短編集

宇佐美まこと『るんびにの子供』-非日常の扉を丁寧に開いた作者の手腕が素晴らしい作品集

宇佐美まこと先生は、本書の中の短編で表題作にもなっている『るんびにの子供』で『幽』怪談文学賞短編部門大賞を受賞し、デビューを果たしました。

そして、待望の書籍化をしたところ、大反響となったのです!

怪談ともホラーとも呼ぶのが相応しい個性豊かで色とりどりにも思える短編集は、ほとんどSF要素や妖怪のような類は登場しません。

また派手に戦う描写などもありません。

ですが、丁寧な文章力と場面構成、短い文章や少ない登場人物の中で出来る限りの恐怖を体験できる素晴らしい作品たちの詰め合わせとなっています。

そんな『るんびにの子供』のあらすじや口コミをしっかりとご紹介いたします。

宇佐美まこと『るんびにの子供』のあらすじ

この作品は短編集となっています。

それぞれのタイトルは下記の通りです。

・るんびにの子供
・石榴の家
・手袋
・キリコ
・とびだす絵本
・獺祭
・狼魄(※角川ホラー文庫版のみ・書き下ろし)

この中のうちのいくつかの作品のあらすじを簡単にご紹介いたします。

るんびにの子供

表題作。

主人公である仁美は、40年ほど前にお寺の隣に併設されていた〈るんびに幼稚園〉という幼稚園に通っていた。

そんなある年の春の遠足のこと。仁美は小高い丘陵地へ歩いて行った。丘の向こう側には小さな池があり、ホテイアオイ(水草の一種)に覆いつくされていた。

そんな池で仁美は、驚くべきものを目の当たりにしてしまう。しかし仁美はそれを見ても怖いと思わず・・・。

そして、現代になり大人になった仁美は浮気性の旦那と鬼姑の生活を送っていたのだが・・・。

子供の頃の経験が、まさかの最後に繋がるホラー作品。和物の恐ろしさを是非。

石榴の家

直也は、怜奈のアパートに身を置いているいわゆる「ヒモ男」だったのだが、ひと月前にとうとう彼女の父親に追い出されてしまう。

そして、さらには10日ほど前に窃盗を働いてしまったために逃走していた。

直也は持っている所持金で買えるだけの一番遠い距離の切符を買い、電車に飛び乗り、そして、見知らぬ駅に降り立った。

そこで、直也はとある家に迷い込んだのだが、そこが恐怖の始まりだった・・・。

恐怖の館から出てきたのはいったいどんなものだったのか。

普通の生活から垣間見えるゾクゾクをお愉しみください。

手袋

史子はとある英会話塾の事務職員をしている。正直負け組の人生を歩んでいる。

ある日の夕暮れ時、史子は日課となっている飼い犬の散歩をしていた。しかしその途中で、おしゃれでどう見ても値が張りそうな黒い手袋を拾った。

そしてその後家に帰ると、史子の妹である沙紀が来ていた。なぜ史子が負け組かというと、この沙紀は結婚して子供がいるのに、史子はド派手なジャンバーを着て犬を散歩。

そして史子は「近所で失踪事件が起きたらしいよ」とわくわくしながら話す沙紀に嫌悪感すら覚える。

しかし、史子が拾った手袋から、事件は思わぬ方向に転がっていき・・・。

まるで正反対の姉妹が手袋というキーワードで事件に巻き込まれていきますが、その様子が日常から非日常にすんなり変わっていく様子にすばらしさを覚えます。

キリコ

とある日の午後2時半ごろ。

祥三郎の妻であるユイと、祥三郎の妹であるカナはマクドナルドに来ていた。ユイはチーズバーガーを食べ、カナのトレーにはアイスカフェオレのカップのみ。

そんな中、一通りの近況報告が済むと、祥三郎とカナの兄である修二郎の家庭・・・主に妻であるキリコについての話題に移っていく。

そんなキリコは実に不気味な女なのだが、この物語の全貌が明らかになったとき、別の視点から見ると・・・。

宇佐美先生の文章力が光るぞくっとするストーリー展開です。

後を引く幕引きには脱帽ですし、だからこそ怖さをしっかりと感じることが出来るのだと納得できる作品です。

飛び出す絵本

主人公の隆幸は、賃貸しマンションを引き払って、幼少期預けられていた家に引っ越してきた。

戻ってくるにあたって、従兄弟である准一から、書庫の中の本たちを整理するように依頼された。隆幸は、准一や一緒にいた幼馴染の由香里と過ごした昔の記憶を思い出す。

小さいころの記憶はところどころ曖昧なのだが、その中に楽しかった思い出とどこか脚色された耽美な気持ちが交差し、夢か現実かわからない不思議な感覚に陥る・・・。

唯一ホラー要素がほぼない作品です。

子供の頃の記憶と現在の隆幸の気持ちがないまぜになり、ふわふわとした絵本を漂いながらどこか大人のリアルを感じる不思議な物語です。

宇佐美まこと『るんびにの子供』の口コミ【読者の感想】

それでは実際にこの本を読んだ方の感想や口コミをご紹介いたします。

 

『どの作品も甲乙つけがたかったです。
私はキリコの幕切れが一番ぞくぞくしました。しっかり書き切らないラストだからこそ、想像力も駆り立てられますし、怖さがやばかったです。
どのお話しも不思議な幕切れがクセになりました』

 

『日常系のストーリーかと思いきや、あっという間に恐怖や不思議の世界に引きずり込まれ、とても言い表せない気持ちになります。 面白さがやばかったです。しばらく呆けたような感じになりました。読んだ後の余韻が素晴らしかったです』

 

『あまり国語が得意ではないのですが、文章がわかりやすく、本が苦手な人でも読み進めやすいかなと感じました。
短編集なので何かの合間に読めますし、短い話の間にしっかりと作りこまれているのが素晴らしかったです』

どの方も宇佐美先生の独特な世界に浸ってしまったというのがよくわかりますね。

短い話のなかの起承転結が本当に見事で、引き込まれていきなかなか抜け出せない作品で、どれもはずれがありません!

ただの日常の話のはずが、見方を変えると・・・

宇佐美先生の作品の面白さは、視点を変えるコツの素晴らしさにあると思います。

例えばキリコはマクドナルドでちょっと何かつまんで話しているだけ、と言えばそれまでなのです。

しかし、視点を変え、見方を変え、話の中身をしっかりと考えるだけで・・・腰の内側から首に突き上げてくるようなゾクゾクを感じられます。

このように、宇佐美先生は日常を非日常に仕上げてしまう超スペシャリストで、話術師でもあるのです。

宇佐美先生は作家以外にもごく一般的な主婦としての生活などもされており、様々な顔を持っています。だからこそ、細やかな部分や非日常の見逃しがちな扉をたたいて開く能力に長けているのでしょう。

某有名魔法学校の話のように、私たちが気づいていないだけで、物語の題材はそのあたりにたくさんピースとして転がっています。

それを丁寧に両手で大事にすくい上げる能力がある宇佐美先生の作品には、魅力がたっぷりです。

そしてその魅力に私たちはどっぷりと浸り、余韻を楽しみ、ゾクゾクとしながらなんとなく脱力感と達成感を味わえるのです。

是非本書を読んでその魅力に浸ってみてください。

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