『スマホを落としただけなのに』-第15回このミス大賞隠し玉は二転三転のサイバーサスペンス!

第15回このミステリーがすごい!大賞の「隠し玉」作品、志駕晃さんの『スマホを落としただけなのに』が発売となりました。

「隠し玉」とは、新人作家さんの作品を募集したノベルス・コンテスト・「このミステリーがすごい!」大賞で、「賞は取れなかったけど、どうしても作品に残したい」と思えた作品に与えられる賞のことです。

毎回「優秀賞」と同じくらい楽しみにしているやつです。

で、今回の『スマホを落としただけなのに』は〈サイバーサスペンス〉ですって。

タイトルの通り、「スマホを落としただけなのに」大変なことになってしまう物語でした。

 

目次

志駕晃『スマホを落としただけなのに』

ある男がスマホを拾ってしまいます。

その拾ったスマホに、「稲葉麻美」という女性から電話がかかってきます。

どうやらこのスマホは、稲葉麻美の恋人のモノらしい事がわかりました。

で、「このスマホ拾ったんですけど、どうすれば良いでしょう」という話になって、後日、男は稲葉麻美にスマホを届けることになります。

親切に届けてくれるなんて、良い人に拾われてよかった!なんて思っていた稲葉麻美。ですが、とんでもない。

このスマホを拾った男がヤバいやつだったんです。

拾ったスマホの待ち受けには、持ち主である男と稲葉麻美のツーショット写真が設定されていたのですが、美人な稲葉麻美に男は目を奪われてしまったんですね。

というわけで男は、そのスマホを利用してとんでもない行動に移るのです。

男は富田誠のスマホをパソコンに繋ぎ、「1204」のパスコードを入力する。そして解析ソフトを起動させると、そのバックアップデータをすべて自分のパソコンに保存した。

P.27より

これは、知人がスマホを落とした事でヤバい男の標的になってしまった女性のお話です。

怖いのは落としたのが自分じゃないってところですよ。

いくら自分がしっかり管理しておいても、知り合いがスマホの管理を怠る事で自分に被害が回ってきてしまうのです。おーこわ。

身近に潜むリアルな狂気

まずこの作品の面白いところは、現代の私たちが当たり前のように使っているスマホって便利だけど危険と隣り合わせだよ、と思い知らされることですよね。

悪用しようと思えばこれだけの事が簡単にできてしまうのかと。

フェイスブックやLINE、ツイッターなどのSNSの「乗っ取り」や「なりすまし」。その巧妙な手口が細かに描かれているんです。著者の志駕晃さん自身がこういう事やったことあるんじゃないの?と疑ってしまうくらいに。

しかもその難しそうな手口を、誰にでもわかりやすく説明しているところがまた凄い。そういうの詳しくないわたしでもスッと理解できちゃいました。勉強になります。

特にどうやってその人のアカウントのパスワードを手に入れるのか、とか超怖いですよ。こんなの騙されてもしょうがない、ってなります。

今もニュースなどではこういったSNSの乗っ取りや詐欺の話題が上がったりしていますが、実際わたしは被害にあったことがありません。

なので心のどこかで「自分は関係ないだろうなあ」なんて思っていました。でも、この作品を読むと「これは他人事じゃないな」と思わされますね。

スマホを一つ落としてしまうだけで、個人情報や人間関係が丸裸にされていくんですよ。パスワードを設定してるから大丈夫!じゃないんです。その過程をこんな風に見せられては恐ろしく思うに決まっています。

ミステリとしても良し!

