『ロボット・イン・ザ・ガーデン』-愛おしい!こんなに可愛いロボットが他に存在するだろうか

 

AIの開発が進み、家庭でもアンドロイドが使われるようになった近未来。

イギリスに住むベンは妻のエイミーとともに、死んだ両親が残してくれた家で生活をしていた。

ベンは獣医師を目指していたが、両親が亡くなったことで家に引きこもるようになり、弁護士としてキャリアを積むエイミーとは上手くいかない日々を過ごしていた。

 

ある日、そんな二人の家の庭に「タング」と名乗るロボットが迷い込んでくる。

タングはアンドロイドには見えない古いロボットの形をしていました。

ベンは壊れかけているタングを治すために旅に出ます。

イギリスを飛び出し、アメリカ、日本と様々な国を回る間に徐々に変化していくベンとタング。

アンドロイドとの関係を道中考え、今までの人生を見つめるベンはついにタングを治せる人と出会う。

成長しイギリスに戻ったベンを待っていたのは、今までとは違う日々だった。

 

タングが可愛すぎて悶絶

AIとロボットを中心に人との関係が描かれるのかと思いきや、何時の時代も変わらない人間関係のお話です。

アンドロイドが使われ始めた近未来を舞台に、私達にとっても身近な仕事・結婚・出産について描かれています。

文庫で400Pを超えるのですが、読みやすい文章なのであっという間に読み進めることができます。さすが小学館文庫。翻訳モノの癖もほとんどありません。

特に全編通して描かれているダメ男「ベン」と壊れかけのロボット「タング」のやり取りが面白い!そして可愛い。可愛すぎるぜタングよ。

最初の方では仕事なし、家庭にも興味なし、変化する気もないという典型的なダメ男のベンが、タングが来たことにより一念発起して世界を旅します。

それを象徴しているのが最初の方のこの一文です。

「言い争う必要なんてそもそもないじゃないか。僕は働く必要はない。君だって知ってるはずだ」

(P17)

これ以上ないほど変化する必要を感じていない言葉ですよね。

そんな彼が旅で次々に起こるトラブルで徐々に変化していきます。

トラブルを乗り越えていくベンとタングの二人組がちぐはぐで刺激的。まるで二人の旅を見守っているような気分になれます。

ベンが非常に身近な主人公として描かれているので、彼を通して自分の生活を見直すきっかけにもなりそうです。

最終的に成長したベンを象徴しているの一文はこれ。

「新しく始めるということは、古いものを手放すということだ。」

(P365)

前半であんなに変化を嫌がっていた彼の言葉とはとても思えません。

タングを直したいという想いだけでの旅が、タングの秘密に繋がり、最終的には家族の話につながるところに、作者さんの力量を感じます。

ロボットとの旅と聞くと、子供向けのように思えてしまうかもしれませんが、これは絶対大人に読んでもらいたい一冊です。

率直な感想

文章量は多いけれど、スラスラと読み進めることができる一冊でした。

翻訳モノがそこまで得意ではない私でも違和感なく読めたので、翻訳モノをに苦手意識を持っている方にもぜひ読んでいただきたいですね

本作では2部構成風になっています。

1部ではタングを治すための旅行が丁寧に描かれ、様々なトラブルに対応するベンの成長がメインのお話です。

2部は成長したベンがイギリスに戻ってからのお話で、家族について描かれています。

大人と子供の一番の違いは何かと言われれば、いろんな物事を多方面から考えられることだと思うのですが、実行するのは難しいものでもあります。

それができるようになると人間関係がどう変わるか、家族ってなんだろうと考えさせられる作品です。また世界を回る描写が非常に細やかで感心します。

日本が登場する場面もあり、日本という国が海外からどう見られているか教えられます。こういうのも洋書の面白さの一つですね!

日本、さらに言えば東京がどういう街に捉えられているか知ることができます。

イギリスからアメリカ、日本、パラオと世界を飛び回るスケールの大きさは圧巻です。

普段住んでいる日本が外国人からするとどういう街に感じられるのか興味深い表現も多かったです。

もう一度言うけどタングが可愛い。

全体を通して、人間の成長と家族について考えることができる内容になっています。

広告に描かれている「西洋のドラえもん」は、ちょっと違う気がしますが、ロボットとAIという今の時代にピッタリのテーマを上手く扱っているお話です。

学習するAIと人間の違いは今の時代でも様々な議論がなされています。

しばらくはムリだと言われていたプロ棋士にAIが勝ってしまう時代!

この本に描かれるようなアンドロイドが登場するのも遠くない未来な気がしますね。

人工知能との関わり方を考える良い機会かもしれません。

見どころにも書きましたが「ロボットとの旅」という筋書きだけで避けることはせず、多くの大人に読んでもらいたいです。

プログラミングどおり、何でもできるAIと人間の違い。

経験を積むことで人は変われるということをじっくりと教えてくれる作品になっています。

 

そして、本作『ロボット・イン・ザ・ガーデン』には続編の『ロボット・イン・ザ・ハウス』があります。

『ガーデン』でタングの虜になった方には悶絶の一冊です。

表紙絵からすでに胸がキュンキュン。

ぜひ2作続けてお手にとってみてください。

 

 

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