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澤村伊智『ファミリーランド』- 近未来の技術に踊らされた人々をシニカルに描く短編集
テクノロジーが今より一歩進んだ世界を描いた、SF短編集。 AIで常に嫁を監視し、いびる義母。 優秀な子供を計画的に出産できる薬。 配偶者のあらゆる行動をモニタリングできる結婚指輪。 ロボットばかり大切にする娘に殺意を抱く母親。 介護の手間を減らす... -
澤村伊智『怪談小説という名の小説怪談』- 怖いのに読むのをやめられない震恐のホラー短編集
8月14日の深夜、僕は複数の知り合いを乗せて、高速道路を運転していた。 途中、食事のためにサービスエリアに立ち寄った時、同乗者の一人が急に「思い浮かんだ」と言って、女性の絵を描いた。 左右の目がありえない方向を向いて笑っている不気味な女性の顔... -
近藤史恵『ホテル・ピーベリー』- いわくありげな宿泊客が次々に死んでいく。
小学校教諭だった木崎は、不祥事から退職した後、日々を無気力に過ごしていた。 ある日友人からハワイ島の小さなホテル「ピーベリー」を紹介され、興味を抱く。 そこは、一度利用したら二度目はないという、リピーターお断りのホテル。 さっそく泊まりに行... -
烏丸尚奇『呪いと殺しは飯のタネ』- 創業者一家に隠された恐ろしい秘密とは
オリジナル作品を書けない作家・烏丸尚奇は、生活のために伝記を執筆するという退屈な日々を過ごしていた。 ある日、大企業の創始者である深山波平の伝記を書く依頼が来た。 報酬が破格の高さであり、しかも「刺激を約束する」という興味深いメッセージが... -
『紙鑑定士の事件ファイル 偽りの刃の断罪』- 紙とフィギュアの蘊蓄が真相を暴き出す
紙の銘柄、厚み、密度など、紙のことなら何でもござれの紙鑑定士・渡部のもとに、新たな依頼が来た。 小学3年生の女の子からの依頼で、「紙粘土の鑑定をしてほしい」というもの。 紙は紙でも、紙粘土はさすがに専門外。 しかし依頼の目的が、 「可愛がって... -
『紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人』- 紙とプラモデルの専門知識で謎を追うミステリ
紙の銘柄を鑑定する渡部の事務所に、なぜか浮気調査の依頼が来た。 依頼主の女性はどうやら「紙鑑定」を「神探偵」と間違えたらしい。 話を聞いてみると、浮気を疑っている理由は、彼氏が急にプラモデルに凝り始めたこと。 渡部は小遣い稼ぎのつもりで依頼... -
阿津川辰海『入れ子細工の夜』- アイデアが光る、読み出したら止まらないミステリ短編集
ある作家が、編集者を名乗る男にひとつの提案をした。 「とっておきのミステリーを執筆してやろう。ただしリアリティを追求するために、物語の人物を一緒に演じてみてほしい」 編集者は二つ返事で了承し、さっそく作家の指示に従って演じ始める。 しかし演... -
紺野天龍『神薙虚無最後の事件』- いくつもの真相が興味をそそる多重解決ミステリー
大学で名探偵倶楽部に所属している白兎(はくと)と志希(しき)は、ある日道端で倒れそうになっていた唯を助ける。 彼女はミステリー作家・御剣の娘で、20年前に父が著したベストセラー『神薙虚無最後の事件』に残された謎を追っていた。 この本は実在の高校... -
村崎 友『風琴密室』- 二度読み必至。犯人の名が明かされるとき、世界は一変する
小学校5年生の夏、リョータの楽しかった日々は悲しすぎる終わりを迎えた。 好きになりかけていた女の子・雨ちゃんが転校し、兄・コーちゃんが川で溺死したからだ。 6年後、高校2年生になったリョータは、廃校となった母校で雨ちゃんと再会する。 戸惑いつ... -
浅倉秋成『俺ではない炎上』なりすまし被害で殺人犯にされたサラリーマンの逃亡劇
山縣泰介は、50代のサラリーマン。 それなりに出世しており、妻子もいて、順風満帆な日々…のはずだった。 それがもろくも崩れたのは、何者かが泰介になりすまして女性を殺害し、遺体の写真をTwitterでアップしたからだ。 ツイートはたちまち拡散され、炎上... -