さらにそこに奇妙な殺人事件が加わります。

今作は〈スマホを拾った男〉〈その男に狙われる稲葉麻美〉〈山に埋められた死体を発見した刑事たち〉の三つの視点で構成されています。

この三つの視点が、物語が進むにつれて徐々に繋がっていくわけです。

この書き方もお上手でしたね。

三つも視点があると混乱してしまいがちに思えますが、これは実に読みやすかったです。なんの引っかかりもありませんでしたし、引き込み方も十分でした。

サスペンスに溢れる展開に「うわーSNSこわー」と思いながら終盤まで読んでいくと、そこからさらに二転三転する展開を楽しませてくれます。

隠し玉だからと言って侮れませんよ。

他のこのミス大賞シリーズも

第15回のこのミス大賞も面白い作品が多かったですねー。

わたしは「このミス」や「このミス大賞」の作品って、自分が興味のあるジャンルとかでなくても絶対に読むようにしているんですけど、やっぱり賞をとるだけあって面白い作品が多いですよね。

このおかげで普段読まないような作品にも手を出す事ができて、自然と読書の幅が広がるのでありがたいです。

もしこのミス大賞にご興味があるなら、ぜひ第15回「優秀賞」の『 縁見屋の娘』『クルス機関』などもお手に取ってみてくださいな(*´∀`*)ノ

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)

コメント

コメント一覧 (6件)

  • 連日の投稿失礼します。

    この本、先程私が書店で買おうか買うまいか散々迷って買わなかった作品です(笑)
    うーん、やっぱり買うべきですね、、、
    じゃなくて買いましょおぉ!!
    このミスの作品、大賞じゃなくて書籍化されたもののほうが個性的でキワどい作品多くないですか?
    私が読んだものが片寄ってるかもしれないですが。。
    例えば「何様ですか?」みたいなちょっときついやつ(笑)
    個人的にはメフィスト賞より、かたに嵌まってない斬新さだと思います!ある意味(笑)

    • hitomiさんなら気になっているだろうと思っていました!笑
      そうそう、このミス大賞は個性的な作品多いですよね。
      ただ私はどうしても読んでしまう!あるんですよ、たまにツボな作品が。
      今回のこのミス大賞では、さっき記事投稿したんですが『愚者のスプーンは曲がる』という作品が個人的には一番のヒットでした。
      こういうのに出会っちゃうからこのミス大賞読み漁るのやめられないんですよねー。
      メフィスト賞より斬新なのは間違いないと思います!笑
      やはり「新人作家さんならではの味」というのが格別ですわ(ノω`*)

  • 結局買って読みました!(笑)
    かなり。私はすごく好きですね。
    なんとなく、途中気づいたりしますが、最後は意外にハッピーエンド?!みたいな(笑)
    「愚者のスプーンは曲がる」も買う予定ですし、
    以前書き込みさせていただいた、法条遥さんのReシリーズも買ってしまいました。。
    金欠。。終わってます\(^_^)/

    • おおー読んだんですねー!よかったです(*´∀`*)
      私もサイバーサスペンスとしてかなり楽しめましたー。隠し玉なのがもったいない。
      そうそう、最後のほう富田さんカッコイイですよね笑
      なんと!Reシリーズも買われたのですね。しかも愚者のスプーンも買う予定と。
      おめでとうございます!金欠仲間ができて大変嬉しいです \(^o^)/

  • たったいま読み終わりました!

    なんかこうストーリーとかトリックとかも良かったんですけど、富田くんみたいな無邪気だけどただただ良い人みたいなキャラクターが翻弄されてるのを振り回してる側の目線で見るのって心苦しいですね笑

    ミステリーが現代の技術と融和して細分化していく流れの中で、SNSを題材に難しい分野も分かりやすい描写でとても読みやすかったです!

    次は借りて来たコフィン・ダンサーを読もうかと思ってます

    • おお!お早い!
      富田さんいいキャラしてますよね笑。ほんとドキドキさせてくれますよ。。
      まさに現代ならではのミステリーで、SNSの恐怖をうまく取り入れ、かつ「読ませる」物語に仕上げてますよね。すごいなあ、と素直に感心しました。
      おおコフィン・ダンサー!いいですねえ。その勢いでぜひシリーズ一気読みを!笑
      なかなか大変ですけどね…(ノω`*)

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