さて、裏染天馬(うらぞめてんま)シリーズの1作目『体育館の殺人』です。
いいですよね、論理が爆発する推理は。
さすが「平成のエラリークイーン」と呼ばれるだけあります。
今更ですがご紹介を。
ガチガチの論理が好きな方はぜひお手にとってみてくださいませ。
青崎有吾『体育館の殺人』
風ヶ丘高校の旧体育館で放送部の部長である男子生徒が殺された。
密室状態の体育館で犯行が可能だったのは、卓球部部長である一人の少女だけ。
捜査に入った警察は、この女子生徒が犯人だと決めてかかる。
しかし、部長の無罪を信じる部員の一人が、学内一の天才と言われる「裏染天馬」に無罪の証明を依頼する。
彼は自分の趣味であるアニメの軍資金を集めるために、その依頼を引き受けた。
密室のトリックを暴くために、様々な人と出会い、状況を調べ、裏染は推理を進めていく。
彼を助けるのは幼馴染であり、新聞部部長である向坂と警部を兄に持つ袴田の二人の少女だった。
警察に目をつけられながらもトリックの証明に必要な証拠を集める裏染。
彼はトリックを解き明かし、真犯人を見つけることができるのだろうか。
解決編の前に『読者への挑戦』付きの本格ミステリー。
アニメオタクと本格推理モノのコラボ!
ミステリー章つでからり重要なポジションである『探偵役』。
探偵役の設定により、ミステリーの面白さが決まると言ってもいいくらいだと思います。
この『体育館の殺人』の探偵は、いわゆる「高校生探偵」です。
学校に天才として知られる、あるいは変わり者として知られる生徒が、殺人事件という場面において能力を発揮します。
ラノベ風の濃いキャラクターがたくさん登場する本作でも、それは変わりません!
探偵役として登場する裏染天馬はアニメオタクであり、アニメグッズへの軍資金を稼ぐために依頼を受ける変わり者。
決して正義のためとか言いません。
文章にもそれは出ており、時折登場するアニメ好きならわかる小ネタにクスリとしてしまいます。
『逃げちゃダメだ、か。確かにこりゃ名ゼリフだな。逃げちゃダメだ。うん。教訓だ』
(文庫P.293)
こういった小ネタを楽しみながら、それでいて理路整然と推理が展開されていくのが、この作品の凄い所です!
ネタだけに走りすぎず、きちんと推理に必要な証拠を集め、論理的に推理が展開していきます。
きちんと実証しようとして、失敗する場面まで含まれているミステリーは非常に珍しいですよねー。
ラノベ好きのようなライトな推理好きから、自分ですべての謎を解きたいという重度のミステリー好きまで納得できる作品になっております。
その上で文章は軽快で読みやすく、証拠探しに読み返すのもくじゃない文章力を兼ね備えています。
推理が中心だと堅い、重い印象を抱きがちですが、この作品ならすらすらと読めて本格的に推理も楽しめますよ!
ラノベ風なんちゃってミステリーかと思ったら
『体育館の殺人』はあらすじにもあるように、高校を舞台にしたミステリーです。
登場する探偵ももちろん高校生。部長にかけられた嫌疑を晴らすため、部員の少女が変わり者として知られる生徒へと依頼する場面から話はスタートします。
高校生探偵を主役とした漫画・小説は名作揃いな上、王道から変わり者まで出し尽くされた感がありました。
また主人公の周りに幼馴染や推理で助けた少女、また裏がありそうなキャラクターなど、ラノベを彷彿とさせるものがたくさなります。
私も初めて読む前は、主人公がアニメオタクな時点でライトなミステリーなのかと思ったりしていました。
しかし、読めば読むほど『本格派ミステリー』としての面白さが輝く作品なのです!
特に注目したいのが章のタイトル。
第一章は事件とともに始まる
第二章において探偵役が登場する
第三章は容疑者絞りに費やされる
第四章の末尾で全てのヒントが出そろう
このようにすべての章にわかりやすくタイトルがついております。
タイトル通り4章までが推理部分で、5章が解答になります。
『読者への挑戦』へは、古典的推理小説を思い浮かべる文言がズラリ。
これで推理への意欲を掻き立てられた人も多いんではないでしょうか?
