【乱歩の10選②】江戸川乱歩が選んだ海外ミステリ小説ベスト10.part2

さて、今回は前回の「乱歩の10選」の続きを。

実は江戸川乱歩は1947年に10選を発表後、1952年にも追加で海外ミステリのおすすめ10選を述べています。

前回ご紹介したpart1「乱歩の10選」はメジャーな作品が多めでしたが、それと比べて今回はややマイナーな作品が多めな印象。

で・す・が・やっぱり面白いです。「世界三大倒叙ミステリ」も含まれていますし。

というわけで、ぜひ参考にしていただければ嬉しいです。

 

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➡︎【乱歩の10選】江戸川乱歩が選んだ海外ミステリ小説ベスト10

目次

10.『殺意』

毒入りチョコレート事件(創元推理文庫)』でお馴染みのアントニー・バークリーが、フランシス・アイルズの名義で発表した代表作。

犯人視点で物語が進む「倒叙ミステリ」であり、その中でも「世界三大倒叙ミステリ」の一つに数えられる傑作です。

イギリスの田舎町を舞台に、ビグリー博士が妻を殺そうとする物語。

古典的傑作なのは間違いないのですが推理小説とはまた違い、どちらかと言えば「犯罪心理小説」といった感じですね。

とにかく心理描写が細かく、ストーリーが面白いのでどんどん読めちゃいますし、最後も実にバークリーらしいオチが。海外古典ミステリに興味があるなら読んでおいて間違いない作品でしょう。

イギリスの田舎町の開業医ビグリー博士は妻のジュリアを殺そうと決意し、周到な計画のもとに犯行へと移った。

9.『叔母殺人事件』

続いても「世界三大倒叙ミステリ」の一つです。

伯母と二人暮らしをしている男が、遺産目当てで伯母の殺害を計画する物語。

おどろおどろしい雰囲気はなく、むしろユーモアがあって楽しめながら読めちゃう作品です。特に後半のハラハラドキドキの展開は見もの。

ストーリー展開の良さはもちろん主人公のダメダメっぷりも面白くて、個人的には「世界三大倒叙ミステリ」の中でも一番好きですね。

ちなみに「叙述トリックの名手」でお馴染みの折原一さんは、この作品のオマージュとして『叔母殺人事件<偽りの館> (講談社文庫)』という作品を書いています(〃゚3゚〃)

アイルズの『殺意』クロフツの『クロイドン発12時30分』と並ぶ、倒叙推理小説三大名作の一つである。遺産を狙って、伯母を殺そうとたくらむ男がこころみるプロバビリティの犯罪!

8.『判事への花束』

マージェリー・アリンガムによる「探偵アルバート・キャンピオン」ものの一つ。

しかし1956年に翻訳版が出たっきりなので現在では入手しにくく、訳も古めなので少々読みにくいのが残念。私は図書館で借りましたが。

でもこの「探偵アルバート・キャンピオン」もの自体は非常に面白いシリーズで、『窓辺の老人 (キャンピオン氏の事件簿1) (創元推理文庫)』や『幻の屋敷 (キャンピオン氏の事件簿2) (創元推理文庫)』辺りは訳も新しくて読みやすいのでかなりオススメです。

7.『クロイドン発12時30分』

またまた「世界三大倒叙ミステリ」の一つ。傑作『樽』でお馴染みのF・W・クロフツの作品です。

経営する工場が倒産しそうなため、遺産狙いでおじを殺害する物語。

アッと驚く派手さはないものの、地味に、しかし確実に読ませる古典の良さが味わえます。特に綿密に描かれた心理描写にはグッと引き込まれますね。お見事です。

現在のところ「創元推理文庫」さんと「ハヤカワ・ミステリ文庫」さんから出ているのですが、読みやすさで選ぶなら新訳版である「ハヤカワ・ミステリ文庫」さんの方がオススメ。

完全犯罪を成功させろ!工場を経営するチャールズは窮地に陥っていた。資金繰りが苦しくなり、従業員たちの給料さえ払えなくなる日も近い。頼りだったおじのアンドルーにも借金をきっぱりと断わられてしまった。

6.『ある詩人への挽歌』

マイクル・イネスの名作。

スコットランドの古城に謎の転落死、などなど非常に惹かれる要素のあるミステリですが、前半がなかなか読みにくい。挫折しそうになります。

しかし!後半から徐々にページをめくる手が止められなくなり、終盤の見事などんでん返しの連続にはアッと驚かされることでしょう。

海外古典ミステリ好きなら読んでおいて間違いなし。結局、名作と言わざるをえないのです。

ラナルド・ガスリーはものすごく変わっていたが、どれほど変わっていたかは、キンケイグ村の住人にもよく分かっていなかった…。

5.『野獣死すべし』

イギリスの詩人セシル・デイ・ルイスが「ニコラス・ブレイク」名義で発表した作品。

最愛の一人息子を殺された探偵作家フィリクス・レインが犯人に復讐する物語、というと倒叙ミステリのようにも思えますが、実はフーダニット(犯人は誰か?)を基にした本格ミステリです。

