今回ご紹介させて頂く『シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱』は、作家・高殿円(たかどのまどか)さんによるシャーロック・ホームズのパスティーシュ(模倣)作品。
簡単に言うと、女性版ホームズです。
タイトルは本家『緋色の研究 (新潮文庫)』に対して「緋色の憂鬱」。
「この試みがすでに面白い」と思って即買いしたら、案の定とても面白い作品でした。表紙も飾っておきたいくらい美しい。
それでは、あらすじや感想をサクッとご紹介させていただきますね(´∀`●)
高殿 円『シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱』
ズバリ、この作品の一番の魅力は「キャラクターの良さ」でしょう。
キャラが良い。ありきたりの言葉になってしまいますが、仕方がありません。だって本当に良いんだもの。
まずは、ワトソン役の「ジョー・H・ワトソン」。
ーー私ことジョー・H・ワトソンは、六年間のご奉仕兵役を終えて先月の半ばにアフガニスタンから帰国した。
もともと医学理念に燃えて医者を志したわけではなかったから、アフガンで『ちょっと嫌なこと』や『かなり嫌だったこと』、そして『忘れたいこと』『ショックのあまり記憶にないこと』が立て続けにあり、その上軍奨学金のご奉仕期間が満了したとなっては、帰国を躊躇うものはなにもなかった。
『シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱』P.18より引用
彼女はアフガニスタンの戦場で医師として勤めたのち、ロンドンに戻ってきて仕事と住む部屋を探していました。
お金がなくホテルにも泊まれなくなって困っていたところ、友人のミカーラから、「ある人物」がフラットシェア(二人で一つの部屋を借りて一緒に住む)の相手を探している、という話を聞きます。
そう、その「ある人物」こそ今作の探偵役となるシャーリー・ホームズ。
お金も寝場所もないワトソンにとってはまさにありがたいお話。すぐに承諾した彼女でありました。
かくして、シャーリー・ホームズとジョー・H・ワトソンは遺体安置所で運命的な出会いを果たすことになったのです(出会いの場面はあえて書かないですが、私はこの出会い方が好き)。
で、この探偵役・シャーリーのキャラもまた良くてですね。
その姿に私は唖然となった。赤い襟、夏には似つかわしくないダブルの金ボタン。足のラインが出る白のパンツ。いったいどうしてなのだろう。彼女はーー私の予想が正しければ極めてきちんとした乗馬服を着ている。
『シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱』P.33より引用
まさかの乗馬服で登場。
で、焦げ茶色の長い髪、瞳の色は澄み切ったターコイズブルー。モデルのように背が高く、真っ白な肌。つまり超美人なわけです。
しかも性格も良い意味でちょっとズレてる。
「まさか、グリニッジから馬できたの?」
「そうだが」
「八マイルはあるよ?!」
「渋滞がひどくて、これが一番速かったんだ」
「よく警察につかまらなかったね」
「そういえば後ろで誰かが何かを叫んでいたな」
『シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱』P.40より引用
美人で天才的推理力を持つ完璧人間だけどある意味「変人」な性格の持ち主、というまさに探偵役っぽいキャラ。素晴らしい。
《帯のイラストがおしゃれで可愛い。左がシャーリー・ホームズ、右がジョー・H・ワトソン。》
それでも、殺人は起きる。
「ともかく、いますぐ来てくれ。ニュークロスで殺しだ」
「数は?」
「喜んでもいいぞ。それが全く同じ方法で四人だ」
「大量死?」
「違う。同じ方法で、ほぼ同じ時刻で女性ばかり、違う場所で死んでいる」
その瞬間、シャーリーの目の光量がいちだんと増した。表情は変わらないが、彼女が喜んでいることがわかって私は驚いた。
『シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱』P.68より引用
4人もの人間が殺されているのに喜んでしまうシャーリーさん。さすがです。
同じ時間に、同じ方法で、しかし別々の場所で四人の女性が殺された、という事件。すいません。やはり私もワクワクしてしまいました。
キャラで読ませるほんわかミステリっぽく見せておいて、実はちゃんとミステリしているところも好印象でしたね。
で、今作を読み終えて思ったのが「漫画版を読みたい」ってことですよ。キャラクターが良いのはもちろん、ストーリーにもエンターテイメント性があって漫画映えするな〜とすごく感じました。
でもやっぱり一番強く思ったのが「続編を読みたい」ってこと。彼女たちの活躍をこれからも見続けたい、ってすごく感じさせる物語でバッチリ心を奪われてしまいました。
一巻でこれだけ続編を読みたいと思わせてくれる作品ってあまりないですからね。素晴らしいです。
続編出たら絶対買っちゃいます。本家ホームズと同じようにシリーズ化してくれたら最高なのになあ(*´ω`)
本家ホームズを挫折した人にも
「本家ホームズシリーズを読んだことがあるけど、翻訳物の独特の文体が苦手なんだよね〜」という方にも今作はピッタリ。
日本人作家さんが書いているんですから、もちろん翻訳物のクセなんて全然ありません。むしろ国内作品の中でもかなり読みやすい方ですね。本当にサクッと読めます。
それでいて、しっかりロンドンの雰囲気を感じることができるのはさすが。こういうロンドンならではの雰囲気好きなんですよねー。
キャラクター良し。英国漂う世界観良し。ストーリーも良し。読みやすさも抜群。
正直ミステリー要素が無くたって面白いんじゃないかなってくらい「読み物」として面白い作品でした(○゚∀゚)
おわりに。
そうそう、この作品のタイトルの「緋色の憂鬱」っていうのは、本家シャーロック・ホームズの『緋色の研究 (新潮文庫)』からとったもの。
できれば『緋色の研究 (新潮文庫)』を読んでいたほうが良いですが、読んでない方でも十分に楽しめる内容でしたのでご安心くださいませ。
ただ『シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱』を読めば絶対本家も読みたくなりますよ〜。
それでは、最後まありがとうございました。良い読書ライフを!(* >ω<)=3
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