『あれは子どものための歌』- 本格ミステリの興趣を巧みに織り込んだ、異色のミステリ連作集
美しい声の代わりに「賭けに必ず勝つ魔力」を手に入れたエミリア。 大金を稼ぐことが可能になったが、それゆえに父親が殺されたり仲間に恐れられたりと、うまくいかないことも増えた。 ある時エミリアは、上流階級のタシットと恋に落ち、結婚を意識する。 ... -
『神とさざなみの密室』- 密室と死体の謎に迫る密室監禁ミステリー
政治団体に所属する女子大生・三廻部凛は、自身の両手首を頭上で縛られた状態で目を覚ました。 彼女は、何者かによって密室に監禁されてしまっていたのだ。 そんなとき彼女は、顔を焼かれた謎の死体と、凛と対抗する思想を持つ男・大輝が一緒に閉じ込めら... -
逸木裕『五つの季節に探偵は』- 隠された本性を暴きたがる探偵の物語
女子高生のみどりは、父親が私立探偵だという理由で、クラスメートから何かと厄介事を頼まれている。 ある日いじめに悩んでいる怜に、英語教師の清田を調べ、弱みを握るよう依頼された。 いじめの主犯である好美が清田を慕っているらしく、清田を利用すれ... -
石持浅海『風神館の殺人』- 復讐に集まった者たちが次々に殺されていく密室ミステリの秀作
欠陥商品を販売し、多くの人々を不幸に追いやった株式会社フウジンブレード。 復讐を遂げるために、恨みを抱く者たち10名が保養所「風神館」に潜入した。 彼らは協力体制を敷き、綿密な殺害計画を練り、まずは一人目、開発部長の笛木を浴室で自殺に見せか... -
『スクイッド荘の殺人』- 断崖絶壁の閉鎖空間で忍び寄る殺人者!烏賊川市シリーズ13年ぶりの長編
暇を持て余していた私立探偵・鵜飼杜夫のもとに久しぶりに依頼が来た。 有力企業の社長・小峰が「脅迫状が届いたためボディガードをしてほしい」というのだ。 鵜飼は喜んで引き受け、小峰がクリスマスに過ごす予定の高級宿泊施設「スクイッド荘」に、助手... -
『記憶の中の誘拐 赤い博物館』- 幼少時の誘拐事件に隠された真実とは?緋色冴子シリーズ第二弾
未解決事件の捜査資料や遺留品が保管されている施設、通称「赤い博物館」。 館長の緋色冴子はそれらの整理や管理をしつつ、改めて事件を推理してみる日々を過ごしていた。 緋色の推理力はずば抜けて高く、誰もが匙を投げた難事件でも遺留品を見るだけで真... -
『時計屋探偵の冒険 アリバイ崩し承ります2』- その犯行は本当に不可能だったのか?
どれほど怪しい容疑者でもアリバイがある限り、犯人として逮捕することはできない。 そんな時に格安料金で「アリバイ崩し」をするのが、時計屋探偵・時乃だ。 今回時乃が請け負ったのは、ある資産家の溺死事件。 乗っていた高級車ごとダムに沈められており... -
『密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック』- ミステリ作家が遺した山荘で次々に起こる惨劇
ミステリー好きの男子高校生・香澄は、幼馴染に誘われて「雪白館」に泊まりに来た。 そこはミステリー作家・雪城白夜が遺した山荘で、かつて白夜が作家仲間や編集者たちを集め、推理ゲームを楽しんでいたという。 その時に白夜が作り出した密室トリックは... -
刑事オリヴァー&ピアシリーズ9『母の日に死んだ』- 里子たちの邸宅で起こった連続殺人事件
何人もの子供を引き取り育てていたテオ・ライフェンラートの遺体が、邸内のキッチンで発見された。 死後10日ほど経過しており腐敗が進んでいたが、テオが齢80を超えていたことから、老衰や病気による自然死のように思われた。 しかし遺体の顔には傷があり... -
刑事オリヴァー&ピアシリーズ8『森の中に埋めた』- 故郷の知人が次々に殺されていく物語
深夜の森で、キャンピングトレーラーが炎上し、大爆発する事件が起きた。 駆けつけたオリヴァーが調べると、車内には男性の焼死体があり、周辺には放火の痕跡があった。 さらにキャンピングトレーラーの持ち主が、オリヴァーの元級友の母親だということが...