辻真先『たかが殺人じゃないか』-このミス1位!ミステリ界のレジェンドが贈る、圧巻の青春ミステリ

昭和24年、ミステリー作家を目指している名古屋市内の高校三年生・風早勝利は、推理小説研究会・映画研究会合同の一泊旅行に参加。

旧制中学卒業後のたった一年の男女共学の高校生活、修学旅行代わりの旅行でしたが、顧問と男女生徒5名で向かった先で遭遇したのは何と密室殺人事件!

さらに夏休み最終日の夜、台風が襲来する廃墟で首切り殺人事件が発生し、勝利達は被害者を目撃してしまいます。

2つの事件の犯人、動機、トリックは?

被害者たちの間に関係性はあるのか?

事件の裏に隠された真実とは?

著者自身が経験した戦後日本の混乱期や青春の日々と共に、謎解きが繰り広げられます。

辻真先『たかが殺人じゃないか』

「昭和24年」という時代設定

この作品で大きなカギとなってくるのは、昭和24年という時代設定。

敗戦によって価値観がガラリと変わりつつも、未だどこか戦争の影が色濃く影響している、そんな混乱期の日本社会の雰囲気が、著者の経験そのままに描写されています。

時代背景を描きつつ古臭くなく、推理小説だけでなく青春小説としても十分楽しめるのも素晴らしいところ。

当時の空気感を実際に生きてきた作者が書いたという意味でも価値のある小説で、この描写があるか無いかでその後の読後感・満足感は全く違ってくるのではないでしょうか。

時代設定同様文体も独特で慣れるまではつらい部分もありますが、文体含め雰囲気づくりの一つとして受け入れれば耐え難いほどではありません。

何より、昭和24年という戦後間もない時代、既に現代の私たちから見れば歴史の一部となりつつある時代にも、高校生くらいの年代の一種の輝かしさ・青春の素晴らしさは変わらず存在していたと実感できます。

犯人の犯行動機も時代に絡めたもので、作品に深みを出していると感じられます。

細やかな伏線の張り巡らせ方や回収の鮮やかさは辻さんらしいと思えるもので、時代を反映していても読みやすく楽しめるのもポイントですね。

一方でこの時代の人々の、特に少年少女の心の揺れと葛藤がリアルで重く切なさを感じさせます。

作者が当時の空気を体験しているからか、戦後直後の 学校事情がとても面白く、タイトルの回収の仕方と物語の着地も美しい。

注目は「犯行動機」

ミステリーを読むとき(または書くとき)、「犯人が誰なのか」「どうやって犯行を行ったのか」「犯行に及んだ動機は何か」の3つが重要なポイントとなってきます。

今作で特に重要となってくるのは3つめの「犯行に及んだ動機は何か」という部分。

おそらく、読んでいる間に多くの読者が犯人に検討をつけることができるでしょう。

どうやって犯行を行ったのかという点も、本文の中で比較的あっさりと判明してしまいます。

しかし一番の争点が「なぜ、犯人はその犯行を行うに至ったのか、背景には何があったのか」という点なのです。

先ほど触れた時代背景も絡んだその犯行動機には、読んだ人を思わず切なくさせるものがありました。

複雑に作り込まれたり、尖った作品ではありませんが、ストーリーの面白さ、人物描写、仕掛けがちょうどいいバランスで素直に楽しめます。そう、こういうミステリが読みたかったんだ、と思わせてくれる大満足のいく内容でした。

辻真先さんだからこそ書ける細かい描写もすごく興味深く、臨場感が味わえてとてもよかったし、何よりホワイダニットにも説得力と舞台設定の必然性が入っていてすごいと思いました。

総評

昭和24年という時代背景、暗い時代の中でも明るさを放つ主人公たちの青春、犯人の犯行動機の重さ・切なさ……これらが噛み合わさり、とても読み応えのあるミステリー小説となっています。

特に「作者が実際に体験した」昭和24年当時の空気感・青春の風景は、本当に経験した者にしか書くことのできないリアリティさを持っており、この点だけを取っても読む価値のある小説と言えるでしょう。

犯行のトリックには一見派手で荒唐無稽のように映る部分もありますが、それすらも自然と読ませてしまう魅力があります。

がっつり読書に取り組みたい人、本格ミステリーを読みたい人、骨太のストーリーを楽しみたい人にもオススメです。

物語の最後には作者による心憎い演出も!

読後はタイトルの意味も分かるはずです。

これからこの小説を読むという方は、絶対にネタバレを見ないで、オチが気になってもグッと我慢して、じっくり読み進めてみてください。

丁寧にしっかり読みこんだ分、読んだ後の感動・驚きが大きくなること請け合いです!

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