小林泰三『パラレルワールド』-二つの世界を同時に生きていた子供と家族の奮闘劇

今回は小林泰三さんの「パラレルワールド」のご紹介です。

小林泰三さんと言えば、「玩具修理者」や「アリス殺し」「記憶破断者」などで有名ですね。

まだ読んだことないという方は早速書店へゴー、ということでよろしくお願いします。

 

さてさて今回の「パラレルワールド」、まず表紙を見てみましょう。

真ん中に描かれている男の子を中心に、右側のお母さんが何だかほんのり赤っぽく、左側のお父さんがほんのり青っぽく色がついていますね。

そして帯には

「ヒロ君はお父さんとお母さんと三人で仲良く暮らしています。でも、お母さんにはお父さんが見えないのです。」

と書いてありますねー。なんだか意味深ですねー。

わたくし、離婚の話かなーとか、心温まる系の話かなーと勝手に想像してしまいましたが、全然違ってました……。

というわけで、前置きはこのくらいにして、あらすじ、いってみましょー。

パラレルワールド

 

・第一部

お父さんの坂崎良平は会社員。

ある時ふと目にした窓に異様な光景が。それは堤防すれすれまで増水した川だった。警報や会社の同僚の止めるのも聞かず、走り出す良平。

そう、川の上流には愛する家族が住む大事な家があるのだった。大嵐の中、濁流にもまれながらたどり着いた家で良平が見たものは……。

一方、同じころ一人息子の裕彦と一緒に家にいた加奈子は台所仕事の最中だった。

緊急地震速報に反応した加奈子だったが、同時に発生した土石流にはなすすべもなく、家ごと押しつぶされてしまう。

裕彦とともに九死に一生を得た加奈子だったが……。

 

・第二部

なぜか二つの世界(パラレルワールド)を見ることが出来るようになってしまった裕彦。

しかし、その能力を持つ者は裕彦だけではなかった。その名は矢倉阿久羅。ニート生活をしていた彼もまた被災を経験していたが、その際に裕彦と同じ能力を身につけていたのだ。

しかも彼の場合はその能力を悪用することに力を注ぎ、行き着いた先はなんとプロの殺し屋。

裕彦の存在を偶然知ってしまった矢倉が、裕彦を敵対視するのにさほど時間は必要ではなかった。裕彦の命を守るため、良平と加奈子はどう立ち向かう?!

見どころ読みどころ

なんといってもその世界観でしょう。フツー思いつかないわこんな設定。

余りに唐突なので読んでいるこちらのイメージが追い付かず、えーと、世界は二つあるってこと?てことは、こっちがあっちであっちがこっち??と頭がパラレル状態です。

まあ、わかりやすいように登場人物たちが説明をしてくれるのでわかるんですけどね。

あとは、お父さんとお母さんのチームワーク、特に子供をなんとか守りたい、という愛情がすごく感じられます。

子供を持つ親ごさんなら、読み進めるたびに「うんうんこの気持ちわかるわかる」と涙が出そうに個所がたくさんあるはず!

あと個人的に気になったのは矢倉さんの根性の腐り具合。

これって絶対モデルがいるでしょうっていうくらいリアルなんだけど、逆にこんな人いたら絶対怖すぎ!ていうくらいひねくれものなんです。矢倉あーやだやだ。こわいこわい。

悪役なんで武器も持ってるんですが、その武器も卑怯!こんな卑怯な奴みたことない!

最後はまあ、卑怯者なりのエンディングを迎えるんだけど、まあそれもまたエグいのなんの。

これだけエグいと、映像化されると逆に笑えるキャラになっちゃうかもね、ていうくらいなのでお楽しみに。

これが小林泰三ワールドです

いろんな読み方ができると思います。能力者が二人出てきて、悪い奴をやっつけるという勧善懲悪モノ的な読み方もできるし、家族愛のストーリー、という見方もできそうです。

あと読んでいて感じたのは、死者とのつながり、ですかね。

東日本大震災の時に、亡くなったはずの家族と話すことが出来たというエピソードがありましたが、昔から日本各所に伝説として残されているもう一つの世界とのつながり、しかもそれは怖いものではなくて、自分を護ってくれるあたたかいものであるという信仰に近い考え方、そんな世界観をこの本から感じることが出来ました。

本の構成もきれいにできてて、本編の前後に2ページくらいの短い章があるんだけど、それがまた不思議な雰囲気を醸し出す役割をしていますね。

あったかいような、ちょっと寂しいような、爽快なような、グロテスクなような、浮遊したような、ほんわかしたような、不思議な小林泰三ワールドを楽しめます。

ぜひご一読を!

 

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