『スカイツリーの花嫁花婿』- ラブコメミステリの決定版!各章で人々がリンクしていき全員が主人公となる群像劇

8人の個性的な登場人物が各章で主人公となり、そしてリンクしていくという、凝った作りの本作。

物語は「カーテンコール 結婚式当日」と題された、挙式直前のシーンから始まる。

この章の主人公は花嫁で、別室にいる花婿のことを考えながら、ウエディングドレス姿を見て喜ぶ両親の様子に幸せをかみしめている。

そして窓の外には5月の晴天に向かってそびえる、高さ634メートルの塔『東京スカイツリー』の堂々たる姿が。

だが、その花嫁・花婿の名前は明かされず、第一章からは「パリコレモデルのようなスタイリッシュなフォルムの塔」と例えられるスカイツリーが見える街を舞台に、恋に不器用な男女のドタバタ群青劇が描かれる。

いったい最初の花嫁と花婿は誰だったのか?

幸せな結婚をするのは誰なのか?

前代未聞の「犯人当て」ならぬ「花嫁・花婿当て」という、一風変わったラブコメミステリー。

物語を読み進めるうちに次々と明かされる意外な真実、そしてそこに至るまでの流れに、読者は大いに驚かされることになるでしょう。

目次

全員が超個性的!読み進めるにつれ登場人物に振り回される読者自身

この物語にはたくさんの登場人物が出てきますが、皆個性的なのが面白いです。

恋愛下手でスカイツリーが大嫌い! 失恋後、ある決意を胸に秘める めぐみ
挫折続きのセールスマン 笹口
初恋に思いを馳せるキャバ嬢 樹里
挙動不審なイケメン 南條
家族に悩むタクシードライバー 和香子
愛した人の葬儀に参列 徳也
屈折を抱える万引き少女 実夢

読み進めるにつれて情報がどんどんアップグレードされていき、超個性的な登場人物の深みがあるそれぞれの人生が幾重にも交差していく様子に読者自身も振り回されるようにして物語は進んでいきます。

果たして、ウエディングベルは誰に鳴り響くのか…?

読者は第5章まで、最初に出てきた花嫁と花婿が誰だったのか知ることは出来ません。

それぞれの主人公の物語を読み進めていくことで初めて、バラバラになったパズルがはまっていくように、誰かどういった立場の人物なのかを知ることが出来るような構成になっています。

そして物語が進むにつれて、「誰が最初の章に出てきた花嫁・花婿なのか」という謎に、読者はハラハラ・ドキドキさせられるというわけです。

ある章の主人公が小さな意地悪をしたことにより、別の章の主人公がそれにより物語が変化していき、物語は坂道を転がるかのように回転し、加速していく。

目まぐるしく物語が進む中で、各主人公の背景や明らかにされる事実に、読者は次々と翻弄されていくことになります。

各章に出てくる主人公たちと一緒に読者自身も巻き込まれる形で、話に振り回されるような面白さを感じられます。

ラブコメミステリーという独特のジャンル

第6章の「スカイツリーの花嫁」では、ここで「そうだったのか!」と思わず唸る物語構成になっています。まさにラブコメミステリーの醍醐味。

次から次へと登場する恋に不器用な男女たちに「いったい誰と誰が結婚するのか?」と推理しながら読み進める形になるでしょう。

過去を遡り男女8人の出会いや再会、その後の物語が描かれています。

表紙の帯に「神様、そろそろください、ハッピーエンド。」と書いてある通り、ときに絶望したり辛い気持ちになる登場人物に感情移入する瞬間が多々ありますが、「人の幸せ、もううんざりですね」というセリフには思わずちょっと笑ってしまいます。

しかし最後はスッキリと愉快な気持ちで読み終わることができます。

ミステリーなので謎も随所に散りばめられており、その謎をラブコメという形で回収していくので読んでいて愉快な気分にさせてくれるのも良いポイント。

「花嫁・花婿当て」という特有の“ラブコメミステリー”としての魅力が本書には詰まっています。

ラブコメミステリーの一冊目ならコレ!

こちらの作品は、普段はミステリー、もしくはラブコメどちらかしか読まないという人も楽しめる内容となってます。

普段ミステリーしか読まない層がミステリーを読まない人にも紹介したくなる作品だと思います。

近年のコロナ禍がない世界という設定も、本書の印象を決定づける大きなカギの一つ。

今は自粛ムードで男女の出会いの場は少なくなり、不器用な男女が恋愛するハードルはより高くなり、いっそう難しい世の中になってしまいました。

「せめて小説の中でくらいこんなことが起こってもいいじゃないかと、愉快な気持ちで読んでもらえたらうれしい。」

と作者本人が私たち読者に向けて伝えてくれているのですが、ラブコメでありミステリーでもある本作はまさに今の時代にピッタリなエンタメとなっています。

そして作者自身が「スカイツリーが好きなんだな」というのが文章を読んでいてひしひしと伝わってくるのもポイントが高いですね。

スカイツリーを通じて読み手に伝わる世界観は私たちを東京の街を探索しているような気分にもさせてくれます。

東京スカイツリーの通常ライトアップは三種類あるというのも、私はこちらを読んではじめて知りました。

あまりミステリーには興味を持ってこなかった、又はラブコメが混ざるミステリーは読むのに躊躇するかもしれませんが、それはもったいないです!

むしろ、この本を読むことによってラブコメミステリーの面白さに目覚めることができるかもしれません。

普段ミステリー、又はラブコメを読まない層も引き込まれるほどに、本書は“ラブコメミステリーとしての面白さ”が凝縮されており、読書が好きな方は読んで損はないハズ!

個性的な主人公ばかりなので読み応えも抜群な本作、このタイミングでぜひ一読してみてください。

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)

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