宮部みゆきさんが絶賛したという、小説すばる新人賞受賞作『ラメルノエリキサ』。
これはタイトル買いですよね。
単行本のときから気になっていたんですが、この度ついに文庫化しました。
「ラメルノエリキサ」という言葉の真相を明かしていく青春ミステリだと思って読んだんですが、ちょっと違います。
これは《青春ハードボイルド&少女の愉快な復讐劇》です。
ミステリとしてはおすすめしませんが、サクッと読める爽快な小説が好みならぜひお手に取ってみて。
文庫で約190ページ、お値段460円+(税)という手軽さもありがたいです。
『ラメルノエリキサ』ってなに??と気になったら読みましょう。
簡単なあらすじ
「やられたら、やり返す」がモットーの16歳・小峰りな。
私にとって、復讐とはどこまでも自分だけのために行うものだ。自分がすっきりするためのもの。
(省略)
私は自分が好きだから、大切な自分のためにいつまでもすっきりしていたい。復讐とは誰かのためじゃない。大切な自分のすっきりのためのもの。
P.5,6より引用
そんな小峰りながある夜、道を歩いていたところを何者かにナイフで切りつけられる。
気がつけば病院。
普通の少女なら恐怖を覚えるのでしょうが、だってりなちゃんですもの。
復讐しなければ気が済みません。
ヒントとなるのは、犯人が去り際に残した「ラメルノエリキサ」という言葉。
ラメルノエリキサとはなんだ?
復讐に燃える少女は行動を開始する。
理不尽な暴力を受けて、右腰には傷が残った。いろいろな不便を強いられたし、夜道で音楽を聴くときには不安を覚えるようになった。とても不快で、許せない。
傷は消せないし、時間は戻せない。でも、こんな風に害された状態のまま生きていったら、私は歪んでしまう。歪んでしまった私を、私は愛せるだろうか。自分自身にすら愛されなくなるなんて、耐えられない。
私はすっきりする必要がある。
P159.P160より引用
小峰りなの生き様に惚れる
小峰りなの復讐心というのは相当なもので、子供の頃に飼っているネコを傷つけられたという理由で、犯人の「クソガキ」を本気で殺そうと考える。
しかし、姉に感づかれてアドバイスを受ける。のですが……。
「あのね、しおりちゃんはミーナの足を折ったけど、ミーナを殺したわけじゃないでしょう。だからね、その仕返しにしおりちゃんを殺すのはやりすぎじゃないかなあ。
お姉ちゃんは、腕を折るくらいにしておいたほうがいいと思うの」
P.9ページより引用
でもミーナの足を折られたんだよ!腕一本折るくらいじゃ足りないよ!
というりなに対し、
「うーん、じゃあ両腕を折るくらいにしたら?とにかく、殺しちゃダメだよ」
「うん!」
話のわかるお姉ちゃん。大好き。
P.10より引用
当時、姉8歳。さすがりなちゃんのお姉さん。頭のネジが外れてやがるぜ!
そんなりなちゃんが刺されたわけですから、相当な復讐をしないと気がすむわけありません。
思わず、犯人逃げろ!と言いたくなってしまうくらい復讐に燃える少女。
でもなんだろう。読んでいて気持ちがいい。
とにかく小峰りなの性格と語り口がカッコいいんですよ。見た目は少女だけど中身は海外ハードボイルドに登場する刑事のおっさんみたいな。
気がつけば虜になってしまう不思議な魅力があるんですよねえ。
宮部みゆきさんが、「初読のときからりなちゃんのファンになりました」と絶賛するのも納得。
姉ちゃんのキャラもイイ。
さっき引用した部分でわかると思うのですが、姉もなかなかネジの外れた思考の持ち主で読者を楽しませてくれます。
これぞ姉妹愛ですね。
結局、お姉ちゃんはりなのことが大好きなんです。
出番はそんなに多くありませんが、ところどころにナイスな登場をするのでぜひ注目してみてください。
自分のための復讐は、気持ちがいい。
結局本作の見所は「自分がすっきりするための復讐」だという所ですよね。
復讐をテーマにした小説はたくさんありますが、本作ぐらい自分の復讐に吹っ切れている作品も珍しくて気持ちが良い。
文章は読みやすいし、テンポはいいし、ストーリーがわかりやすいし、何も難しいことを考えずにシンプルに爽快感を味わえる。
こういう小説読んだの久しぶりかもしれない。
最近ヘビーな作品ばっかり読んでたから、たまにこういう小説を挟むと気分転換になるなあ。
犯人が残した『ラメルノエリキサ』という言葉が意味するものとは。
気になったらぜひぜひ。
コメント
コメント一覧 (2件)
うはは、何ですかこの青春少女小説アルフレッド・ベスター風味。
こってり重たい長編のデザートには良さそうですね!
ああ、まさにその通りです!いい例えですね笑
ヘビーな長編の後の気分転換に最適です(´∀`*)