫婦がどんどん追い詰められていく心理描写が秀逸な「さらばニューヨーク」。

赤ん坊を連れて金庫破りに向かう男の話、「ブッチの子守歌」など名作ばかりが収められています。

さらに編集者の評論も収録されており、良質なミステリー小説を楽しめるだけでなくミステリーの歴史についても知ることができます。

目次

『短編ミステリの二百年1』

「短編ミステリの二百年 1」を刊行した創元推理文庫は、江戸川乱歩の「世界推理短編傑作集」を擁する歴史ある出版社です。

そんな創元推理文庫だからこそできた、世界のミステリの歴史を辿る一冊です。

今作ではコーネル・ウールリッチやウィリアム・フォークナー、サマセット・モームといったミステリ界を牽引した文豪たちの作品が12篇収められています。

また、今作では短編集のあとに編者によるミステリー論も大ボリュームで掲載されています。

ミステリーとはどのようなものなのか、どんな歴史を辿ってきたのかをじっくりと深めることができ、ミステリー小説を愛していることがよく伝わります。

そんな編者が選んだというだけあり、短編集も非常に良質です。

文豪たちが発表してきた短編の中でもとくに優れているものばかりが収録されています。

中には読んだことのない作家の作品が含まれているかもしれません。新しい素敵な出会いが待っています。

もちろんそれぞれの短編に対しての解説も掲載されています。どんな背景があり、どんな状況で作品が生まれたのかを知ることで、より深く作品の本質に触れられます。

むしろこの解説・評論が一番面白いんじゃないか、ってくらいなので、解説目当てで読むのも全然アリです。

ミステリー小説が読みたいけどどんな内容のものが自分に合うかわからないという方でも、こちらを読めばお気に入りの作家や作風を見つけることができるでしょう。

今作ではミステリー小説の夜明け時代に生まれた作品が収録されています。約三世期も前の作品ばかりですので、中には古い作品に対して抵抗がある方も多いかもしれません。

ですがこれらはすべて本書のために新訳されています。現代風の文章で読みやすいため、気軽にかつての名作に触れられます。

また、すべて短編であるという点も魅力的です。短いながらも作家たちの渾身の一作を楽しめます。

1作品につき長くても80ページ程度ですので、ちょっとした隙間の時間にも本格的なミステリー小説を楽しめます。

「短編ミステリの二百年」は1巻から4巻まであります。いずれも10作品以上の短編が収録されており、ミステリー小説界の歴史を垣間見ることができます。

ミステリー小説が好きな方ならミステリー小説を読む視点が変わり、より深い楽しみ方ができるようになるでしょう。

もちろん前述の通り普段あまりミステリー小説に触れてこなかった方にもおすすめです。

創元推理文庫では、本シリーズの他にもさまざまなミステリー小説を発表しています。

映像化されるなどの派手な作品は少なめですが、じっくりと読みたい本格的な作品が多いのが特徴です。

国内の作家の作品だけでなく海外の作家の訳書も積極的に出版しています。大手の出版社から登場している作品では味わえないコアな作品が多い印象です。

有名なものは読んでしまったから新規開拓したい、海外のミステリー小説をたくさん読みたいという方は、創元推理文庫のミステリー小説もチェックしてみてください。

ちなみにこのアンソロジー、現在4巻まで出版されています。

流石にどれも良い短編ばかりなので、1巻を気に入っていただけたのならぜひ他もお手にとっていただけると嬉しいです。

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)

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