海外ミステリー小説

刑事オリヴァー&ピアシリーズ7『生者と死者に告ぐ』- 不条理な裁きによる連続殺人事件

クリスマスを前に華やぐ街で、老婦人が突然頭を撃ち抜かれ死亡した。

翌日には別の女性が頭部を撃たれ、その数日後には音楽教師をしている男性が心臓を撃たれた。

一連の事件が同様の手口であることから、警察は凄腕の狙撃手による単独での犯行と断定。

しかし被害者はいずれも善良な人々で、誰かに恨まれている様子はなく、犯人の動機が全くわからない。

そんな中「仕置き人」と名乗る人物から犯行声明文が届き、被害者たちに重大な共通点があったことが判明する。

さらには、脳死や臓器移植も関係していることが分かってきて―。

繰り返される「処刑」に、刑事オリヴァーとピアはどう挑むのか?

ますます目が離せない、戦慄のミステリーシリーズ第七弾!

非のない人々が制裁を受ける

やってきました、「刑事オリヴァー&ピアシリーズ」の7作目!

今回も序盤からショッキングな事件や不可解な問題が起こり続け、スピード感のある展開が読み手をグイグイ引き込んでくれます。

まずは街で散歩中の老婦人が、いきなり頭部を撃たれ死亡します。

頭の右半分が飛び散っていて、調べるとどうやらライフルと大口径の拡張弾とが使われており、しかも約80メートルの距離から狙いすましていたことがわかりました。

その翌日には、自宅のキッチンで料理中の女性が、あろうことか家族の目の前で頭を吹き飛ばされます。

続いて心臓を患っている若い男性教師が、今度は胸を撃ち抜かれて死亡します。

このように非常にショッキングな幕開けですが、さらに驚愕なのが、犯人から届いた死亡告知です。

それによると、

「(被害者は)家族が許されざることをしたために、死ななければならなかった」

とのこと。

つまりこの一連の事件は、被害者たちに何か非があったわけではなく、問題があったのはその家族だったということです。

犯人は「仕置き人」を気取って、わざわざ衝撃的なシチュエーションを選んで、きわめて独善的な制裁をしていたわけです。

なんたる不条理、なんたる理不尽…。

もうこの段階で、読者は心も脳も鷲掴みにされているのではないでしょうか。

犯人の正体はもちろんですが、なぜそこまで残忍な制裁を行う必要があったのか、その事情も気になって気になって、時間を忘れて読みふけってしまいます!

隠されていた陰謀に驚愕

もちろん刑事オリヴァーとピアも、この猟奇的な殺人事件が気になって仕方がなく、プライベートの大事な用事をキャンセルしてまで取り組みます。

まずは被害者の家族や関係者を調べたところ、怪しそうな人物が出るわ出るわ!

10年前に被害者に臓器移植手術を行った医師、臓器提供者の夫や息子や娘、遺族サポート団体の会長などなど、犯行動機を持っていそうな人物が次から次へと出てくるのです。

しかし彼らにはアリバイがあったり、既に亡くなっていたり、逮捕してもハズレだったりで、なかなか核心を突くことができません。

それを嘲笑うかのように、犯人は「処刑」という名の殺人を繰り返していきます。

しかし中盤を越えると、事態は急転直下!

ある施設に、世界を揺るがすような陰謀や野望、そして非情な犯罪行為があったことが明らかになるのです。

目を覆いたくなるほど非道な陰謀で「こんなことが本当にあっていいのか?」と、驚きとともに怒りが湧いてきます。

実際に犯人はこれが許せなくて、制裁という名の連続殺人を犯したのでした。

そしてラストに犯人がある選択をするのですが、ここはぜひご自身で読んでください。

愛情と悲しみに満ちた決断ですし、オリヴァーに宛てた手紙まで見つかって、読んでいて胸が抉られるようでした。

ここを読むことで、あれだけ残忍な犯行に及んだ犯人の印象も、ガラリと変わったくらいです。

改めて、著者のネレ・ノイハウスさんの筆力の高さに脱帽です!

新たな恋のスタートと決着

「刑事オリヴァー&ピアシリーズ」も今作『生者と死者に告ぐ』で7作目となり、テーマは「臓器移植」と、ますますもって深みと重み、凄みを増してきました。

さらにページ数は600以上、登場人物も巻頭で紹介されているだけでも40人以上と、こちらもますますボリュームアップしており、読み応えたっぷりの一冊となっています。

ただ今回は、比較的早い段階で犯人の動機と人物像とが明るみになるので、そういう意味では数々のミスリードで読者を惑わせていた前作までとは一線を画しています。

その分人物の心理描写が丁寧で、特に犯人の気持ちは痛いほど伝わってきて、犯人をここまで追い込んだ真の黒幕には、読みながら真剣に憤ってしまったくらいです。

またこのシリーズでおなじみの主人公2人のプライベートパートも充実していて、ドキドキハラハラさせてくれました。

まずオリヴァーは、妻のコージマとの離婚後に新しい恋が始まったのですが、ちょっとギクシャクしている上に、また別の恋まで始めそうな予感です。

節操のなさは相変わらずですが、ポンコツなところはすっかり鳴りを潜めて、凛々しい活躍を見せてくれます。

ピアは、2作目で出会ったクリストフと長く交際していましたが、今作の冒頭でようやくゴールイン!

ところがハネムーンに行く日の朝、今回の事件でオリヴァーに呼び出され、旅行はあえなくキャンセル。

気の毒ですが、ピアの冴えと行動力がなければ事件の解決は難しかったですし、エピローグでハッピーな展開になるので、結果オーライでしょう!

さらに今作ではピアの妹が登場し、彼女も恋をするのですが、お相手が意外も意外、以前から登場していた「あの人」なので、見逃せません。

意外と言えば、前作で大問題となった人物も再登場し、ついに決着がつきます!

前作を読んだ方は心底スッキリできますので、そういう意味でも今作『生者と死者に告ぐ』は、お見逃しなく!

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