堂シリーズ第2弾!周木律『双孔堂の殺人』はどこまでも新本格な館モノでした

昨日2016/12/15に「堂シリーズ」第2弾、周木律さんの『双孔堂の殺人』が講談社文庫さんより発売となりました。今回はそのあらすじや感想などを。

『双孔堂の殺人』は2013年に講談社ノベルスより発売された作品なのですが、今回みごと文庫化いたしました!ヤッタネ!

文庫化あたって加筆修正もされておりますので、これから読むなら文庫の方がおすすめですよん。

しかも表紙が格段に美しくなっている・・・。

〈講談社ノベルス〉

双孔堂の殺人 ~Double Torus~ 堂シリーズ (講談社ノベルス)

 

今回の〈講談社文庫〉

双孔堂の殺人 ~Double Torus~ (講談社文庫)

 

文庫版の表紙好き・・・。飾っておきたい(ノω`*)

 

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目次

周木律『双孔堂の殺人』

物語の始まりは、警視庁に努める宮司司(ぐうじつかさ)が「ダブル・トーラス」という建物に向かうところから始まります。

「ダブル・トーラス」の持ち主は、伝説の数学者・降脇一郎。

しかし今回の目的は降脇ではなく、今その館に滞在しているという放浪の天才数学者・十和田只人(とわだただひと)である。

妹が十和田の大ファンなため、彼のサインを貰いに行くのだ!!

が、「ダブル・トーラス」に着くと数台のパトカーが。どうやら様子がおかしい。

話を聞くと、なんと「ダブル・トーラス」の中で二人の人間が殺されたのこと!

しかも犯人は・・・・。

十和田は、初対面の俺に向かって、自信満々に、しかしとんでもないことを言ってのけた。

「犯人は僕だ。そうでしかありえないんだ」

『双孔堂の殺人』 P.26より引用

なんと、前作『眼球堂の殺人』で見事な推理を見せた今シリーズの探偵役・十和田が犯人だという衝撃の冒頭。

しかも自分が犯人だと認めていて、警察に連れて行かれてしまった。

このいきなりの展開でグッと物語に引き込まれてしまいましたね。ページをめくる手を加速させてくれます。

というわけで、今作の中心となるのは警視庁に努める宮司司。

事件が終わった後に来た彼が、事件に関わった人物に話を聞いたり館内を調べたりして、真実を突き止めようとしていきます。

超、理系。だけど大丈夫。

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理系ミステリでお馴染みの「堂シリーズ」ですが、今作は前作『眼球堂の殺人 ~The Book~ (講談社文庫)』より理系感がアップしていますね。

もはや私の頭では理解不能であり、読み飛ばしてしまおうかと思ったほどでした。

例えば、

「あ、ごめん。えっとね・・・トーラスって言うのは位相幾何学の用語で、ドーナツみたいに穴の開いた形のことを指すの。トーラスの一次元ベッチ数は二になるんだけど、これは直感的には、曲面上に、ある曲面のへりとはならないような曲線を描いたときに、それが何種類あるかっていうことを表した数のこと。」

『双孔堂の殺人』 P16より引用

「でね、その穴のことを種数って呼ぶんだけど、これとか、さっきのベッチ数みたいな不変量に基づいて、多様体を様々に分類するの」

『双孔堂の殺人』 P16より引用

などの会話。

恥ずかしながら私には意味不明なのです。「何言っているの?」って感じです。

開始10ページほどでこれですからね。しかもこんな会話は当たり前というか、この先もっと意味不明な理系会話が出てきます。

しかしそこで「意味がわからないからこの作品はつまらない」と思ってしまうのは違うんです。

正確には「意味がわからなくても良い」のです。

そもそも、読者に理解させる気なんてないのです。

文庫版あとがきで周木律さんは、

たとえ初歩的なものであったとしても、数学の話が入るというだけで読者が辟易するのは、容易に想像がつく。ましてや聞いたこともないトロポジー云々などと語られれば、きっと本を閉じてしまうだろう。ここで読むのをやめてしまう読者だって、少なくないに違いない。

文庫版あとがき P.410より引用

と述べています。

読者にとって読みづらいとわかっていたのにもかかわらず、文庫化にあたって改稿するときにあえて大部分を残したのです。

なぜならこれは「数学者」の作品だからーー。必要なものなのです。

というわけで、『双孔堂の殺人』を読んでいて意味がわからない部分に出くわした時は理解しようなんてせずに、「なんか凄いこと言っているなあ」「やっぱり十和田只人って変人だなあ」くらいに思っておけば大丈夫です。

いちいち理解しようなんてしていたらまず読み終わりませんし(私の頭脳では)、理解しなかったとしても物語に影響はございません。

へえ、そういうものなんだ。と割り切るのがベストです( ゚∀゚)

この感じ、懐かしい。

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さてこの堂シリーズは「風変わりな建築家が建てた奇妙な館で殺人事件が起きる」、というシリーズなんですが、このパターンはどこかで見覚えがありませんか?

ミステリ小説をお好きな方ならすぐにピンと来るでしょう。

そう、綾辻行人さんの「館シリーズ」のパターンと非常に似ていますね。

関連:【綾辻行人】館シリーズの順番とあらすじ【十角館】

そして「建築&理系」の要素を前面に押し出しているこの作風は、森博嗣さんの「S&Mシリーズ」を思わせます。

関連:【森博嗣】S&Mシリーズの順番とあらすじ【すべてがFになる】

いわゆる『新本格』の影響をもろに受けていることは間違いないでしょう。

しかしその為どうしても「館シリーズ」「S&Mシリーズ」などと比べられてしまうため、あまり良くない意見も少なくはないようです。

だけど私は大好物なんですよ。「館シリーズ」や「S&Mシリーズ」の影響をもろに受け継いでいるこの作風が。

『双孔堂の殺人』を読んで、「今更こんな物理トリック?どっかで見たことあるなあ」などと思う方もいるかもしれません。

でも私はこれを「今更」ではなく「懐かしい」と感じます。「そうそう、新本格ってこういう感じだよねえ」って嬉しくなるんです。

そもそも影響を受けているからといって比べること自体がナンセンスです。堂シリーズには堂シリーズにしかない面白さがあるんですよ(人´3`*)

必ず前作を読んでね!

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最後にお伝えしたいのが、『双孔堂の殺人』を読むならシリーズ第一弾の『眼球堂の殺人 ~The Book~ (講談社文庫)』を必ず読んでおかなくてはなりません。

シリーズならではの繋がりがありますので、これは絶対です。

『眼球堂の殺人』を読んで「お、この作品面白いな」と思っていただけたなら、ぜひ『双孔堂の殺人』も読んでみてくださいな。

続々とシリーズの主要キャラクターが登場してきて、シリーズ物としての面白さがこれからどんどん増えていくのですから!

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それでは、良い読書ライフを!(* >ω<)=3

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)

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