先日2016/11/23に、下村敦史さんの『告白の余白』が発売となりました。今回はその感想やあらすじなどを。
下村敦史さんといえば『闇に香る嘘』というミステリ作品で第60回江戸川乱歩賞を受賞しデビューした作家さんで、私も『闇に香る嘘』を読んだ時から下村さんの作品は全部読んでいるんですよ。
めっちゃ面白いんで未読な方はぜひ読んでみてくださいな。
ということで、下村さんの作品は毎回安定して面白いので今回の『告白の余白』も楽しみにしてたんです。
で、発売日に早速買って読んでみたんですがね、ちょっと期待以上というか、面白いというより先にまずお見事って思っちゃう作品だったんですよね。
これはご紹介せずには入られません!(* >ω<)
下村敦史『告白の余白』
今作の主人公は、高知県の実家に暮らす北嶋英二という青年。
その実家に11月のある日、実に4年ぶりに兄の英一が帰ってきた。あまりに突然の出来事に、驚きを隠せない父と母と英二。
自由を求めて勝手に家を出て行き、いまさら何をしに戻ってきたのか?と思ったのもつかの間。
兄は突然「土地を生前贈与して欲しい」と言い出した。つまりは、いま北嶋家が持つ農地を半分俺にくれ、ということだ。
いきなり帰ってきて何を勝手なことを、とも思ったが兄の猛烈な勢いに負け、結局は父は生前贈与を認めることになった。
さて、ここからが急展開です。
兄に生前贈与が認められ早くも年が明けた頃、その兄は実家にある納家で自殺した状態で発見されます。
残された遺書には「京都に住む清水京子という女性が2月末までに現れたら、俺の農地を譲渡してほしい」という内容が書かれていました。
そこで不信感が募りに募った弟・英二は、清水京子という女性を探るために京都へと向かうことになります。
家を出た兄が実家の農地の生前贈与を求めて突然帰ってきた。しかし、「2月末までに清水京子という女性が来たら土地を譲渡してほしい」という遺書を記し自殺。兄はなぜ死んだのか。
謎が謎を呼びさらに謎を呼ぶ!
というように今作は「京都を舞台に巻き起こる、兄の自殺の真相を探るミステリー作品」ということになりますが、もうこの時点で謎でお腹いっぱいなわけです。
まず、
①兄はなぜいきなり帰ってきて生前贈与を要求したのか。
②そしてなぜ、生前贈与が認められた後すぐに自殺をしたのか。
③兄が土地を譲ろうとしている清水京子とは何者なのか。
④土地を譲りたいのならなぜ2月末までという期限付きなのか。
という謎が浮かび上がってきますよね。
もし清水京子にお金をあげることが目的ならば、兄はすぐに土地を売って現金を直接あげればいいわけですよね。自殺する意味もわからない。
兄の行動や遺書が全て意味不明なのです。
こうなってしまったらもう手遅れ。真実を知りたくて居ても立っても居られません。
ここまでわずか数十ページ。
物語のほんの序盤で作品の世界へと引きずり込まれてしまう私なのでした。
しかも物語が進むにつれてさらに魅力的な謎が増えてくる・・・。まいっちゃいますね(゚ノ∀`゚)
あれも伏線、これも伏線。
また今作の面白ポイントは、弟・英二が特殊な状況にあるということが挙げられますね。
ズバリ、英二は兄の英一と一卵性双生児の兄弟であり、京都ではとある事情で兄・英一になりすまして捜査を行っていく、ということです。
この設定によって物語に常に一定のスリルが加わるんですよ。ドキドキです。
そして今作最大の見所なのが、「物語の中で行われる会話のほぼ全てが伏線」だというところです。
これが本当に見事なんですよ。
あの時のあの会話が実はこういう意味だったのか!の嵐。
終盤でありとあらゆる会話の伏線が回収されていく怒涛のラッシュは「面白い」を通り越して「凄いな」という感心に変わってしまいましたよね。
これはぜひ目にして欲しいところです。
しかも最後の最後まで二転三転する展開を見せてくれるので読後の満足感も高いままっていうのが素晴らしいです。
ラスト数ページまでしっかり「うおおお!」と言わせてくれるんですよ。ほんとこういうの好き((´∀`*))
今回はここまで!
まあ他にも今作の魅力はたくさんあるのですが、最後に言っておきたいのは京都という特殊な場所だからこそのミステリーだということでしょうね。
これがどういう意味かは読んでいただければわかるはずです。フフフ。
京都という土地とミステリの華麗なマッチング。
下村敦史さんによる見事な構成と捻りが魅せるストーリー。
個人的にも間違いなくおすすめできる作品となっておりますので、お時間のある時にでもお手にとってみていただけたら幸いです。
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