【乱歩の10選】江戸川乱歩が選んだ海外ミステリ小説ベスト10

「乱歩の10選」とは、江戸川乱歩が選んだ「ミステリ黄金時代の最高に面白い海外推理小説ベスト10」というもの。

私も全て読みましたが、当然ながら「乱歩の10選」は間違いなく古典ミステリの名作ばかりです。

乱歩も「これらの作品を読まずして本格推理小説は語れない」と言っていますし(●´U`●)

 

ですが正直言いますと、ここで紹介させていただく作品は「当時読んだらもっと衝撃的だったんだろうな」と思える作品が多いです。

つまりは現在、日本の数あるミステリー小説をお読みになっている方にとっては、驚きや新鮮さをあまり感じられないかもしれません(と言って、あえてハードルを下げておく作戦)。

でも!

ミステリが好きなら一度は読んでみてほしいというこの気持ち!

「ああ、これがミステリの原点か」とか

「この作品が数多くの作品に影響を与えてきたのだな」とか

「これが100年前のミステリー小説だって!?」とか感じながら読むのが最高なんですよ。

古典にしかない独特の雰囲気も好きですし。その情景を思い浮かべながら一つの読み物として楽しんでいただければ幸いです。

それでは、第10位から順番にいってみましょう(●>ω<)っ

 

Part2もあります。

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目次

10.『ナイン・テイラーズ』

ドロシー・L・セイヤーズの代表作。名作『誰の死体?』を一作目としたピーター卿シリーズの九作目です。

イギリスの田舎村で発見された身元不明の死体。死体は顔を潰され手を切られていて……。

推理小説としても面白いんですが、作品の舞台となる村の雰囲気とか設定が大好き。どことなく横溝正史さんの作品のような陰鬱な雰囲気を感じました(私だけかもしれない)。

無駄に長いなって思えたことにもちゃんと意味があったり、意外な犯人でアッと驚かせてくれたりと、古典的とはいえとても楽しめる作品です。

というか、ピーター卿ものはどれも本当に面白い。ぜひ一作目の『誰の死体? (創元推理文庫)』から読んでみてくださいな。

年の瀬、ピーター卿は沼沢地方の雪深い小村に迷い込んだ。蔓延する流感に転座鳴鐘の人員を欠いた村の急場を救うため、久々に鐘綱を握った一夜。豊かな時間を胸に出立する折には、再訪することなど考えてもいなかった。

9.『樽』

かの有名なクロフツの『樽』です。

樽から発見された死体を皮切りに続く謎、謎、謎。

まさに傑作という名がふさわしく、海外ミステリーを読む上で絶対に外せない作品の一つです。

鮎川哲也さんの名作『黒いトランク (創元推理文庫)』や、横溝正史さんの名作『蝶々殺人事件(角川文庫)』などはこの『樽』を意識して書かれたということは有名な話。その影響力は絶大です。

しかも2013年に新訳版が出たおかげでグッと読みやすくなっていますよ〜(●´∀`●)

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パリ発ロンドン行き、彫像在中―荷揚げ中に破損した樽に疑惑を抱いた海運会社の社員がバーンリー警部を伴って船に戻ると、樽は忽然と消えていた。紆余曲折を経て回収された樽から出てきたのは女性の遺体。

8.『赤い館の秘密』

「くまのプーさん」の著者・A.A.ミルンによる唯一の長編推理小説。

まさに古き良き英国ミステリーといった感じで、程よいユーモアと穏やかな雰囲気を漂わせながら淡々と物語が進んでいきます。

とても丁寧な構成で読者にわかりやすく、一緒に推理していきましょう!という感じが伝わってくるのが良いですね。探偵小説のお手本のような作品です。

なんと言いますか、トリックが凄い、とか、衝撃のどんでん返し!とかそういうレベルの話ではなく、「面白い推理小説」なんですよ。キャラクターも良くて、純粋に楽しく読めるという凄さ。

暑い夏の昼さがり、赤い館を十五年ぶりに訪れた兄が殺され、家の主人は姿を消してしまった。二人のしろうと探偵のかもし出す軽妙な風味と、専門家はだしの巧妙なトリックは、通人の珍重するキャビアの味、と評されるゆえんである。

7.『帽子収集狂事件』

帽子盗難事件が多発していたロンドンで殺人事件が発生。しかも死体には盗まれたシルクハットがかぶされていた。

密室の王者ジョン・ディクスン・カーによるフェル博士シリーズの2作目。海外ミステリを読む上で絶対に外せないシリーズです。

カーの作品である時点で確かに面白いのだけれど、まだカーの作品を読んだことがない方は『三つの棺〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)』『火刑法廷[新訳版] (ハヤカワ・ミステリ文庫)』『皇帝のかぎ煙草入れ【新訳版】 (創元推理文庫)』『ユダの窓 (創元推理文庫)』などの作品を先に読むことをおすすめします。

