海外のミステリー作家といえばジョン・ディクスン・カー、という方も多いでしょう。
数々の名作を生み出し、ミステリー小説好きに名前を知らない人はいません。特に「密室殺人」を扱ったミステリーが有名で「密室といえばカー」と言われるほど。
今回は、そんなカーのおすすめ名作ミステリーを選びました。どの作品もミステリ好きなら是非とも読んでおきたい名作ばかりです。
ちなみに作者の名前が「カーター・ディクスン」となっている作品がありますが、「カーター・ディクスン」はカーのペンネームです。
どうぞ参考にしていただければ幸いです。
1.『火刑法廷』
デスパード家の当主が死亡。
その夜に目撃された謎の夫人は壁を通り抜けてしまったり、密閉された地下室からは遺体が消えてしまったり……と、カーらしい不気味な雰囲気漂う本格ミステリー。
わかってみると単純なトリックなのですが、カー独特の妖しい雰囲気が上手い具合に真相をわからなくさせます。
どんでん返しミステリとしても有名で、初めて読んだ時はあまりの衝撃にしばらく言葉を失っていました。
明らかに傑作なので、下調べしすぎないで予備知識なしの状態で読んでください。
なぜこの作品が傑作と呼ばれているかがわかるでしょう。
広大な敷地を所有するデスパード家の当主が急死。その夜、当主の寝室で目撃されたのは古風な衣装をまとった婦人の姿だった。
2.『三つの棺』
密室ミステリの最高峰とも言われる作品。
雪の夜、仮面をつけた謎の男がグリモー教授の元に訪れた。そして銃声。部屋のドアを開けると倒れた教授のみで、仮面の男は密室から姿を消していた!
ミステリではおなじみの、雪に囲まれた密室で起きる不可能犯罪モノ。
犯人と思われる人間の足跡が全くなかったのはなぜか?という謎に対しての解答が見事の一言。
また、作中には有名な「密室講義」が登場。
探偵役のフィル博士が「自身が推理小説の登場人物」であることを明言し、推理小説における密室殺人のトリックを簡潔明瞭にメタ的に語っていきます。
この「密室講義」は他の国内ミステリー小説でもよく引用されたり、知っていて当然のように出てきたりするので優先的に読んでおきましょう。
これからミステリー小説を読む上で必読の一冊です。
ロンドンの町に静かに雪が降り積もる夜、グリモー教授のもとを、コートと帽子で身を包み、仮面をつけた長身の謎の男が訪れる。やがて二人が入った書斎から、銃声が響く。
3.『ユダの窓』
シリーズ7作目にしてカーには珍しい法廷モノ。
結婚の許しをもらうため、恋人の父親ヒュームに会いに行ったアンズウェル。しかし話の最中に気を失い、目を覚ませばヒュームが死んでいた。
どう考えてもアンズウェルが犯人としか思えない状況の中、ヘンリ・メリヴェール卿はどうやって彼を弁護していくのか。
トリックももちろんの事、引き込まれるストーリー展開はさすが。
トリックだけに頼ることなく、法廷シーンがとにかくスリリングでハラハラしっぱなし。今作での大きな見所です。
完璧に思えた密室が崩れていくさまは本当に美しく、ミステリ好きなら読まなきゃ損をするレベル。
密室殺人、法廷ミステリーの名作に間違いなしです。
被告人のアンズウェルを弁護するためヘンリ・メリヴェール卿は久方ぶりの法廷に立つ。
4.『皇帝のかぎ煙草入れ』
婚約者の父が殺され容疑者となってしまったイヴ。しかしとある理由から容疑を否認することができないでいた。
アガサクリスティに「さすがのわたしも脱帽する」と言わせたトリックは必見。
クリスティが脱帽するんですから、一般人が読んだらとんでもないことになります。
どう頑張っても騙されるので、清々しい気持ちでやられましょう。
仕掛けはいたってシンプルなんですけどねえ……。シンプルだからこそ、真相が分かった時の衝撃が大きいわけですな。
ラストもロマンチックであり、一つの小説として大満足できる一冊です。
フランスの避暑地に暮らす若い女性イヴは、婚約者トビイの父サー・モーリス殺害の容疑をかけられる。
5.『蝋人形館の殺人』
まず純粋に、パリの夜の雰囲気と事件の不気味さが良い。蝋人形館なんて最高の舞台でしょう。
行方不明になった令嬢が死体となって発見される。