前半の日記形式で描かれている構成が面白くてこれだけでグイグイ読めるし、「わたしは一人の男を殺そうとしている」という冒頭がまた逸材。

そしてあのラストは……。

今回の乱歩の10選の中でも特におすすめしたい作品です。

探偵作家フィリクス・レインは、最愛の一人息子を暴走する自動車に引き逃げされた。再三の調査にもかかわらず自動車の行方は知れず、六カ月がむなしく過ぎた。

4.『大いなる眠り』

レイモンド・チャンドラーによる「フィリップ・マーロウ・シリーズ」の一作目にして、英ガーディアン紙が選ぶ「死ぬまでに読むべき」小説1000冊にも選ばれている名作

まさに王道の探偵物といった感じで、探偵小説がお好きならグイグイ読み進めることができます。また、なんとも言えぬチャンドラー独特の雰囲気が最高でして。これは実際に読んで味わってもらうしかないのですが。。

ただ、まだレイモンド・チャンドラーを読んだことがないのであれば『長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ文庫』の方が個人的にはおすすめしたいです。文句無しのハードボイルド小説の傑作でございますので。

私立探偵フィリップ・マーロウ。三十三歳。独身。命令への不服従にはいささか実績のある男だ。ある日、彼は資産家の将軍に呼び出された。将軍は娘が賭場で作った借金をネタに強請られているという。

3.『十二人の評決』

とある殺人事件の陪審員として選ばれた12人の人物と、裁判の行方を描いた法廷ミステリ。

全3部に分かれていて、第1部では陪審員12人の背景、第2部ではその事件について、第3部で評決、という構成になっています。

正直いうと裁判の結果より、第1部の「陪審員12人の背景」の部分がとても面白い。これだけで満足しちゃうくらいです。

これもなかなか手に入りにくく、私は図書館本。文庫で新訳版を出していただけたら絶対買うんですけどね〜。

第一部―陪審。ある殺人事件を裁くために選ばれた十二人の陪審員。彼らのなかには誰にも知られてはいけない秘密を持つ者もいる。

2.『検屍裁判-インクエスト』

絶盤になっていて読むのを諦めかけていたら、2008年に『検死審問―インクエスト』と少しだけタイトルを変えて新訳で登場。本当にありがとうございます。

女流作家ミセス・ベネットの屋敷で起こった不審死事件を解決していく法廷ミステリ。

難しい話かと思いきや、個性的な登場人物ばかりだしユーモアもあって楽しく読めちゃう。さらにストーリーも二転三転、伏線回収しながらアッと言わせてくれる結末まで用意されています。お見事ですね。

1938年の作品を今でもこんなに楽しめるというのは素晴らしい。。

リー・スローカム閣下が検死官としてはじめて担当することになったのは、女流作家ミセス・ベネットの屋敷で起きた死亡事件だった。女主人の誕生日を祝うために集まっていた、個性的な関係者の証言から明らかになる真相とは?

1.『幻の女』

はいきました!ウイリアム・アイリッシュの代表作にして傑作の『幻の女』です。

ヘンダースンが妻と喧嘩をして夜のニューヨークの街をブラブラしていたら、少し変わった女性に出会って一緒に街で遊びました。

で、家に帰ったら妻が殺されていた。疑われるヘンダースンですが、彼には女性と街で一緒に遊んでいたというアリバイがある。

なのに!女はどこにもいないし、街の人々は皆「彼は一人でいた」と言う。どういうことだ?!っていう物語です。

海外ミステリを読む上でも絶対に外せない作品。当然ながら今読んでもとっても面白いです。

2015年に新訳も出ましたからね。完璧です(*´ω`)

[kanren id=”4630″]

妻と喧嘩し、あてもなく街をさまよっていた男は、風変りな帽子をかぶった見ず知らずの女に出会う。彼は気晴らしにその女を誘って食事をし、劇場でショーを観て、酒を飲んで別れた。その後、帰宅した男を待っていたのは、絞殺された妻の死体と刑事たちだった!

おわり

というわけで、「乱歩の10選」part2をご紹介させていただきました。

どれも10選に選ばれるというだけあって流石の面白さですね〜。絶盤が多くて少々残念ですが、新訳版が出てる作品もありますので優先的にどうぞ。

part1もあるよ!

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どうぞ参考にしていただければ幸いです。

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)

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