『過ぎ行く風はみどり色』とは、倉知淳さんによる長編推理小説。
神出鬼没で猫のようなまん丸の目が特徴の「猫丸先輩」を探偵役とした〈猫丸先輩シリーズ〉の二作目です。
何を隠そう、この作品は同著者の『星降り山荘の殺人 (講談社文庫)』と並ぶ傑作なのです!
もうどっちも最高傑作です。なんというか、タイプが違うんですよ。選べません。
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『過ぎ行く風はみどり色』
主人公となる方城成一が、10年ぶりに実家に帰るところから始まります。
なんでも、実家では幽霊騒ぎを発端に、叔父がある霊能者にハマってしまったとのこと。
そしてその目を覚まさせようと、他の家族は大学の心理学者たちを読んで霊能者のインチキを暴こうとしているのだとか。
で、実家が大騒ぎになって大変だ!ってことなので成一は実家に帰ることになったのでした。
第一の殺人
さて、成一が10年ぶりに帰郷したとたん、殺人事件は起きてしまいます。なんというタイミングの悪さでしょう。
密室殺人です。
しかも犯行以前には誰も現場に近づいていないし、家族を含めた関係者にはアリバイがありました。
でも外部からの侵入形跡もない。
まるで突然現れた幽霊にでも殺されてしまったかのようです。。。
第二の殺人
そんなこんなでいろいろあり、霊能者によって「殺された叔父の幽霊を呼び出そう」ということになります。
いわゆる「降霊会」です。
家族はもちろん、霊能者のインチキを暴くために、大学の心理学者たちも当然その降霊会に参加します。
もし本当に叔父の幽霊を呼び出せるのなら、死んだ本人から誰に殺されたかを聞き出せるはずです。
しかし、皆で降霊会をやっている最中に第二の殺人が起きてしまいました。
なぜ降霊会の最中に?
これがポイントですよね。
犯人は、なぜ降霊会の最中に殺人を犯さなくてはならなかったのでしょうか。
密閉状態にあるこの特殊な状況下で殺人が起きたとすれば、「犯人は参加者の中の誰か」に限られてしまいます。
自分を容疑者から外したいなら、他の場所で殺害し外部の人間の犯行にすることだってできたはずです。犯人にとってはデメリットでしょう。
しかも奇妙なのは、降霊会の最中はみな円になって、隣の人と小指と小指を重ねあった状態にあったわけです。
真っ暗の中だったとはいえ、両手を使ったり席から離れようとすれば隣の人に確実にバレます。
だけど殺人は起きた。
この状況でどうやって殺害することができたのか。
ミステリー小説の傑作に間違いなし
断言しましょう。間違いなくミステリー小説の傑作です。
質の高いトリックをふんだんに盛り込み、伏線の忍ばせ方と回収の巧さ。そして物語に施された「仕掛け」の見事さ。
「仕掛けとトリックのつなげ方」がお上手、とでもいうのでしょうか。この仕掛けがあったからこそ、このトリックが成立するわけで、でもそれには気がつけないわけで。
終盤で明らかになる事実に「おおおおおお!」と唸ってしまいます。伏線はあらゆるところに忍ばされていたのに、読者に全く気がつかせないこの技。大好き。
本当にこれをぜひ目にしていただきたい。
で、それを論理的に推理していく猫丸先輩の洞察力の凄さ。本当に圧倒されます。解決編は間違いなく一気読みでしょう。
私は推理においての猫丸先輩の心遣いに涙してしまいました。。
おわりに
「幽霊騒ぎ」や「降霊会」に「密室殺人」。
ジョン・ディクスン・カーの作品のようなおどろおどろしいキーワードが並びますが、『過ぎ行く風はみどり色』にそんな怖さは全くありません。
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むしろ、読後感には温かみがあります。終わり方もすっごく綺麗です。殺人が起きまくっているのに、「いい作品を読んだなあ」って気分になっちゃう。
読み終えたあと、『過ぎ行く風はみどり色』って良いタイトルだなあ、ってしみじみ思うんですよねえ。
あ、そうそう。
今作は〈猫丸先輩シリーズ〉の二作目となります。
できれば一作目の『日曜の夜は出たくない』(これもとっても面白い)から読むことをおすすめしますが、いきなり『過ぎ行く風はみどり色』を読んでも全く問題なく楽しめます。
なので安心してすぐにでも読んじゃってください!(゚∀゚*)

コメント
コメント一覧 (2件)
どうもです♪
猫丸先輩好きですね。でもまだ短編ものしか読んだことなくて。。
なんか、星降り山荘と同じ作者とは思えないほのぼのさで気に入ってしまいました。
もっと読みたいですね。
日曜の夜は出たくないと、こちらの、過ぎ行く風はみどり色読んでみよう!
また、本がたまっちゃうけど!開きなおります(笑)
hitomiさんこんにちは〜!
猫丸先輩良いですよね♪すごくクセになるキャラクターで私も大好きでして。
そうそう、星降り山荘と全然違うんですけど、どちらにも良さがあって。
ぜひぜひ読んでみてくださいー!本が溜まっちゃうのはもう仕方がないです笑。読書好きの宿命です( ゚∀゚)