著者の上遠野浩平(かどの こうへい)さんといえば『ブギーポップは笑わない』という名作ライトノベルで有名な作家さん。
今回はそんな上遠野さんの『殺竜事件』をちょっとご紹介しちゃいます。
この作品は「魔法」や「竜」が存在するファンタジーの世界を舞台にしたミステリー小説であり、ファンタジー小説としてもミステリー小説としても楽しめちゃう面白い物語なんです。
タイトルからなんとなくお分かりかと思いますが、この作品では「竜」が殺されてしまいます。
不死身のはずの竜が。
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『殺竜事件』
あらすじをすごく簡単に説明しますね。
この作品の世界では、絶対的な力を持つ「竜」が七匹存在しています。そしてロミアザルスという独立都市には、その「竜」の一匹が住んでいます。
で、ある戦いの調停がこのロミアザルスで行われることになります。
小国カッタータの大尉レーゼ・リスカッセ、七海連合の戦地調停士ED(エド)、風の騎士ヒースロゥ・クリストフの3人は、調停の前に竜に会いに行きます。
そこで彼らが目にしたのは、何者かに殺されていた「竜」。
この物語では、戦地調停士・ED(エド)を探偵役とし、この事件の謎を解いていくこととなります。
ファンタジーミステリならではの不可解すぎる謎
さて、簡単にあらすじを説明しましたが、これ、おかしいんですよ。
そもそも「竜」がそう簡単に殺されるわけがないんです。
この世界では、「竜」は人間などをはるかに凌駕する力を持っているんです。「桁外れ」で「圧倒的」なんです。ほとんど「神」と呼んでも良いくらいの存在でしょう。
そんな無敵であるはずの竜が、殺されたのです。
つまり第一の謎は、「最強生物である竜をどうやって殺したのか」ということです。つまり〈ハウダニット〉です。
ミステリー小説には数多くの〈ハウダニット〉が存在しますが、このタイプの「どうやって殺したか?」にはなかなか出逢うことができません。
続く第二の謎は、「なぜ犯人は竜を殺す必要があったのか」ということ。つまり動機です。
「竜」を殺せるということは、犯人は竜を超える力を持っていると想定されます。そんな者が存在するのか。そしてそんな力を持つ者が竜を殺す目的とはなんなのでしょうか。
しかも残る六匹の竜を敵に回す危険性だってあります。なぜ、そこまでして、この竜だけを。
そしてもちろん「犯人は誰なのか」という謎もありますね。これで、〈ハウダニット〉〈ホワイダニット〉〈フーダニット〉の3つが揃ったことになります。
しかもこれらはファンタジーの世界だからこそ生まれる「謎」です。非常に魅力的ではないですかあ!
冒険ファンタジーとしても楽しめる!
序盤で竜が殺されてすぐに、ED(エド)たち3人は容疑者をめぐる旅に出かけます。
犯人の手がかりと目的を探るためにいろいろな場所を尋ねるのですが、これが普通にファンタジー小説として面白いんですよ。
むしろこっちがメインなんじゃないかってくらいに。ファンタジーの世界を旅する3人の個性もしっかり立っているし、行く場所全てに魅力があるんです(第4章の「海賊の都」の水上都市とか特に好き)。
もしかしたら竜が殺された事件というのは、壮大なファンタジー世界での旅を描くためのただのキッカケに過ぎなかったのかもしれません。
とはいえ、どうやって最強の竜を殺したのか、という謎は魅力的ですよね。その目的も、犯人も。
もちろん最後にすべての謎が明かされますが、やはりファンタジーならではでしたね。
ファンタジーミステリといえば
ところで、ファンタジーとミステリに融合を見事に果たした作品といえば、米澤穂信さんの『折れた竜骨 上 (創元推理文庫)』が有名があります。有名な作品ですので、読まれた方も多いことでしょう。
やはり本格ミステリ度でいうと『折れた竜骨』の方が高めですが、キャラ設定や世界観の良さでは『殺竜事件』も負けいてはいません。
『折れた竜骨』は「ミステリ」をメインとして描かれ、『殺竜事件』は「旅」をメインに描かれているので、そもそも比べるものではないのでしょう。
なにが言いたいのかというと、それぞれの良さがあるのでどちらも読んでいただきたいなー!ってことですよね 笑。両方とも面白いってことには変わりないですし。
どうぞ、参考にしていただければ幸いです(*´∀`*)ノ

コメント
コメント一覧 (2件)
初めまして、こちらのサイトで「折れた竜骨」に出会い、そして「殺竜事件」に出会いました。
どちらも素晴らしく、自分のいる世界とは違う世界でその中に浸り、冒険し、登場人物に感情移入し、謎に悩み結末に心動かされるという至福の時を過ごせました。紹介して下さって本当にありがとうございました!!
これからもファンタジー&ミステリーな作品の紹介をお願いいたします!
あまよりさん初めまして!
「折れた竜骨」、「殺竜事件」どちらもファンタジーとミステリーの融合が見事ですよね。
両方のジャンルの面白さが味わえるって本当に贅沢だと思います。
いえいえ、あまよりさんのお気に召していただけたようで大変嬉しいです!こちらこそ、ブログを見ていただいてありがとうございます!(*´∀`*)