自作ショートショート

【自作ショートショート No.58】『魔法のスパイス』

魔法のスパイスなる発明品が発売された。

魔法を名乗るだけあり、その効能はすごい。

例えどんなに不味い料理であっても、魔法のスパイスをかけるとあら不思議。

なんと三ツ星シェフも驚きの絶品料理に変わってしまうのだ。

当初は広告も特になく、ひっそりと発売された魔法のスパイス。

発売から一ヶ月後、魔法のスパイスは口コミで爆発的に売れるようになった。

メーカーからはあっという間に在庫が切れてしまい、品薄で騒ぎになるほど。

転売で価格が十倍になるくらい、魔法のスパイスの効果は画期的で好評だった。

魔法のスパイスの登場により、世の中は大きく変わった。

料理が不味いと夫や姑から責められていた主婦は、魔法のスパイスのおかげで周りを見返すことができた。

飲食店ではより安価においしい料理を提供できるようになり、利益が倍増した。

国際的に問題視されていた食糧不足に至っては、通常なら不味くて食べられない食材に魔法のスパイスを使用し、今まで廃棄されていた食材を世界中に配布することで、解決の糸口を見つけた。

世の主婦から社会問題まで。魔法のスパイスはあらゆる悩みを解決してきた。

それはまさに、神がもたらした奇跡の発明と言えるだろう。

だが、世の中には光があれば闇もある。

当然、魔法のスパイスにも闇の部分――問題点が存在した。

魔法のスパイスはどんな料理でも絶品に変えてしまう。

そう、それが例え腐って傷んでいる料理であってもだ。

どんなに腐っていても、魔法のスパイスをかければ絶品料理に早変わり。

これで問題が起きないはずがない。

世間では、魔法のスパイスが原因の食中毒事故が多発した。

特に飲食店では劣悪な食材を使った店が増えたため、被害は拡大。

ついには死亡者まで出てしまう事態になってしまった。

当然、この事件をマスコミが報道し、事件は大きな話題に……ならなかった。

なぜなら、魔法のスパイスを発売したG社が、報道にストップをかけたからだ。

G社は魔法のスパイスの売り上げを使い、各テレビ局に大規模な広告を出していた。

つまりテレビ局はスポンサーからの圧力に屈して、食中毒事故の報道ができなかったのだ。

ローカルテレビの中には事件を報道した局もあったようだが、そういう番組のスタッフは全員左遷されることになった。

このような状況で、魔法のスパイスに異議を唱えられる者は、もはや存在しなかった。

G氏は魔法のスパイスを発明した、開発者のひとりである。

もともとG氏が経営するG社は小さな会社であった。

しかし今ではマスコミだけでなく、政治家までもがご機嫌伺いをするような、世界的大企業に発展している。

G氏は私生活でも魔法のスパイスを愛用している。

G氏は毎晩、自身の豪邸に一般の主婦を招いていた。

それもただの主婦ではない、料理が下手だと世間で評判になっている主婦である。

料理下手な主婦に食事を作らせ、それに魔法のスパイスをかける。

そうして美味しく作り変えられた料理を楽しむのが、G氏の趣味だった。

だが、この趣味がG氏の命取りになる。

その日も家事が下手な主婦に食事を作らせ、魔法のスパイスの効力を楽しんでいたG氏。

「うっ!」

ところが食後、G氏は突然倒れてしまう。

実はこの日招かれた主婦は、ある事情を抱えていた。

魔法のスパイスが原因の食中毒事故――それによって、この主婦は大切な夫と息子を亡くしていたのだ。

マスコミに圧力をかけ、事件を無かったことにし責任を逃れたG氏。

この主婦はG氏に恨みを持ち、復讐する機会を伺っていたのだ。

つまり、G氏がこの日食べた料理には、毒が入れられていたのである。

だが、本来この毒は異臭がするため、混入していても確実に気づかれる代物だった。

そう、本来は。

しかし料理にはたっぷり魔法のスパイスが使われていたので、毒の異臭まで消えてしまったのだ。

オマケにG氏は、この日の料理を美味しいからと、三回もおかわり。

当然毒の摂取量は三倍になり、G氏はそのまま命を落とした。

自らの発明した魔法のスパイスに殺される、皮肉な結末を迎えて。

(了)

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星夜 行(ほしや こう)というペンネームで書いてます。

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