『スタートボタンを押してください』-ゲームがテーマの傑作SFが12篇も収められた最高のアンソロジーです

すでにSF好きな方にも、そうでない方にもおすすめしたいSF作品が登場しました。

ゲームをテーマとしたSF短編小説の中から12編の傑作を選び抜き収めた『スタートボタンを押してください (ゲームSF傑作選)』です。

どちらかといえば、普段あまりSF小説を読まない方にこそ手に取ってほしい一冊。

本当にどれも面白いし、訳も読みやすいし、気軽にサクッといけるし。

SF小説に苦手意識のある方でも「おお、SF小説ってこんなに面白くて読みやすいんだ!」ってなります。

実際私もSF小説よりミステリ小説が好きな人間ですが、さすがにこれは作品集は存分に楽しめました。

ぜひ、お気軽にお手に取ってみてください(´∀`*)

 

『スタートボタンを押してください』

ゲームをテーマにしたSF短編が12編収められています。

ちょっとだけ内容をみてみましょう。

『リスポーン』

深夜の牛丼屋でひとり仕事をしていた「おれ」。

ある晩、包丁を持った強盗がやってきた。

めんどくさいと思いながらさっさと金だけ持って行ってほしかったのだが、第三者の乱入によって強盗が暴れてしまう。

そのとき、おれの首に熱い衝撃が走った。

痛みはなかった。小銭のシャワーが降り注ぐ中、おれは、雑巾の臭いのする床に口づけし、やっと、おれの頸動脈から鮮血が噴き出していることに気づいた。

P.19より


ゲームのキャラクターが死ぬと、所定の位置から再スタートすることを『リスポーン』と言います。

その設定をうまく日常に取り入れたSF短編です。

名作『All You Need Is Kill (集英社スーパーダッシュ文庫)』で知られる桜坂洋さんですからね。流石の面白さでした。

『救助よろ』

MMORPGに没頭しすぎるあまり、大学までやめてしまったという恋人のデボン。

泣く泣く別れたメグだが、本人とちゃんと話すべくそのMMORPGにログインしてみた。

すると、デボンから『救助よろ』のメッセージが届いて……。


はたしてメグはデボンの言う通り救助しに行くのか。

そしてデボンがそのゲームに熱中する理由とは。

驚きの真実が待っています。

『1アップ』

ネットゲーム上での友人・ソレンが病気で亡くなった。

その知らせを受けたキャット、デッカー、トードの3人は、現実世界では会ったことのないソレンの葬儀へ向かう。

そこで3人は、ソレンが自作した奇妙なゲームを発見する……。


ゲームといえど形は様々。

これはテキストアドベンチャーゲーム、つまり文字だけで進行するゲームのこと。

勝利まで猶予は五時間
僕が墓に入ったときから時計はスタート
USBメモリを取ってここから出ろ
彼女に見つかるまえに早く

P.82より

このテキストアドベンチャーゲームが意味するものとは。するとまさかの展開が。

本書に収められている12編の中でベスト3に入るくらい好きな物語でした。

『キャラクター選択』

いつもより早く帰宅すると、妻が嫌いだったはずのテレビゲームをやっていた。

プレイヤーキャラクターの一人称視点のFPSと呼ばれるタイプのものだ。

しかし妻は、全く敵を倒そうとしない。武器も取ろうとしない。

一体彼女はなんのためにプレイしているのだろう?


夫が悩むのも無理はありません。

敵を倒すゲームなのに、敵を倒すそぶりを見せないのですから。

しかし、彼女には目的があったのです。

ゲームをやる理由は人ぞれぞれ。自分にしかわからない楽しみ方があるというものです。

ゲームとSFの相性は抜群!

やっぱりゲーム小説は面白い。確信しました。

『バトルランナー』や『死のロングウォーク』をはじめ、『ハンガーゲーム』や『クリムゾンの迷宮』、『バトルロワイアル』、『放課後デッド×アライブ』、最近では『断片のアリス』などゲーム小説には名作が多い。

伽古屋圭市『断片のアリス』-VR世界でのクローズドサークル脱出ミステリって最高だ

そんなゲーム小説の傑作短編を12編に選び抜いたのだから面白くないわけがないでしょう。

他にも、『紙の動物園』で知られるケン・リュウさんの『時計仕掛けの兵隊』、

火星の人』でお馴染みのアンディ・ウィアーの『ツウォリア』、

NPC(コンピューターが管理しているキャラクター)がプレイヤーキャラクターに昇格するという斬新な短編『NPC』、

MMORPGの中でリアルマネーが稼げるミッションに誘われた少女を描く『アンダのゲーム』、

終業後のオフィスで開発中のFPSゲームをこっそりやっていたジミーの所に怪しげな男がやってきて、まさかの展開に巻き込まれていく『リコイル!』、

など好みの短編がかなりありました。これだけあればきっとお気に入りの短編が見つかります。

 

しかも収録されているほとんどの作品が本邦初訳・初出であるというからありがたい。

原初アンソロジーは二十六編、五百ページを超える分厚さらしいですから羨ましい限りです。

残りの14編も翻訳していただけないでしょうか。

【傑作選】一度は読むべきおすすめ名作海外SF小説30選

2 Comments

ひつじ

「普段SFを読まない人にこそ手にとってほしい一冊」というフレーズに惹かれて、読ませていただきました!
結果、めちゃくちゃ面白かったです!
個人的には、「リスポーン」、「1アップ」、「キャラクター選択」、「アンダのゲーム」が好きでした(^^)

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anpo39 anpo39

この作品集面白いですよねー!
普段はミステリばかりなのですが、このSFは本当に楽しめました。
わたしも「リスポーン」「1アップ」「キャラクター選択」「アンダのゲーム」が好みです。丸かぶりですね笑

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