先日、連城三紀彦さんの短編集『小さな異邦人』が文庫化されました。
連城さんの短編集といえば『夜よ鼠たちのために』『顔のない肖像画』『戻り川心中』など名作揃い。
そして今回文庫化された『小さな異邦人』も、連城さんの作品を読む上では欠かせない作品です!
というわけで、ちょっとご紹介させていただきますね(*>∀<)ノ
連城三紀彦『小さな異邦人』とは
今作は
「指飾り」
「無人駅」
「蘭が枯れるまで」
「冬薔薇」
「風の誤算」
「白雨」
「さい涯てまで」
「小さな異邦人」
の8編からなる短編集です。
『夜よ鼠たちのために』『顔のない肖像画』などでは、その見事などんでん返しで読者を驚愕させてくれました。
しかし、今回の『小さな異邦人』はまたタイプの違った短編集です。
「え〜どんでん返しじゃないの〜(´A`)」
と思うかもしれませんが、ご安心ください。
どんでん返しではなくたって面白いのが連城さんの短編集なんです。
では、各作品のあらすじなどを簡単にご紹介させていただきます(*゚∀゚)=3
1.「指飾り」
昨日の女がまた通るかもしれない。
そんな思いで街角に佇むごく平凡なサラリーマン、相川康行、42歳。
昨日、自分の横を通り過ぎた女の後ろ姿が、離婚した礼子に非常に似ていたのだ。
いた。やっぱり礼子だ。
追いかける相川。信号で立ち止まる女。よく見てみると、女の手には結婚指輪らしきものが。
そんなはずはない。
あの礼子が、別れてもなお結婚指輪をしているなどありえない。
すると「もっと良く見て」と言わんばかりに、相川に見せつけるように目立つ場所に手を移動させる女。
まさか私の尾行に気がついている?
すると、指輪を見せつけた女はするりと薬指から指輪をはずした。
2.「無人駅」
温泉宿のある北国の駅で、奇妙な、あまりにも目立つ行動をとる謎の女。
そのため多くの人に覚えられ、その目撃証言をもとに構成された作品です。
一体なぜ女は目立つ行動をするのか?
というのが謎なのですが、明らかになったその事実には唸ります。
3.「蘭が枯れるまで」
公園でかつての同級生という女と出会った有希子。
それからお互いの夫の愚痴になり、次第に打ち解けてく二人。
すると、その女はとんでもない提案をしてきた!という、いわゆる「交換殺人」もの。
ラストで明らかになるまさかの事実には驚愕しました。
4.「冬薔薇」
奇妙な夢を見る女性の話。
とある団地に住む女性。4時40分に電話が鳴りレストランで男と待ち合わせをする。
そしてその後、ナイフでメッタ刺しにされる。
という悪夢を繰り返し見る女性。
なぜこんな夢を見るのか?そのまさかの結末は。
このラストも「そうくるか」と思わせてくれて好きですね。
5.「風の誤算」
大手電機メーカーの企画部第二課。そこに12年前に異動してきた水島課長はかつて超エリートだったのことだが今は転落。
そんな彼にはありとあらゆる「噂」が流れており、人に伝わるたびにその噂は変化し、膨大に広がっていく。
しかし、水島課長自身はそんな噂を全く気にしていない。
彼と長い間仕事をしている沢野響子は、そんな水島課長を不思議に思い始め、、、。
6.「白雨」
高校に入学してはやくも一ヶ月が経つが、いまだに友達のできない乃里子。
そんな乃里子は、医者の一人娘である大田夏美を中心としたグループにいじめを受け始める。
しかしそのいじめが実は32年前のあの事件に関係していて、、、という予測できない展開がどんどん続きます。
7.「さい涯てまで」
ある日、JRの窓口を担当する須崎の元に見知らぬ女がやってきた。
その女は山峡ホテルのある白馬駅の乗車券を二人ぶん購入、その場を去っていった。
それからしばらく時が経ち、またあの女がやってきた。今度は「磐梯山まで」と。そして手に持つパンフレット。
そこで須崎は思った。あの女の行き場所は前回も今回も、須崎の同僚である石塚康子と不倫旅行で行った場所だ。
あの女は何を知っている?
8.「小さな異邦人」
8人もの子供がいる大家族の元に一本の電話がかかってきます。
その内容は「おまえの子供を誘拐した」というもの。
しかし、その時点で家には家族全員揃っている。間違い電話でもないらしい。
一体犯人はどうやって、誰を、どうやって誘拐したというのか?
表題作というだけあってやはり傑作です。
犯人がわからないのはもちろん、誰が誘拐されたのかがわからないというのが面白いところですよね。
これぞ、大人の連城短編集

最初に言った通り、この作品はどんでん返し集というわけではありません。
ですが「予想できない展開」「意外な結末」を存分に味わうことができます。
そうくるか!
という結末ばかりの作品群ですね。
とくと味わってみてください。
また、この作品はミステリーでありながら「恋愛小説」でもあります。
収録されている8作品全てが男女の恋愛に絡めたストーリーなのです。
この恋愛とミステリの融合が本当に見事で、
妖艶で、美しくて、大人っぽくて、どこか昭和の香りがする連城さんならではの物語になっているんですね。
この作風は連城さんならではで、読めば一発で「連城さんらしいな」と感じることができます(*ノ∪`*)
おわりに
連城三紀彦さんは2013年10月に逝去されました。
今回ご紹介させていただいた『小さな異邦人』は、その最後となるオリジナル短篇集と言われています。
そういうこともあり、個人的にもとても印象深く心に残る作品なのです。
もし「面白い短篇集が読みたいな」なんて思った時には、この『小さな異邦人』を思い出していただければ幸いです。