澤村伊智(さわむらいち)さんの『ししりばの家』が発売しました!
澤村伊智さんはこれまで『ぼぎわんが、来る』『ずうのめ人形』『恐怖小説 キリカ』と書かれているのですが、本当にどれも面白くていま大注目のホラー作家さんなんです。
そして今作『ししりばの家』は、そんな澤村さんが贈る「幽霊屋敷小説」。つまり「家」を舞台にしたホラー小説というわけで。
個人的にも家を舞台にしたホラー小説はとても好みでこれまでたくさん読んできましたが、結論から言いまして『ししりばの家』はかなり上位に入る面白さでした。
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澤村伊智『ししりばの家』
ある日、笹倉果歩(ささくらかほ)は街中で、幼馴染みの岩平敏明(いわくらとしあき)と出会う。実に十三年ぶりの再開です。
敏明もすでに結婚しているらしく、話の流れで今度敏明の家にお邪魔することになりました。
一週間後、敏明に連れられて家へと案内された果歩は、家に入るなりすぐに奇妙な事に気がつきます。
わたしはハッとした。床を見渡すとあちこちに足跡が見えた。擦ったような筋も、床と壁の境に茶色いものが溜まっているのも。
砂だった。
真新しい家の真新しいリビングの床に、うっすらと砂が積もっていた。
P.28より
そう。案内された敏明の家には、いたるところに砂が積もっていたのです。
しかも、敏明も妻の梓さんも全く気にしている様子がない。
これは一体どういうことなのか。なぜ家の中に砂が積もっているのか。なぜ二人は気にしていないのか。見えていないのか。おかしいのはわたしの方なのか。
戸惑う果歩ですが、後日、妻の梓さんからある相談を受けます。
なんとこの家には、敏明が以前交際していた〈生霊〉が取り憑いているとーー。
というようにですね、久しぶりに再開した幼馴染みの家に行ったら家の中に砂が積もっていて、しかも生霊までいましたっていうあらすじなんですけど、そんな簡単な話じゃあないんですよ。
言ってしまいますと、その後すぐに敏明が問題の女性の元に謝りに行って、生霊の問題は解決されます。
問題はそのあとです。
これはまだ第一章。ここからが本番なのです。
生霊の問題が解決したあとの梓さんのあの一言にはゾクッとしましたねえ……。
圧倒的、砂!
幽霊屋敷小説といえばシャーリージャクスンの『丘の屋敷 (創元推理文庫)』、スティーヴン・キングの『シャイニング(文春文庫)』、小野不由美さんの『残穢 (新潮文庫)』や三津田信三さんの『どこの家にも怖いものはいる (中公文庫)』など名作が多い中、澤村伊智さんの『ししりばの家』はそれらのどれとも違う気持ちの悪さでした。
とにかく「砂」です。「砂」ですよ。「砂」「砂」「砂」。
この「砂ならではの気持ちの悪さ」の描写が本当にお上手で、幽霊の怖さとはまた異なる「イヤな感じ」を増幅させているんです。ああイヤだ。
頭の中を砂がザリザリする感覚ってわかります?もう考えただけでもいやじゃないですか。でもそんな嫌な表現ばかり出てくるんです。
砂が口に入った時のジャリジャリした感じとか、運動場で強い風が吹いて大量の砂埃を全身に浴びてしまうような、そんな不快感を味わえる小説です 笑。
改めて「砂ってイヤだな」って強烈に思いましたね……。
ホラー小説がお好きなら読むべし。
ひとことで感想を言うなら「やっぱり澤村伊智さんはホラー小説を書くのがお上手だなあ」です。間違いないです。
澤村さんの作品は怖いのはもちろんなんですけど、構成とかストーリー展開とか純粋に「うまい!」って思えるんですよね。怖いだけでなく「読ませる」ホラーなんですよ。帯にも書いてありますが、まさに「ノンストップ・ホラー」。
わたくし、ホラー作家といえば三津田信三さんの作品が大好きなのですが、澤村伊智さんの作品も同じくらい好みということが判明いたしました。
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特に今回の『ししりばの家』は幽霊屋敷が舞台ということもあって、先日ご紹介させていただいた三津田信三さんの『どこの家にも怖いものはいる (中公文庫)』を彷彿とさせます。
参考文献の欄にも『どこの家にも怖いものはいる』が載っていたので、おそらく意識して書かれたのでしょう。
いやしかし、幽霊屋敷という点では同じですが、似ているようで「全く違う気持ち悪さ」なのがポイント。
三津田信三さんの作品をお好きでしたら、ぜひ澤村伊智さんの作品も読んでみてください。きっと気に入っていただけるはずです。
コメント
コメント一覧 (2件)
ホラーは貴志さんの黒い家読んでからちょっと苦手になりました。トラウマです。3周くらいしか読んでません。というか砂って。小さい頃結構な量の砂飲んじゃった自分にたえられる本ですか?
『黒い家』を読んじゃったらトラウマになっちゃいますよね笑。貴志さんの描く人間の狂気は凄まじいですもんね。。
って、3周って。さまーさん。そりゃ完全に魅了されてますよ。
うわああ。砂飲むってやめてください!想像しちゃったじゃないですか!いや、でもそんな気分になる作品です。気をつけてください。保証はできません笑。