道尾秀介『スケルトン・キー』-安定の読みやすさ+トリッキーな仕掛けが憎い!

 

楽しみに待っていた道尾秀介さんの新作!「スケルトン・キー」

最近では道尾さん本人がテレビに出る機会も多く、すっかり人気作家さんですよね。

道尾秀介さんは、イケメンかつ柔らかい物腰で、ミステリー界の貴公子的な方。

Twitterの文面も非常に真面目で、偉そうな部分一つない、好感しかない作家さんです。

そんな道尾さんの新作は、これまでの作品の中でもハード寄り。個人的に道尾さんはこのくらいハードな作品の方が好みです。

というわけで、気になる「スケルトン・キー」の気になる中身をレビューして参りましょう。

 

『スケルトン・キー』あらすじ

「スケルトン・キー」の主人公は、坂木錠也。

児童養護施設で育った、あまり報われない生い立ちをした未成年の少年です。

破天荒な行いを冷静に行う彼は、同じ施設で育った少女に、

「錠也くんみたいな人はね、サイコパスっていうのよ」

P90より

と自らの持つ、特性を告げられます。

そんな自分となんとか付き合いながら、施設を出た後は雑誌社の黒子としてスクープ現場を追いかけるといった活動をし、それなりの落ち着いた生活を送っていた錠也。

ところがある日、同じ施設で育った友人の告白で事態は一変します。

錠也の母親はとても悲しい亡くなり方をしているのですが、その母を手にかけたのが、友人の父なのだと言う疑いが浮上したのです。

小説では、母を殺された恨みを晴らすべく動き出す少年の姿が描き出されるのですが、ここはまだ前半、しかしこれ以上あらすじを語ってしまうとネタバレになってしまうと言う、書評泣かせの一冊でもありました。

という訳で、あらすじはここで終了。

続きはその目で!としか、本当に言いようがない点、お察し頂ければと思います。

中盤からのまさかの展開が見事!

「スケルトン・キー」の物語は、あらすじでは言えない中盤、後半の展開が正にキーとなります。

読み進める中で、

「え、そことそこがつながってるの?」

という声を何度も上げることになりますよ。

物語の中では殺人などの要素も多く含まれますが、そのシーンの描写へは重きを置いていないため、さらっと読み進めることができる点も見どころでしょうか。

サイコパスな主人公なため、殺戮などへ特別な感情が無い、と言う部分を表しているのだとも思います。

道尾さんの描く小説は、どれも人間の心理的部分を追求し、無駄な風景描写や残酷描写などが無いのが良いですね。

人によっては物足りないのかもしれませんが、私はこの雰囲気が断然好きです。

物語を辿っていくと、

「そういうことだったのか!」

と必ず感じる部分があるのですが、その合点がいった瞬間が心地良い作品。

とはいえ、それだけでは許してくれず、その後も道尾作品ならではの大どんでん返しが待っていますので、最後まで気を抜かずに楽しんでくださいね。

予想を裏切る展開にワクワク

「スケルトン・キー」はですね、読後感が悪くないです。はい。

帯には「僕に近づいてはいけない。あなたを殺してしまうから」という文面があり、主人公は恐怖を感じないサイコパスですから、当然残虐なシーンもある訳で……。

それなのに、最後は「ああ、なんか良かった」と思わせてくれる、不思議さがありました。数あるミステリー作品の中でも、特に人情味に溢れている一冊ではないでしょうか。

脳科学のジャンルが好きという道尾氏らしく、作中に人の顔をした絵とモナリザを鏡写しにしたイラストが用意され、どちらがほほ笑んでいるように見えるのかをいう疑似無視について、読者へも体験させてくれる試みも面白かったですね。

もちろん、この部分も後からストーリーへと大きく関わってきますよ。

読んでいる最中はあまり気付かなかったのですが、章の小見出しに当たる部分にも仕掛けがあり、後から「そうだったのか」(こればっかりですが)とまた、ため息が漏れるのです。

物語自体のテンポも良く、飽きることなくあっという間に読み進められますので、重いテーマでありながら、読後感が良く軽いミステリーを探している、という方は必読ですよ。

黒い道尾作品はやっぱり最高。

似たような展開のミステリーは他にもあると思うのですが、なぜか「スケルトン・キー」には新しさがある。

それは、おそらくラストへのつなぎ方と、丁寧に描かれた主人公の心の変化でしょう。

最初は、サイコパス錠也のことを「とんでもない面倒な奴」と感じますが、次第に彼の環境へ同情したり、理解が生まれたりした結果、最後は応援までしたくなる始末。

後は、読んでいただいてからになるのですが、物語がある部分と交錯していく点ですね。

「常に新しいことにチャレンジしたい!」と語る道尾さんの本気を見た気がしました。

当然「スケルトン・キー」という題名にも、意味があるので注目してみてください。

詳しいことがあまり語れずこちらももどかしいのですが、最後まで読んでいただければ、言えなかった理由がきっとわかって頂けるでしょう。(むしろ言ったら怒られるはず……)

普段はサイコパス系の題材が苦手、という方もこの作品は問題なく読めると太鼓判を押させて頂きます。

探偵ものや、トリックばかりに焦点があてられた作品に少し飽きてしまった……そんな方の箸休めにもぴったりの作品でした。

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2 Comments

こはる

お待ちしておりました!w(歓喜の小躍り)

最近だと、透明カメレオンの文庫化、風神の手、んでこのスケルトンキー 道尾先生の活躍がヤバイです(引き続き小躍り)

人情味あふれる結末ってのは、今までの道尾作品の安定感そのままなんですが、今回はいわゆるブラック道尾が結構出てて、ちょっと新たな一面を垣間見たような

例えばカラスの親指、透明カメレオンなんかのミステリーとはジャンルも違う、そんな今までになかった読後感 すげーよかったです!(語彙力w)

ちょっと読み返そうかなと思ってノエルや向日葵の咲かない夏を書棚から引っ張り出し再読してます 余韻をいつまでもおわらせないために

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anpo39 anpo39

待ってていただけましたか!笑
いやほんと、道尾先生の活躍すごいですよね。
いいですよねブラック道尾。私結構好きなんです笑
でも今回のスケルトン・キーは今までにない読後感で、道尾さんやっぱりすごいなーって思わされました。
いいですねえ向日葵。私も久々に読みたくなってきました。夏ですねえ……。

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