今まで
という「THE どんでん返しシリーズ」があって、今回その第三弾なわけなんですが、これ、一番面白いかもしれないです。
第一弾『自薦 THE どんでん返し』では、綾辻行人さん、有栖川有栖さん、西澤保彦さん、貫井徳郎さん、法月綸太郎さん、東川篤哉さん、
第二弾『『自薦 THE どんでん返し2』』では、乾くるみさん、大崎梢さん、加納朋子さん、近藤史恵さん、坂木司さん、若竹七海さん、
という豪華っぷりでした。
そして今回の『新鮮 THE どんでん返し』は、
青柳 碧人さん
天祢 涼さん
大山 誠一郎さん
岡崎 琢磨さん
似鳥 鶏
水生 大海さん
という新鋭作家さんたちの、新たな短編が収められた豪華アンソロジーとなっております。
これは読むしかない……!
1.青柳 碧人『密室竜宮城』
『浜村渚の計算ノート (講談社文庫)』シリーズでおなじみの青柳さん。
今回は童話「浦島太郎」をミステリ仕立てにした作品。もうこの発想だけで面白いんですが、ミステリとしても見事でした。
序盤は本家とほとんど同じで、浜辺でいじめられている亀を助けた浦島太郎が、竜宮城へと案内される展開。
しかし、竜宮城で楽しんでいた浦島太郎は、そこで密室殺人に出くわしてしまう。
竜宮城という特殊な舞台ならではのミステリーであり、思わず「うまい!」と唸ってしまう出来。みんな大好きな「見取り図」もあり。
トリックそのものももちろん、真相の明かし方が特に好きですね。なんとも言えぬ読後感が残ります。
2.天祢 涼『居場所』
SNSで知り合った女子高生に金をゆすられ、犯行に及んでしまった八木は懲役8年を言い渡された。
出所したものの、前科がばれて職場を失ってしまう。
そんな八木はいつも駅前で、マナという女子高生を遠くから眺めていた。
が、ある日。前科持ちという弱みを握った若者が、八木にある誘いを持ちかけてくる。
天祢涼さんは良い意味で、こういう心をえぐってくる作品を書くのがうまいなあ。
これをキッカケにぜひ『希望が死んだ夜に』を読んでいただきたい。
3.大山 誠一郎『事件をめぐる三つの対話』
北区西ヶ原の路上で発見された死体。
犯行現場は自宅らしいことが判明するが、なぜ死体をわざわざここに移動させたのか?という動機がわからない。
小野寺係長と、部下の水原はこの事件にある仮説をたて始めるが……。
何が面白いかって、この作品が全て「会話文のみ」で構成されているところです。
情景描写も説明文など一切なく、登場人物の会話のみで事件が理解できるようになっている。それでいて、最後には「そういうことだったのか!」と唸らせてくれる。
大山誠一郎さんのテクニックの凄さがよくわかる一編です。
4.岡崎 琢磨『夜半のちぎり』
新婚旅行でシンガポールに行ったカップル。
すると偶然にも、同僚のカップルもシンガポールに旅行に来ていて、ばったり出くわす。
奇妙な偶然により、行動を共にすることになった二組のカップル。
だが、主人公の妻である茜が死体となって発見され……。
っていう、男女のいざこざを描いたミステリ。
最初は、こういう男女のドロドロしたミステリってそんな好みじゃないだよなあ、なんて思ってました。
しかしどうでしょう。
最高の後味です。
最後の一文でゾクゾクゾクゾク!!ってします。たまらん。
あの海外名作短編を思い出しました。
5.似鳥 鶏『筋肉事件/四人目の』
似鳥鶏さんはもともと好きな作家さんなのですが、今回の短編でもっと好きになった。
これですよ、こういう遊び心ある仕掛けをやってくれるのが似鳥さんなんですよ。
車に轢かれた猫のように横向きで倒れている旦那様の頭の横には、筋肉もりもりで逆三角形の男がポーズを決めている像が、なぜか倒れずに立っている。
P.175より
っていう出だしからユーモアのあるミステリなんですが、最後まで読むと余計に面白いですね。ミステリとしても、小説としても。
あらすじはあまり言えません。
6.水生 大海『使い勝手のいい女』
二十八歳、恋人なし、会社が倒産したためホームセンターでアルバイトをしている長尾葉月。きついシフトを組まれても断れず、店長からも融通のきく女だと思われている。
ある日。古いアパートに住んでいる葉月の元に、かつて交際していた男が金を借りにやってきた。
やっぱり私は使い勝手のいい女だと思われている。嫌気がさした葉月は、手に取ったそれを男へと振り下ろす。
妙にリアリティがあって、思わずイライラさせられてしまう人物描写がお上手。
物語も「そういうことか!」という展開が待っていて楽しませてくれます。短編らしいキレのあるオチですね。こういうの好きです。
どんでん返しを意識しすぎないで!

どれも面白いのでベスト3を決めるのは難しいけれど、強いて言うなら
1.青柳碧人『密室竜宮城』
2.岡崎琢磨『夜半のちぎり』
3.似鳥鶏『筋肉事件/四人目の』
かなあ。
このシリーズいつもそうなんですけど、「めちゃくちゃ凄いどんでん返し」を期待しちゃいけないんです。
せっかく面白い短編が揃っているのに、タイトルのせいでどうしても「凄まじいどんでん返し」を意識しちゃって、「そんな驚かなかったな」っていう感想になってしまう。
これは非常にもったいない。
単純に「クオリティの高いミステリ短編集」としておすすめです。
本当にハズレなしなので。
こんにちは!「新鮮THEどんでん返し」いつか紹介されると思ってました!(*´∇`*)私も発売して即購入しました。「密室竜宮城」すごかったですよね!私もこの本の中では一番のお気に入りです。割りと若手(?)の作者さんが集まった印象を受けましたが、ユーモラスだったりエグい結末があったりととてもバラエティ豊かで楽しい一冊でした。この「どんでん返し」シリーズ、まだまだ続けて欲しいですよね。
りかさんこんばんは!
「新鮮THEどんでん返し」はやっぱり買っちゃいますよねー!バレてましたか(*´ω`)
『密室竜宮城』は本当に見事な短編でした。竜宮城ならではの密室殺人なんて魅力的すぎます!青柳碧人さんの凄さがわかりますね。
そうそう!それぞれの作家さん「らしさ」がよく出ていて、すごく贅沢な気分も味わえました。もちろんただバラエティ豊かなだけでなく、ミステリの質も高いし。
ぜひこのシリーズは今後もどんどん出していただきたいですねえ( ´∀`)
こういう若手の作家さんの作品とかアンソロジーが僕大好きなんですよ。読んでてとても楽しかったです。自分は似鳥さんのがはまりました。
どの短編もキレッキレでいいですね。読んだ後に読んでよかったと思えるミステリの短編ってなかなか出会えないから、こういう機会に読んでおくと得した気分になれるんですよねえ
私もこういうアンソロジー大好物です(´∀`*)
今回は特に面白い短編が揃っていた印象です。
似鳥さん良かったですよねー!この遊び心最高です。小説ならではの快感がありますよねえ。