わたしも結構頭ひねったつもりなんですけどねー、途中でギブアップしました。
そんな私でも解答編の客観性やわかりやすい説明に納得してしまう推理でした。
たまに解説を聞いてもわからない推理もありますが、この作品は一筋もそんなことがありません!
徹頭徹尾、論理的であり、さらにわかりやすい、凄い小説になってます。
推理することが楽しくなるミステリー!

最初から最後までスッキリとした構成で、推理することが楽しくなるミステリーです。
推理自体も無理なく、文章中に出てくるヒントだけで、読者にも推理できる構成はさすがの一言。
作者である青崎さんの手腕がわかります。
トリックの解説の前に、きちんと『読者への挑戦』がついているのも良いですね。
いつの間にか解決編に入ってしまいネタバレしてしまうなんてことは決して起きません。心ゆくまで推理を楽しむことができます。
アニメなどサブカルチャー好きのオタクが探偵になる設定は他にもありますが、ここまで論理的に話が進むものは珍しいです。
特に、たった一本の「傘」から導き出される真実には驚愕するしかありません。あの論理的推理は最高です。
その上、きちんとアニメ好きには鉄板のネタを織り込んできます。ライトなアニメファンから楽しめる内容です。
最初から最後までストレスなく読み進めることができるので、推理することが楽しくなるミステリー小説と言えるでしょう。
超能力やSFのような要素もなく、ただ証拠を集め、それらを論理的に組み立てていく推理ものの醍醐味を味わうことができます。
これからの裏染天馬シリーズにも期待が高まります!堪能しましょう!この推理劇を!

主人公を筆頭に登場人物のキャラクターが立っていますよね。オタクっぽいネタも、実際のネタを入れてくるあたり、親近感を感じてしまいます。
そして、ミステリーとしても本格的でそのギャップがまたいい感じですね。
先日、水族館の殺人、50円玉祭りを読み終わりました。長編ももちろん面白いですが、短編もいいですねー。世界観がまた深まりました。図書館の殺人は、今日、図書館から(ややこしいですねw)予約取り置き完了のお知らせが来ましたが、休館日でした(笑)。明日借りて来ます!
今後もシリーズが楽しみですが、体育館の殺人は、世界観の虜にしてくれる1作目ですね。
裏染天馬シリーズのキャラクターはほんと良いですよね!
天馬はもちろん他の主要人物も良いキャラしていて好きです。
ですよねー!長編も良いんですけど、短編もしっかりしていて面白いですよね。キャラクターの事を深く掘り下げているし、日常の謎としての質も高い。いいですねえ。
図書館はもうすぐですね!笑
ぜひ楽しんでください!
裏染天馬シリーズ面白いですよね!!
ハードカバーで初めて読んだとき、最初の推理に一目惚れしてしまい、それ以降ずっと追いかけてるシリーズです。新作が待ち遠しいですよー。
蝉コロンさんこんばんは!裏染天馬シリーズ面白いですよね!
私も初めて読んだ時、あまりの推理に美しさに惚れてしまいました。
これはとんでもないシリーズが出てきたぞ、と。
新作待ち遠しいですよねー、ほんと。次は何館になるのでしょう。
早く天馬の活躍が見たいです。
今最も次作が気になるシリーズです!
その安定感に、青崎氏も最早若手と呼ぶには差し障りがあるように なってきたのではないでしょうか。
傘、トイレットペーパー、折れたカッターの刃と、毎回クイーン的で象徴的な論理が楽しいです。
やっぱり気になりますよねー!早く天馬の推理が見たいです。
ほんとですね、最早若手と呼ぶには差し障りがあると思います。毎回この出来ですもん。凄すぎますよ。
次はどんなクイーン的推理を見せてくれるのでしょうか。ああ、気になる……(*´ω`)
お久しぶりです。
裏染天馬シリーズ。
文章の書き方やキャラとか、ふざけてる
ようでみんな味があったりで、
ほんと、大好き!
もうすでに次の裏染シリーズでないかな、、早く出ないかな(笑)
hitomiさんお久しぶりです!元気してましたか?
裏染天馬シリーズ、ほんと愛着がわくキャラクターばかりで良いですよね!
私も早く新作が出ないかソワソワしてなりません。早く出ませんかねー(*´ェ`*)