自作ショートショート

【自作ショートショート No.43】『理想の惑星』

「艦長、そろそろ目的の惑星に到着します」

「うむ。事前調査では、特に危険はなさそうだったが、何があるか分からない。無事に着陸するまで、気を抜かないでくれたまえ」

「了解!着陸準備に入ります!」

一隻の宇宙船のコクピットでは、若い操縦士とあごひげを蓄えた男が、真剣な様子で言葉を交わしていた。

艦長と呼ばれたあごひげの男は、ブツブツと何かをつぶやいている。

「頼むぞ。人類の命運がかかっているんだ。どうか良い星でありますように……」

この宇宙船が地球を出発したのは、もう三年以上も前のことだった。

十数年前からの爆発的な人口増により、地球上のみで生きていくことを諦めた人類は、新たな住処を求めて、未知の惑星を探索することにしたのだった。

世界各国が協力し合って、十隻の宇宙船が旅に出たのだが、地球人が生活していけるような環境の惑星は、未だに見つかっていない。

「この星は、いいところだといいですね、艦長。前回の星みたいに、野蛮な宇宙人たちがいきなり攻撃を仕掛けてこなければいいのですが」

「ああ、そうだな。気温や天候、大気の構成成分が申し分ないとしても、実際に着陸してみるまでは、どんな星なのかは分からないからな」

少しの期待と大きな不安を感じながら、宇宙船はこの星に着陸した。

「どうも、ようこそいらっしゃいましたな」

艦長が宇宙船の外に出ると、そこには数人の宇宙人が、穏やかな笑みをたたえて待ち構えていた。

外見や文明レベルなどは、地球人のそれとよく似ているようだ。

「……どうも、初めまして。私たちは、はるか遠くの地球という惑星からやってきた地球人です」

「それはそれは、さぞかしお疲れのことでしょう。ささ、こちらへどうぞ。まずはゆっくりお休みくだされ」

「あの、私たちを怪しまないのですか?自分で言うのもおかしな話ですが、よその星からやってきた異星人を、いきなり歓迎してくださるとは……」

「何をおっしゃいますか。あなた方を見れば、敵意がないことはすぐに分かりますよ。それに、もしワレワレの星を侵略しようとでも考えているなら、着陸する前に攻撃されているでしょうからな」

宇宙人の長と思しき老人は、そう言うと穏やかに笑いながら、言葉を続けた。

「それに、この星にはあなた方のような異星人がよく立ち寄るのです。ワレワレは、その度にこうやってもてなすのですよ」

「そうなんですか、それはありがたい。感謝します」

「いえいえ、礼には及びません。夜には宴の準備もしますので、お楽しみに」

地球人たちは、心の底からホッとして、宇宙人たちの歓迎を喜んでいた。

夜に開かれた宴の席には、色とりどりの食事が並んだ。

どれも見慣れないものだったが、不思議と地球によく似た味付けだったので、皆とても幸せそうに舌鼓を打っている。

「あの、ひとつお聞きしてもいいでしょうか」

一通りの料理を口にした後で、艦長は宇宙人の長に声をかけた。

「ええ、なんなりと」

「とても美味しい食事なのですが、こちらの料理にはどうも肉や魚といった動物が使われていないようです。それと、この星に着陸してから、一度も動物の姿を見ていないのですが」

「ええ、おっしゃる通りです。実は、大昔はこの星にもたくさんの動物たちが暮らしていたのですが、私たちの祖先は大層な肉食好きでして、全ての動物を食べてしまったのです」

「なんと、一匹残らず食べてしまったと?」

「はい、お恥ずかしい話です。祖先には計画性がまったく無かったのです。食べたいから目の前の動物を食べる、ということしか考えていなかったようですね」

「それはなんとも……」

「ですので、我々は考え方を変えて、計画的に食糧を調達することにしたのです。みなさんにお出しした料理も、その計画のもとで植物を栽培し、調理したものです」

「なるほど。過去のあやまちを反省して、考え方を変えたと。素晴らしいことですね」

「いえいえ、褒められたものではありませんよ。それに、全ての動物たちがいなくなってしまったことで、我々の星は土地が余って仕方がないのです。植物の栽培用地も、全ての土地を利用する必要はありませんし」

「そうですか……」

艦長はあごひげに手をやると、一瞬何かを考えてから、ふたたび口を開いた。

「……もしよければ、なのですが、その余っている土地を、私たち地球人に貸していただけないでしょうか」

「ほう、詳しくお話を聞いても?」

「実は、私たちの暮らしている地球では、人口が増えすぎて土地が足りず、他の星に移住先を探しているのです。こちらの星はとても美しく、環境も地球にそっくりだ。なにより、あなた方のように穏やかな方々とであれば、うまくやっていけると思うのです」

「なるほど。いいでしょう。あなたたち地球人が我々の星に立ち寄ったのも、何かの縁です。余っている土地であれば、どうぞご自由に使ってください」

宇宙人の長は、そう言うとにっこりと優しく微笑んだ。

「ありがとうございます!ご協力に感謝します」

それから数か月後。移住計画の第一弾として、一万人の地球人が、数隻の大型宇宙船に乗って、かの星に向かっていた。

もうすぐ着陸体制に入ろうかという時、その星では、宇宙人の長が側近の若者と話をしていた。

「長、いよいよですね。この日を待ちに待っていましたよ。私はもう、肉を食べたくて食べたくて……」

「これこれ、焦るでない。今日やってくるのは、たった一万人じゃ。そんな数では、あっという間に食べ終わってしまうわい。この一万人がこの星に馴染むことができれば、もっと大勢の地球人が運ばれてくるはずじゃ。その時までは我慢じゃぞ」

「そうですね。食糧確保はも計画的に進めないといけませんものね」

「そういうことじゃ」

宇宙人の長はそういうと、いつものように優しく微笑んだ。

(了)

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星夜 行(ほしや こう)というペンネームで書いてます。

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