なぜかと言いますと、『帽子収集狂事件』はカーならではの「怪奇」感が薄いんですよね。

いや、もちろんこれも面白いんですけど。他が面白すぎるというか、やはりカーといえば「怪奇」と「密室」なわけで。

他にもカーの作品は面白いものが数多くあるので、この機会にぜひ読み漁ってみてください。

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“いかれ帽子屋”による連続帽子盗難事件が話題を呼ぶロンドン。ポオの未発表原稿を盗まれた古書収集家もまた、その被害に遭っていた。そんな折、ロンドン塔の逆賊門で彼の甥の死体が発見される。

6.『アクロイド殺し(アクロイド殺害事件)』

はいでました!

今なお語り継がれるアガサ・クリスティの傑作です。

とある村の名士アクロイドが殺された事件に名探偵ポワロが挑む、というシンプルなストーリーながら今読んでも存分に楽しめる古典ミステリの一つ。

「何を書いてもネタバレになる」で有名な作品ですので、多くは語りません。下調べなどをせずにさっさと読んでしまいましょう。

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深夜の電話に駆けつけたシェパード医師が見たのは、村の名士アクロイド氏の変わり果てた姿。容疑者である氏の甥が行方をくらませ、事件は早くも迷宮入りの様相を呈し始めた。

5.『トレント最後の事件』

E・C・ベントリーの代表作にして、ミステリー小説でもあり恋愛小説でもある古典的名作。

ミステリとして古典ではありますが純粋に読み物として面白く、二転三転する展開もあって思った以上に楽しめた作品です。

発表されたのは1913年。今から100年以上前です。「これは100年以上も前に書かれた作品なんだ」と意識して読むと余計に面白く、味わい深いものがあります。

しかもありがたいことに、2017年2月に新版が登場しました!とても読みやすーい!ありがたーい!

もはや神様が「早く読め」と言っているようなものです。

アメリカ財界の大立者、巨人マンダースンが別邸で頭を撃たれて即死した。その結果、ウォール街の投機市場は旋風のような経済恐慌にみまわれ、大混乱をきたした。

4.『Yの悲劇』

言わずと知れた、エラリー・クイーンの代表作。

バーナビー・ロス名義で書かれた「悲劇4部作」の2作目です(1作目の『Xの悲劇 (角川文庫)』も名作ですので合わせてどうぞ)。

この作品がどれほどの数のミステリー小説に影響を与えてきたことでしょうか。

大富豪ハッターの死体発見を皮切りに、その後ハッター家で起きる連続殺人を描いた〈館モノ〉の古典です。

犯人は誰?という基本的な謎に加え、犯人はなぜ、わざわざ凶器にマンドリンを選んだのか?という謎がとっても魅力的。

マリンドンは非常に軽い楽器であり、凶器として扱うには完全に不向きなのです。しかも現場には、マリンドンより凶器に向いているモノがありました。

しかし、犯人は、わざわざ、マリンドンを、凶器に選んだ。一体なぜ。

今読んでも十分に楽しめるし、何度読んでみてもやっぱり面白い。

大富豪ヨーク・ハッターの死体がニューヨークの港で発見される。毒物による自殺だと考えられたが、その後、異形のハッター一族に信じられない惨劇がふりかかる。

3.『僧正殺人事件』

ヴァン・ダインの代表作にして傑作。私も大好きな作品です。

なんて言ったって「見立て殺人の元祖」ですからね。こりゃあ読まずにいられません!

弓術選手のジョーゼフ・コクレーン・ロビン(コック・ロビン)が、矢に貫かれて死んでいるのが発見される。で、その状況がマザー・グースの「コック・ロビンの死と葬い」にとても似ていたわけです。

その後、自らを「僧正」と名乗る犯人が現れて……。

見立て殺人なんてもう読み飽きた、なんて理由で読まないと損をしちゃいますよ。むしろ、あらゆる見立て殺人ものを読んできたからこそ、改めてこの作品の素晴らしさに気がつけるのです。

ヴァンダインの作品を読む上で、というより海外ミステリを読む上で外せない一作でしょう。

探偵役であるヴァイス(クセが強い)の魅力にも注目。

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だあれが殺したコック・ロビン?「それは私」とスズメが言った―。四月のニューヨーク、この有名な童謡の一節を模した不気味な殺人事件が勃発した。

