2017年12月8日(金)にアガサクリスティ『オリエント急行殺人事件』の映画が公開します。
1974年にも一度映画化されており今回で二回目の映画化となるわけですが、今から楽しみすぎて夜も眠れません。
まず公式ホームページの予告編を観てくださいな。
サイッッコウにワクワクしませんか。もう予告編だけでも数十回観てるんですけど。
「ミステリーの名作が超豪華キャストで全く新しいエンターテイメントで生まれ変わる」と述べているように、予告編を観る限りでは原作と異なる部分が多くありそうです。
だが、それがいい!!
原作をそのまま再現するのも良いとは思いますが、この際「新しいオリエント急行殺人事件」を観てみたい。
で、つい昨日11/25に角川文庫さんより新訳版『オリエント急行殺人事件 (角川文庫)』が発売されましたので、思わず購入してしまった次第でございます。
海外の名作って新訳版が出るとどうしても買ってしまうんですよねー。
当然内容は同じなんですけど、やっぱり「訳」が違うと作品の雰囲気も変わってきて、まったく違った楽しみ方ができちゃうから素晴らしいです。
簡単なあらすじ
イスタンブール発のオリエント急行に乗るポアロ。
その車両は、様々な国籍の人々で溢れかえり、珍しく満席になっていた。
「聞いた話じゃあ、満席らしいじゃないか」
「全く驚きですよ、ムシュー。まるで今夜、世界じゅうの人々が旅に出ているみたいです!」
P.27より
そんな中、アメリカの大富豪ラチェットがポアロに依頼を持ちかけてくる。
何者からか脅迫状が届くので、身を守ってほしいのだという。大金を払う、というラチェットの言葉もポワロの胸に響かず、さらにラチェットに良い印象を持たなかったポワロは、その依頼を断る。
「いったいこの依頼のどこが気に食わないんだね?」
ポワロは立ち上がった。
「個人的なことを言わせていただくなら、あなたの顔が好きになれませんな、ラチェットさん」
P.43より
その後、オリエント急行は雪の吹き溜まりに突っ込んでしまい、立ち往生してしまう。
そのうえさらに、先ほどポワロに護衛を依頼してきたラチェットが、無残にも12カ所以上に渡って全身を刺され、死体となって発見される。
どれもこれも、でたらめに手当たり次第に刺した傷ばかり。目を閉じたまま半狂乱で、狙いなんか定めずに刺したみたいだ。
こんな風に殺害するとなれば、恨みを募らせた女性の犯行のようにも思える。しかしいくつかの刺し傷は、固い骨や筋肉すら貫通するほどの力によって付けられたものだった。これは女性の力では難しい。だとしたら男の犯行か。
加えて、ほぼ確実に左手で付けられた刺し傷もあれば、右利きによる傷も混ざっている。
これはどういうことなのか。
「まるで魔法のように全貌が明らかになっていく!犯人は力持ちかつ非力な男性であり、女性であり、右利きの人物であり、左利きの人物でもある……。まったく、わけが分かりませんよ!」
P.84より
という、一言でまとめるなら「雪で立ち往生したオリエント急行の中で起きた殺人」を描いた作品。
もうすでに舞台が魅力的すぎますが、もちろん素晴らしいのはそれだけでなく、あのトリックとアイデアとクリスティならではのプロットが絶妙にマッチングした傑作なわけですよ。
衝撃的な真相だけではない面白さ
初めて読んだときは、あの衝撃的真相に驚くばかりでアゴが外れっぱなしになったものですが、『オリエント急行殺人事件』の面白さって「あの真相」だけではないんですよね。
読めば読むほど味が出るというか、トリックも結末もわかっていたって楽しめてしまう深みがすごくて。
だってオリエント急行だけでも、他の訳のも含め10回以上は間違いなく読んでいるのに、やっぱり楽しめちゃうんですから。
これは『オリエント急行殺人事件』に限らず言えることですが、そもそもクリスティ作品は推理小説としてだけでなく「読み物」として面白いから何度でも読めちゃうわけで。
ではミステリ要素意外になにが魅力的かって、情景描写の美しさですよね。
「クリスティの推理小説は旅から生まれた」と言われるだけあって、物語の中に旅から得た知識や情景描写が多く使われており、まるで自分もその地で旅をしているような感覚を味わえる。そこが最高なんです。
このオリエント急行に関しても、三十七歳で離婚したクリスティが、憧れていたオリエント急行に乗り一人旅をしたことがキッカケで生まれたと言われています。
だからなのか、これ本当なんですけど、自分も「オリエント急行の客室で読んでいる気分」になるんですよね。
夜一人ベットの上で読書灯だけ付けて読むと、本当にその空間がオリエント急行の客室になっちゃうんですよ。すごくないですか。もう魔法ですよ。
小説には小説の、映像には映像の面白さがある!
