ジョン・ヴァードン『数字を一つ思い浮かべろ』-数字の謎と、元刑事と、家族の物語

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「1000までの数字を頭に思い浮かべてみろ」と手紙がそう命じた。

この手紙が届いたのは、退職刑事ガーニーの友人。

彼が頭に思い浮かんだ数字は「658」。

手紙の指示に従って開いた小さな封筒には、なんと658を選ぶという予言が書かれていたのだ──。

強烈な謎が冒頭から始まり、この物語は次々と手品のように謎を巻き起こしていきます。

次々に届く、脅迫状のような不吉な手紙。恐怖に駆られ、手紙の受取人は旧友であり元刑事のガーニーのもとへ相談に向かいます。

しかし、この手紙の受取人は何者かに殺害されてしまう。

殺人現場は一面の雪のなか。犯人らしき足跡は、森の中で途切れており……。

手品のような不可解な連続殺人に、ガーニーはどのように立ち向かうのか──!

目次

ハードボイルドな元名刑事ガーニーの内面は実は……

この作品は『このミステリーがすごい! 2019年版』のトップ10にランクインした上位作でもあります。

元ニューヨーク市警として名刑事と言われたガーニーの刑事小説であり、ガーニーと妻との家族小説でもあるこの作品。

それを絡めるのはたくさんの難解なパズルのような謎解き。

「658」の手紙を受け取ったのは、ガーニーの大学時代の友人で、心の癒しを求める人たちのための静養スピリチュアル施設を運営していました。

手紙には数字だけでなく、金銭の要求が書いてありました。

最初こそ少額だったので指示に従いましたが、脅迫状のような犯行予告のような内容の手紙が次々と届きます。

そして助けを求めたのが、その旧友ガーニーです。

この本では主人公ガーニーの心理描写も頻繁に描かれ、元とはいえ名刑事。

探偵とはまた違った人物的な魅力があります。見た目はハードボイルド、しかし心の内では弱さや葛藤を抱えている。

さらに刑事時代は仕事第一で家庭のことも蔑ろにしていたことも、ガーニーの心に引っ掛かりを与えています。

とはいえやはり元名刑事。目の前で発生した事件には食いつきたくなる性分。

しかも無鉄砲というわけでもないので、その行動力に有能さが合わさり、見事に活躍をしてきます!

この物語を読んでいると、ミステリーとしてのドキドキやハラハラだけでなく、ガーニー一家の家庭生活へのハラハラも味わえてしまいます。

1部、2部では謎の導入と夫婦問題や、女性との関わり、息子のエピソードなど、ガーニーの周りの話が多く当たられます。

そして3部に入って一気に物語は加速。解決までの快速な読み心地にワクワクが止まらなくなるでしょう。

警察小説+本格ミステリーの謎と真相と、根底の心情

ミステリーだけでなく家族との関係を含んだ心の動きも描写されるのが、この物語の一番の特徴であり、魅力であると思います。

警察小説でもあるが故に、警察内の長くリアルな会議も描写されています。

しかもその会議には心理学者も招かれての会議です。サイコパスな犯人との心理戦に、臨場感が溢れるシーンも多いです。

この本は500ページを超える長編作品なのですが、テンポ感が良くスピーディーに展開していくのでむしろ爽快感すら覚えるでしょう。

「数字を思い浮かべてみろ」という最大の謎を、なぜ手紙の送り主は当てることができたのか。

どうして雪の上の足跡が途中で途切れているのか。そもそも、なぜそんな手紙を寄越してきたのか。

謎と動機と犯行、最後まで読まなければ分からないミステリーが、話が展開していく毎に深まっていきます!

怒涛のラストに、希望のエンディング。

犯人の徹底的で冷静な計画と犯行、しかし力技てきなトリック、そして狂気的な執念……。

様々な心情が詰め込まれたこの物語は、本格ミステリー小説の中でも群を抜いた作品でしょう。

正統派警察物語でもあり、本格派ミステリーでもあるこの物語を是非楽しんでみてください!

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)

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