2.『黄色い部屋の秘密』

「密室ミステリの歴史的名作」と呼ばれる古典ミステリ。推理小説がお好きな方なら一度は目にしたことがあるでしょう。

密室状態にある黄色い部屋で死んでいた令嬢。犯人はどこに消えた?というシンプルな謎ながら奥が深く、緻密に構成された物語は圧巻です。

肝心の謎に関しても「密室の謎」と「意外な犯人」の両方が楽しめる贅沢っぷり。ストーリーに至っても読ませる展開の連続で、読む手を止めることは困難を極めます。

このような海外の古典ミステリというのは「読みにくい」イメージがつきものなのですが、2015年に発売された新訳版がとても読みやすいのでおすすめです(●ノ´з`)ノ

これが100年以上前の作品ですからね。いま読んでも十分に面白いとは、恐ろしい。

真夜中、令嬢の寝室から助けを求める悲鳴と銃声が響いた。居合わせた父親らがただ一つの扉を打ち破って部屋に入ると、令嬢は昏倒し、部屋は荒らされ、黄色の壁紙には大きな血染めの手形が…だが部屋は完全な密室で、犯人の姿はどこにもなかった!

1.『赤毛のレドメイン家』

第一位となったのは、イーデン・フィルポッツの『赤毛のレドメイン家』。言わずと知れた名作なので、ご存知の方も多いことでしょう。

まさに「古典」といった感じの王道ミステリであり、1922年の作品にしてすでに完成された美しさを誇ります。

しかしトリックに関してはいま読むと真新しさは感じず、鋭い方ならトリックも犯人もわかってしまうかもしれません(などとよく言われているため、余裕をかましていたら見事に騙されたのは私だけか)。

ですが、それで良いんです。犯人がわかったって面白いんです。

雰囲気とストーリーだけでグイグイ読まされ、サスペンスあり恋愛要素あり、キャラクターの使い方も巧みで読み応え十分。ミステリの枠を越え、どちらかといえば文学的な面白さがありますね。

「古典ミステリ」と割り切って読めばかなり楽しめるでしょう。古典にしかない古き良き味を存分に堪能してくだい。

ただ、当時読んでたらもっと楽しめたのかな、と思うと悔しい!ミステリを全く読み慣れていない頃に読みたかった。

一年以上の月日を費やしてイタリアのコモ湖畔におこる三重四重の奇怪なる殺人事件が犯人の脳髄に描かれた精密なる「犯罪設計図」にもとづいて、一分一厘の狂いもなく着実冷静に執行されてゆく。

おわりに

うーん、なんという名作たち。海外推理小説のオールスターではないですか。

今もなお読み続けられるということは、やはり名作というのは何年たっても面白いものなのですね。

 

というわけで、今回は江戸川乱歩が選んだ最高の海外ミステリー小説「乱歩の10選」をご紹介させていただきました。

どの作品も間違いなく「古典ミステリの名作」ですので、ミステリー小説がお好きであれば読んでおいて損はありませんよ!

 

乱歩の10選Part2もあります。

➡︎海外ミステリー小説 【乱歩の10選②】江戸川乱歩が選んだ海外ミステリ小説ベスト10.part2

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➡︎まず最初に読むべき「江戸川乱歩」のおすすめ作品集3選

➡︎【入門編】定番人気のおすすめ名作海外ミステリー小説50選

どうぞ参考にしていただければ幸いです〜(ノ∀`●)

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)

コメント

コメント一覧 (2件)

  • 「樽」は退屈だという評判とは裏腹にとても楽しい読書体験でした。
    僕のミステリの好みからすると決して好きな作風ではないはずなのに、何故かクロフツは合います。
    「アクロイド」はネタを知った上で読んで尚面白かったです。
    でもそもそもクリスティには面白くない作品が少ないですよね。
    「黄色い部屋」は「本陣殺人事件」で名前が出てきて知りました。
    それまでの密室ものを否定してみせ、以後の評価基準を高めましたよね。
    その他も歴史に名を残す名作揃いで、乱歩の海外作品の紹介者としての功績を感じます。
    因みに僕「帽子収集狂」をカー入門として読んだクチです。
    さらに次に読んだのが「かぎ煙草」で、全然オカルト趣味無いやんけって思ってました。
    「火刑法廷」でぶっ飛びましたが。

    • 確かに『樽』は退屈と聞きますよね。私もとても楽しめたのですが。退屈なくらいのあのテンポが好きなのです。
      私アクロイドはネタ知らない時に読んだので衝撃で死にそうになりました。その後も読み返しましたけど、やっぱり面白いんですよね。あの一撃がわかっていても面白いとはさすがクリスティ。。。
      〈因みに僕「帽子収集狂」をカー入門として読んだクチです。〉
      おー!そうなんですか!じゃあその流れは確かにびっくりするでしょうね!笑
      私は「火刑法廷」あたりを先に読んでしまったんで、帽子収集狂にどうしても物足りなさを感じてしまって(涙)読む順番って大事ですよね。。(ノω`*)

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