飽きるほど読んだ原作を「どう映像化するのか」が今から楽しみで仕方ありません。
原作ファンの方の中には「こんなのオリエント急行殺人事件じゃない!」と思われる人もいるかもしれませんが、私的には結構異なる部分があってもOK。
むしろ違う部分があった方が、「へー、ここをこうやって映像化するんだー!」とか「映画ならではの演出」というのが楽しめて良いと思うんです。
あと雰囲気ね。
映像で観るオリエント急行の雰囲気ってなんであんなに美しいんでしょう。人生で一回はあのオリエント急行に乗ってみたいです。
で、雪で立ち往生してみたいです。そして、いつ動き出すか分からない列車の中で読書に没頭したい。
「オリエント急行の客室で『オリエント急行殺人事件』を読む」という行為は、私の「人生でやりたい100のこと」的なものの中に間違いなくランクインします。
でも殺人事件には巻き込まれたくないです。
基本ミステリー小説は「文章を読む」ほうが好きなのですが、オリエント急行殺人事件は映像でも何度でも観たい。
今回の映画も、間違いなく「字幕版」と「吹き替え版」の両方を観ます。
映画の内容は同じでも、字幕か吹き替えかで声とか言い回しも違うし、その人の印象も変わってきますからね。これも洋画の楽しみの一つです。
「原作を読みたいなーとは思っているんだけどなかなか読む機会がなくて」という方は今が大チャンスです。映画と原作を一気に堪能しちゃいましょう。
「小説も読みたいけど、映像版を観ちゃってトリックも真相も知ってるんだよねー」という方もご安心を。映像版と文章で読むオリエント急行は全く別の楽しさがあります。
おわりに
一体これまでに何度読んだのか分からないくらいの『オリエント急行殺人事件』ですが、今回の新訳版もまた思いっきり楽しめてしまった。
やっぱり訳が違うと同じ作品でも味が変わってくる。とても新鮮な気持ちで読めました。
これで準備は万全。
あとは12月8日(金)の映画公開を待つだけだー!(゚∀゚*)

コメント
コメント一覧 (4件)
ああ~良いですねえ。
列車ものの最高峰ですよね。
本当にクリスティは探偵小説の「探偵」の部分も「小説」の部分も優れています。
残念ながらアクロイドもオリエントもトリックを先に知ってから読んだり観たりしたのですが、結局面白かったです。
それと訳って不思議だなあと思うのです。
あまりにも古めかしくて読みにくい筈なのに何故か没入してしまってすらすら読んでしまったり、訳によって読み応えは違います。
追伸:
随分前にご紹介されていた「毒見師イレーナ」を偶然見つけて即買って読みました!
超面白かったです。
また良質なファンタジーのご紹介を期待しちゃいます。
まさに、列車ものの原点にして頂点と言いますか、それくらい素晴らしい作品ですよね。
そうなんです、たとえ結末がわかっていたとしても楽しめるのがクリスティの凄さ。何度読んでも面白いものは面白いのです。
私も、同じ作品でも訳が違うとまるで違う作品のように感じられるから好きなんですよね。なので好きな作品の新訳版だ出るとつい買ってしまう。。。
おお!『毒見師イレーナ』を!
あれ、本当に読みやすくて面白い秀作ですよね。翻訳ものとは思えないほどすらすら読めるし。お気に召していただけて嬉しいです。
久々に王道ファンタジーを読むと、普段ミステリーばっかり読んでいるその反動なのか「ああ、やっぱりファンタジー小説良いなあ」ってしみじみ思うんですよねえ(*´ω`)
見ます。見ます!初日に見ます!初めて読んだ海外ミステリーですから。これ読んだあとすぐにアクロイドもいっちゃおうと思ったのですがウィキでもろネタバレくらっちゃいましたね。苦い思い出です。
映画楽しみですね。
ですよねー!楽しみですよねー!!
しかも映画版は映画版でかなり面白そうです。
初めて読んだ海外ミステリーとは!そりゃあ特別な作品にもなるわけですね。初めてがオリエント急行とは、実に良い読書体験ですなあ。。
アクロイドはネタバレ蔓延してますからねー笑。ネタを知らずに手に取ることの方が難しいんじゃないかと思っております(´∀`*)