スティーヴン・キング、ジョー・ヒルなど人気作家の作品を含む17編が収録されています。
いずれも飛行機や空を飛ぶことを題材としており、空を飛ぶ大きな鉄の塊が果たして本当に安全なのか?と思わず飛行機に乗るのが怖くなってしまうこと間違いなしです。
スティーヴン・キングの「乱気流エキスパート」は乱気流に飲み込まれた飛行機を救う仕事をしている男が登場します。
乱気流を予知する能力のある男の正体とは?怖いだけではないちょっと不思議なホラー小説を数々生み出してきたキング氏らしい魅力的な短編です。
その他レイ・ブラッドベリの「空飛ぶ機械」、フォー・ヒルの「解放」など、普段なかなか読むことのない人気作家の短編が読める魅力的なアンソロジーです。
『死んだら飛べる』
意外となかった飛行アンソロジー
普段何気なく乗っている飛行機をテーマにしたホラー小説が多く収録されています。
スカイダイビングなど空を飛ぶスポーツ、レクリエーションもたくさんありますが、それらは決して安全なものではない、と改めて実感させられます。
飛行機は確かに空を飛びますが、狭いところや密室、高いところが苦手な方にとっては恐怖以外の何ものでもありません。
そう考えると飛行機はホラー小説の題材としては非常に最適なものと言えるでしょう。
ジョー・ヒルの「解放」はドタバタした展開や毒舌の客室乗務員が一見ユニークですが、戦争を飛行機の中から目撃するという非常の恐ろしい内容。
E・マイクル・ルイスの「貨物」は子どもの死体を入れた棺から奇妙な音がする…というホラーの定番のようなストーリーですが、舞台が飛行機の中というだけで定番とはかなり違う怖さを感じられます。
奇妙な音の正体とは何なのか、逃げられない状況でどのように立ち向かうのかに注目です。
さらに古典ミステリーの王様とも呼べるアーサー・コナン・ドイルの作品も収録されています。
「大空の恐怖」というタイトルの今作は、飛行機が現実的な移動手段ではなかったころに書かれた作品です。
空を飛ぶということへの憧れと恐怖が詰まっており、今となってはありきたりな交通手段である飛行機がなかった時代に思いを馳せることもできました。
高所恐怖症の方にとって非常に恐ろしいのがダン・シモンズの「2分45秒」です。
飛行機が墜落するまでの2分45秒間、人々は何を考えるのだろうか…と思わず自分の立場に置き換えて考えてしまう作品です。
いずれもドキドキハラハラ、読後にはなんとも嫌な気分にさせられる良質なホラー・アンソロジーでした。
隠れた名作が多い!
アンソロジーとはさまざまな作者の作品が、あるテーマをもとに集められたもののことを指します。
アンソロジーの中には有名作家の人気作を目玉として、いくつかの名作を収録しつつあとは無名の駄作が多い…というものもありますが、今作「死んだら飛べる」は名作が多く非常に読み応えがありました。
飛行機など空を飛ぶ機械をテーマにしているという点もユニークです。
高所恐怖症ではない方でも思わず飛行機に乗るのが怖くなってしまうことでしょう。
逃げ場のない状況の中でパニックに陥ったり、未確認生物に出会ったり、後味の悪いまま終わったり…それぞれに違った後味の悪さを楽しめます。
中には古い翻訳のものもあり、海外の翻訳小説を読みなれていない、古典作品に触れたことがないという方にとってはやや抵抗を感じるかもしれません。
古い時代の小説は現代の価値観と合わないものもあるので、発表された時代を事前に確認しておく必要もありそうです。
ですが飛行機という身近な題材を取り扱っているという点で馴染みやすく、短い作品がたくさん収録されていたりと、有名作家の作品を一度読んでみたいという方にもぜひおすすめしたい一冊になっています。
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