今回は、短編集の名作として知られるG・K・チェスタトンの『ポンド氏の逆説』にサクッと触れてみましょう。
G・K・チェスタトンと言えば「ブラウン神父シリーズ」でおなじみのあの方です。
伝えたいのは、「ブラウン神父シリーズ」以外も面白いんだぜ!( ´∀`)って事です。
この作品も短編集ですので、ぜひお気軽に手にとってほしいです。
一編一編がほんと濃厚ですから。

G・K・チェスタトン『ポンド氏の逆説』
この本の簡単なあらすじですが、収録されている作品に共通しているのは「逆説(パラドックス)」という概念が共有されていること。
ミステリーは、ライトノベル風であっさり読めるものもあれば、難解なトリックや知的な試みが感じられるものもありますね。本作はどちらかというと、後者です。
1930年代の作品ということで、歴史的背景や海外の風習に関する知識も持ち合わせているとより楽しく読めるでしょう。
ミステリーの本場・イギリスの作品で、主人公は政府の諜報員であるポンド氏です。相棒のガヘガン大尉のキャラが立っています。
事件の核心がポンド氏の逆説につながっていくその手順が鮮やかで、読み進めていくごとに人物への理解が深まっていくでしょう。
「恋人たちの指輪」
収録された中でも人気の「恋人たちの指輪」は、ミステリーや探偵ものでありがちな、親しくない仲の人たちが一堂に会する晩餐会がもよおされ、主催の指輪が客人の間で消え、毒入りコーヒーで死者が出る……という物語です。
コーヒーを飲む前に「このコーヒーには毒が入っています!飲まないでください!」と忠告されたのに、それを無視しコーヒーを飲んで死んでしまうわけですね。
なぜ忠告されたのにコーヒーを飲んでしまったのか。
指輪は一体どこに消えたのか。
逆説が冴える一編です。
この中に犯人がいる、疑わしいのは誰か、と考えていくうちに推理に夢中になっていくでしょう。
他の短編も、シリアスな雰囲気の「黙示録の三人の騎者」など、読み応えのあるものがそろっていますので、お気に入りのものを見つけてください。
「逆説」フェスティバル!
『ポンド氏の逆説』の見所はなんといっても、海外作品ならではのウィットのきいた会話と、読書の楽しみを教えてくれる深みのある文体です。
流し読みすることは難しいですが、隙間時間を埋めるにはぴったりでしょう。読んだ後の満足感が大きい作品であるともいえます。
また、ヨーロッパの雰囲気を好む人には知的好奇心も満たしてくれる作品であるでしょう。
『シャーロックホームズ』シリーズなど、英国生まれのミステリーは香り高い名作が多く、色あせないですね。
ポンド氏とガヘガン大尉のやりとりもおもしろいですし、他の人物もそれぞれに個性的です。人間がしっかり描かれていると、事件以外も楽しめますね。
上級者向けの作品っぽいですが、ゆっくり読んでいくと理解度も深まります。論理的な作品が好きな方におすすめの一冊です!
こっちのチェスタトンもぜひ
『ポンド氏の逆説』の感想ですが、ひとことで言えば「ポンド氏の人柄に癒されつつ推理も楽しめてお得感がある」ということですね。
役人・ウォットンの存在感もスパイスになっています。イギリス生まれのミステリーらしく、シニカルな作風ですが、好きな人にはたまらないかもしれません。
推理ものは一度読むとトリックが分かってしまうので、二度三度とリピートすることは少ないと思いますが、『ポンド氏の逆説』は謎を暴くだけではなく、人物の掘り下げや時代背景もしっかり描きこまれているので、二度目にも新しい発見をすることができます。
ネットで調べても歴史の勉強はできるので、政治情勢なども合わせて頭に入れておくとよさそうですね。どんでん返しが起こるポイントを体験すると、やみつきになってしまうでしょう。
普段、逆説で物事を考える癖がある人はあまりいないと思いますが、ポンド氏の物語を読んでいくと癖が移ってきてしまうかも。
ちょうどよい長さの短編集なので、寝る前や移動中の読書タイムに最適ですね。
ぜひ「ブラウン神父シリーズ」と合わせてお読みください。

コメント
コメント一覧 (1件)
海外作品のウイットに富んだ語り方や言い回し、ぼくが1番好きなのがルメートルが書くそれなんですが、古い作品というと例えば幻の女などに近いような雰囲気?? 気になりますねえ彡(^)(^)
知らなかった作品ですが、ヨーロッパ物が好きな人へのおススメとなるととても見過ごすわけにはいかないです、1930年代というクリスティー全盛期時代の同年作品としても!
そろそろ道尾さんの新作のあれが記事に上がってくるかなーとワクワクしてたとこですが、古典もいい具合に挟んでくるからやめられないんですよね、まったくこのブログはw