自作ショートショート

【自作ショートショート No.15】『現実的な不老不死、または最悪の地獄について』

A県の山奥にある、とある研究所。

ここでは不老不死に関する実験が行われていた。

研究所に在席しているのは、S博士とその助手の男だけ。

小さな研究所ではあったが、博士の優れた才能により、不老不死の研究は着実に進んでいた。

「これより本日の実験を開始します」

「うむ、始めてくれたまえ」

研究所の実験施設にて、2811回目の実験が行われた。ニワトリに薬を投与することで、作成した薬に効果があるか確かめるのだ。

助手が注射器を手に取り、ニワトリに薬を注入する。それから助手は死なないことを確かめるため、ニワトリを高熱の油に投入した!

油の中でニワトリが暴れ狂う。しかし十秒も経つと、ニワトリは静かになってしまった。

「これは……失敗のようだね」

「フライドチキンがまたひとつできてしまいました……」

こうして実験は失敗。油でカラッと揚げられたニワトリは、二人の夕食になった。

博士と助手の実験はその後も行われた。しかし不老不死を実現させるのは難しい。

首を切っても死なないニワトリができたこともあったが、老化が早くてヨボヨボになって動けなくなってしまった。

逆にまったく老いないニワトリを生み出したこともあったが、こちらは心臓がもろくて、スマホの着信音を聞いただけで、心臓マヒを起こして死んでしまった。

「なかなか上手くいきませんね」

「まあ、そういうものだよ」

博士と助手は諦めずに実験を続けた。

その日、二人はいつものようにフライドチキンをおかずに夕飯を食べていた。

「ところで、君はなぜ私の実験に付き合ってくれているのかね?」

「そりゃ、ボクが助手だからですよ」

「そういう話じゃない。不老不死の研究なんて、まともな人間なら『バカバカしい』と見向きもしないはずだ。

私は知的好奇心を満たすために実験を続けている。君は何が目的で不老不死の実験をしているんだ?」

「これはちゃんと話さないといけないようですね。……実はボクには、病にかかっている恋人がいるんです」

「ほう」

それから助手は、恋人を救いたいこと。そのために博士のウワサを聞いて、研究所にやってきたことを告げた。

「なるほど、全ては大切な恋人のためか」

「聞いてガッカリしました?」

「そんなことはない。むしろやる気が出たよ。実験が成功したら、君の彼女を不老不死にして必ず救ってみせよう」

「ありがとうございます!」

それから、二人はますます研究に没頭していった。

ところがある日、出勤の時間になっても助手がやってこないことがあった。

あのマジメな助手が遅刻をするなんてタダゴトではない。

博士は心配しながら、助手がやってくるのを待った。

「……すみません。遅れました」

「どうした、なにかあったのかね」

「実は……」

それから助手が語った言葉に、博士は驚きを隠せなかった。

「えっ、余命3ヶ月!?」

「はい、彼女のご両親が医者から告げられたと……」

そう口にする助手の体は震えていた。

助手は不老不死の研究をするくらい、恋人のことを大事にしている。

そんな助手と恋人のことを放ってはおけない、そう博士は覚悟を決めた。

「わかった。君の恋人を救うため、不老不死の薬を3ヶ月以内に必ず作ってみせよう」

「本当ですか!?」

「もちろんだとも。私はやってみせる!」

博士の頼もしい言葉に、助手は泣いて喜んだ。

それから博士は助手とともに、さらに不老不死の研究に打ち込んだ。

眠る時間も削り、ひたすら研究と実験をくり返す。

そして3ヶ月まであと少しという日の朝。

「やった! 実験は成功だ!」

そう、博士は助手との約束どおり、本当に不老不死の薬を完成させたのだ。

後は助手に薬を手渡し、恋人に飲ませるだけ。

いつもの出勤時間。この日も助手は遅刻せず研究所に現れた。

博士は助手にコーヒーを勧めながら、完成した成果を報告する。

「よく来てくれた! 約束どおり、不老不死の薬が完成したぞ!」

「本当ですか! 実はボクも伝えたいことがあって」

「ほう、それはなにかね?」

「ボクも考えた末に、不老不死になる現実的な方法を見つけたんです」

「現実的な不老不死か、それは興味深い。ぜひ教えてくれ」

「わかりました。答えは簡単です」

「えっ」

そうつぶやき、博士はその場に倒れた。なぜなら助手に刃物で腹部を刺されたからだ。

博士の腹から血があふれだし、研究所の床を赤く染める。

そんな博士の様子を見て、助手はポツリとつぶやいた。

「一度死んでしまえば、もう老いることもないし、二度死ぬこともない。これほど現実的な不老不死の方法はないでしょう」

そう口にするなり、助手が自らの首に刃物を突き刺し、バタリと倒れる。

倒れた助手のポケットから飛び出した携帯電話には、こんなメールが表示されていた。

『いつも娘の見舞いに来てくれてありがとう。……先ほど、娘が息を引き取った』

ところが、話はこれで終わらなかった。

「なんで首を切ったのに死ねないんだ!?」

「さっきのコーヒーに入ってたからのう――不老不死の薬。私もこのとおりピンピンしておる」

「そんな! 彼女がいなくなったこの世界で永遠に死ねないなんて……ここは最悪の地獄だ……!」

(了)

 

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星夜 行(ほしや こう)というペンネームで書いてます。

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