竹本健治さんといえば牧場智久(まきばともひさ)を探偵役とした〈ゲーム三部作〉が有名でして、ここ最近その『囲碁殺人事件』『将棋殺人事件』『トランプ殺人事件』が講談社文庫さんから続々刊行されているんですよ。
参考記事:牧場智久、初登場。竹本健治さんの『囲碁殺人事件』が新装文庫化しました
まさに「竹本健治フェスティバル」です。
そこで今回は、あえてゲーム三部作以外の竹本健治さんのおすすめ作品をご紹介させていただきます。
これだけは読んでみてほしい!というのを三作品だけに選びました。
ご参考にしていただければ幸いです( ´∀`)
1.『匣の中の失楽』
まあ、竹本健治さんといえばコレですよね。「必読」と言って良いでしょう。
夢野久作『ドグラ・マグラ』、小栗虫太郎『黒死館殺人事件』、中井英夫『虚無への供物』からなる「三大奇書」に、この『匣の中の失楽』を加えて「四大奇書」と呼ばれたりする傑作です。
奇書と呼ばれるだけあって読み応えは半端ないですが、決して読みにくいというわけではないです。
内容を簡単に言うと、大学生を中心としたグループの中で殺人事件が起きてそれを皆で推理していく、みたいな感じなのですがさすが奇書。こんな普通なわけがありません。
しかしただ奇をてらっているだけでなく、しっかりミステリー小説として面白いのでご安心を。
ではなぜ奇書なんて言われるのか。それはぜひ実際に読んで体感してみてください。忘れられない読書体験になるでしょう。
少し複雑なので、たっぷり時間があるときにじっくりと一気読みすることをオススメします。
推理小説マニアの大学生・曳間が、密室で殺害された。しかも仲間が書いている小説の予言通りに。現実と虚構の狭間に出現する5つの“さかさまの密室”とは?
2.『ウロボロスの純正音律』
ウロボロスシリーズの3作目にして完結編。
とある日、漫画制作の依頼を受けた竹本健治さんは「玲瓏館」という奇妙な館で仕事をすることに。
しかしそこで、エドガー・アラン ポー『モルグ街の殺人』の見立て殺人が起きてしまう!
そんな事件を「綾辻行人」「京極夏彦」「北村薫」「西澤保彦」「倉阪鬼一郎」などなど、他多数のミステリ作家さん&評論家さんたちが推理していくんです。
って、こんなの読みたくなるに決まっているではないですか!
古典推理小説に絡めた事件に、続々登場する実在の作家さんたち。そんな彼らの推理合戦。なんて贅沢な。
正直言うと万人受けするような作品ではないのですが、ミステリ好きとしては一度は読んでおきたい作品だと強く思っております。
ちなみに今作は、小栗虫太郎さんの『黒死館殺人事件』のオマージュ作品です。
いきなり『ウロボロスの純正音律』を読んでも十分に面白いですが、できれば『黒死館殺人事件』を事前に読んでいた方が楽しめるかもしれません。
マンガ制作のため竹本は古めかしい洋館「玲瓏館」へ。怪しい使用人、館に集まった錚々たる推理作家、評論家、編集者の面前で、あろうことか『モルグ街の殺人』見立ての殺人が発生。
3.『涙香迷宮』
2017年の「このミステリーがすごい!」で見事に一位となった名作ですね。
これほどまでに巧みな暗号や言葉遊びを取り入れた小説が他にあったでしょうか、ってくらいすごい。
「暗号ミステリの最高峰」と呼ばれるのも納得のクオリティです。
いわゆる“いろは歌”を扱った暗号なのですが、これがもう本当に見事で、殺人なんてそっちのけで暗号解読に見入ってしまいます。
いろは歌とは、「いろはにほへと・・・」で始まるあれです。
47文字のかなを全て一回ずつ使って作る歌のことですね。もうこれが圧巻でして。
「面白いから読んで!」というより「この暗号は一度は目にするべき!」という感じ。「面白い」より「凄まじい」という感情が勝っちゃうんです。日本語って凄い、というか竹本健治さん凄すぎです。
ちなみに今作の探偵役である牧場智久(まきばともひさ)は、最初にも述べたように『囲碁殺人事件』『将棋殺人事件』『トランプ殺人事件』の三作からなる〈ゲーム三部作〉の探偵役でもあります。
なので先にゲーム三部作を読んでおくと、牧場智久に対しての愛着が全然違ってきますよ〜(*´ω`)
明治の傑物・黒岩涙香が残した最高難度の暗号に挑むのはIQ208の天才囲碁棋士・牧場智久!いろは四十八文字を一度ずつ、すべて使って作る日本語の技巧と遊戯性を極めた「いろは歌」四十八首が挑戦状。
おわりに
改めて見てもやはり名作揃いですなあ。
とりあえずこの3作品はぜひとも読んでいただきたいなあ、と。
特に『匣の中の失楽』の読書体験はそうそう味わえるものではないので、ミステリ云々の前に読書がお好きならぜひ一度。