『ポストカプセル』-これぞ折原一!15年前に出した手紙が、いま相手先に届いたら……。

 

このポストカプセルの「企画」に参加したのは約百五十人。それらはすべて編者によって読まれ、そのうち公正かつ厳正な審査で選ばれた興味深い手紙数通が配達人の手により、投函した十五年後、宛先に届けられる。そして受け取った者がどのような反応をし、どのような行動に出るかを、編者は第三者の目で注意深く見守り、記録するといった企画なのである。

P.5より

 

15年前に出した手紙が、時を超えて今、相手先に届いたらどうなるか。

 

そんな奇妙な企画「ポストカプセル」に選ばれたのが、今回ご紹介する6通の手紙。

十五年前に手紙を出した人の思い、それを十五年後に受け取った人の思い。

果たしてどのような結果になるか、興味深くないですか?

 

1.再会

 
 

君と面と向かうと臆病になって、本当の気持ちが言えません。だから、手紙を書くことにしました。これは君へのラブレターです。単刀直入に言うと、僕と結婚してください。

P.10より

そんな内容のラブレターを、市川大輔は投函した。

相手は同じ26歳の女性で、名を片岡有美という。

 

彼がこの手紙を投函したことで、運命の歯車は狂い出す。

酒の勢いで投函してしまったのがよくなかった。

 

その15年後、片岡有美の元にその手紙が届いた。

「え、何これ?」

若い記憶が沸き起こり、有美の胸が怪しく騒いだ。

P.18より

ビックリするのも無理はない。

彼女はこの手紙が15年前に投函されたものだと知らないのだから。

なぜ、今なってこんな手紙が届くのか。

それでも冷静になれば、懐かしい気持ちが蘇ってきた。

「会ってみるのも悪くないか」

彼女は手紙に書いて会った待ち合わせ場所へと向かうが……。


一発目から「これぞ折原一!」という展開を見せてくれます。

そうそう、こういうのを読みたかったのです、と心の中で折原さんにお礼を言いました。

15年前にいい感じになった人から、今更ラブレターが届いたらどんな展開になるのか。

想像しただけでもワクワクしますが、折原さんの展開は流石に予想できません。

いやー、こんな展開になっちゃうかー。怖い怖い。

2.遺書

この手紙が届いた時、僕はこの世にいないと思います。先立つ親不孝を許してください。しかし、そうせざるをえない重大な事情があるのです。

(省略)

僕の予定では、竹之内洋一を殺してから坂橋区内の雑木林の中で首を吊って死にます。

P.54.55より

十五年前に突然家を出て行って以来、なんの連絡もよこさなかった息子から十五年ぶりに手紙が届いた。

しかし、その内容に驚愕する。これは遺書ではないか。

しかも人を殺害してから自分も死ぬという。

もしこれが本当なら……。

 

手紙を受け取った田宮登志子は、手紙に書いてあった竹之内洋一という人物の住所へと向かう。

本当に竹之内が殺されているのか。

もし本当に殺されているのだとしたら、息子は今ごろ雑木林の中で……。

しかし、住所を訪ねてなんと言ったらいい。

「おたくのご主人はご無事でしょうか?」なんて聞いたら怪しまれるに決まっている。

いやそもそも、十五年経ってなぜこんな手紙を送ってきたのか。

謎は深まるばかり……。


これも見事な折原一展開。オチが好きな一編です。

最初の段階で、手紙を受け取った田宮登志子が、この手紙が「ポストカプセル」によって届いたものだと知らないところがミソですね。

ここからの田宮登志子の勇気ある行動に注目です。

折原一さんならではのオチが炸裂!

この他、礼状や脅迫状、文学賞の通知書、おばあちゃんからの助けの手紙、など、様々な手紙がポストカプセルによって届けられます。

十五年に前に手紙を出した人物と、それを受け取った人物の歯車がどう狂い出していくのか、見届けてください。

そして、各短編のオチも折原さんらしい捻りが効いているのですが、最後の一編がまたすごいのです。

これぞ折原一の真骨頂!と言いますか、うまく出来すぎていて笑っちゃうくらいの展開が待っています。

この展開は流石に予想出来ないというか、こんなの考えられるの折原さんくらいですよね。

 

正直な話、各短編のラストは面白いんですけど、「まあ折原さんならこれくらい当たり前だよね」みたいな印象を抱いていたんですよ。完全に折原麻痺ですね。折原さんに慣れちゃっていたんです。

だから、この綿密に構成されたラストの展開には唸ってしまったというか、久々に拍手ものでした。

 

十五年前に出した手紙が今届く「ポストカプセル」という企画で作品を作るなら、作家さんによって感動的な作品に仕上がってもおかしくないのに。

折原さんったらこんなにブラックにしちゃうんですから(ありがとうございます)。

もともと折原一さんの作品が好きな方には良い一冊になるでしょう。

ぜひ、あのラストをご堪能あれ。

 

 

2 Comments

こはる

イエス!待ってました(恍惚) まあ当然のように折原ファンであるので、いつ記事になるのかなあとw

ぼくは折原さんのだとこういう思考のが好きなんです(例えばグランドマンション) もちろん長編は長編でハマりまくってました(長編1番は、やはり異人たちの館かな?)

最近はハードカバーばかり…..ってのを先のコメントで書いた通り、火のないところに煙は、ハリネズミの願い、黙過…..などなど ぼくはまだこれは未読なんですが、やはりこの記事を見て急いで読まなければいけないという気持ちを再認識しましたw

今年は豊作ですねえ(恍惚(二回目))

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anpo39 anpo39

待っていただけてましたか!
私も当然のように折原ファンでございます。笑
わかりますわかりますグランドマンションみたいなやつですよね。私もそれ系大好きです。
ラストに収束していく展開がたまりませんよね。

いやはや、確かに最近はハードカバーで面白い作品がたくさん出てますねえ。お財布に厳しいですが……泣

折原ファンでしたらポストカプセルもきっと気に入っていただけるでしょう!
お財布のことなんか気にせずぜひぜひ!笑

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