手掛かりとなりそうな蝋人形館に行ったら、蝋人形の腕に抱かれる形で女が死んでいた。
ドキドキのストーリー展開、見事な伏線、犯人とのバトル、からの意外な犯人、と読者を楽しませる工夫が盛り沢山な作品です。特に畳み掛けるラストは圧巻。
フーダニットとしてはカーの中でも最高峰でしょう。まさに唯一無二の本格ミステリ。
行方不明の元閣僚令嬢が、他殺死体となってセーヌ河で発見された。
6.『黒死荘の殺人』
ヘンリー・メリヴェール卿の長編一作目。
不気味な幽霊屋敷「黒死荘」で起こった密室殺人を描きます。
オカルト要素とミステリの絶妙な組み合わせはやっぱりカー。
おどろおどろしい舞台設定も大好きですが、伏線やトリックなどのミステリー要素も最高です。
改めて読んでも伏線の忍ばせ方がうまい。犯人の意外性も良いし、何よりも密室トリックが素晴らしい。
横溝正史氏はこの作品に影響を受け、名作『本陣殺人事件』を描いたことでも有名。
曰く付きの屋敷で夜を明かすことにした私が蝋燭の灯りで古の手紙を読み不気味な雰囲気に浸っていた時、突如鳴り響いた鐘―それが事件の幕開けだった。
7.『白い僧院の殺人』
ヘンリー・メリヴェール卿の長編二作目。
雪密室といえばこの作品。雪に囲まれた建物の中で殺された人気女優。しかし、周りの雪には死体発見者の足跡しかない。
一体犯人は雪に足跡を残さずどうやって現場に入り、そして立ち去ったのか?
江戸川乱歩が褒め称えたというこのトリック。本当に何度読んでも良く出来た密室トリックだと感心します。
とにかく騙されたと思って読んでくれ、としか言いようがない。
ロンドン近郊の由緒ある建物〈白い僧院〉――その別館でハリウッドの人気女優が殺された。建物の周囲三十メートルに及ぶ地面は折から降った雪で白く覆われ、足跡は死体の発見者のものだけ。
8.『ビロードの悪魔』
歴史ミステリの名作。
過去に起こったある事件を阻止するために、悪魔と契約して過去にタイムスリップする、というややSF風の味付け。
いやはや、これが相当面白い。阻止する事件に関するミステリー要素も魅力的なのですが、悪魔との取引にも実は面白さがあるのです。
上に紹介してきた本格密室ミステリとはまるで違う、ジェットコースターのような楽しさを味わうことができます。
エンターテイメント性にも優れながら、意外な犯人もしっかりやってくれる。カーはどんなことを書いても一流なのです。
歴史学教授のフェントンは悪魔と契約を交わし、時を遡った。三百年前の貴族に乗り移り、その妻が毒殺された事件を解明しようというのだ。
9.『囁く影』
パリ郊外にある古い塔で一人の死体が見つかった。しかも塔には誰も登っていないという証言が。
警察が自殺と判断する中、吸血鬼の仕業だとウワサが広まる。
そして数年後、新たな悲劇が。
カーお得意の不可能犯罪と怪奇のコンビネーションはやっぱり面白い。他の作品と比べ地味目ですが、それがいい。
パリ郊外の古塔の頂で、土地の富豪が死体で発見される。警察は自殺としたが、世間は吸血鬼の仕業と噂した。
10.『妖魔の森の家』
カー傑作短編集。
短編なのに一つ一つの読み応えもあり、伏線もトリックも結末もいちいち凄い。短編なのでピシッと収まりバランスもいい。
特に表題作『妖魔の森の家』は素晴らしき完成度。表題作だけでも良いので読みましょう。
鍵のかかった部屋から煙のように消え失せた少女。何年もたったのち、H.M卿の眼の前で再び同様のことが起こる……。
事件の怪奇性、読者の盲点のつき方、人間消失のトリックのインパクトと、本当に隙がない短篇になっています。
ほか、『第三の銃弾』も見事な短篇ですのでぜひ。
長編に劣らず短編においてもカーは数々の名作を書いているが、中でも「妖魔の森の家」一編は、彼の全作品を通じての白眉ともいうべき傑作である。
他の人気海外ミステリ作家さんも!





よろしければ気が向いたときにでも、参考にしていただければ幸いです。
それでは、良い読書ライフを!(=゚ω゚)ノ
コメント
コメント一覧 (1件)
学生時代を思い出してもう1回読んでみます。
このコメントうれしいです。ありがとうございます。