6歳の娘サラを誘拐されたガブリエラ。
犯人から要求されたのは、身代金の50万ドルと、極秘ファイルの「オクトーバー・リスト」だった。
そのような大金、どうやって工面すれば良いのか。
そもそも「オクトーバー・リスト」とは一体何なのか。
混乱するガブリエラに代わり、知人のダニエルとアンドルーがサラを助けるために犯人との交渉に行ってくれた。
結果を待つガブリエラ。
しかし彼女の前に現れたのは、ダニエルでもアンドルーでもなく、銃を持つ犯人だった―。
ラストからスタートへとさかのぼっていく、斬新なミステリー長編。
白と黒とが反転したような世界に隠された、驚愕の真実とは?!
最終章から始まる物語
まず最初に申し上げておきたいのが『オクトーバー・リスト』は途中で断念せず、必ず最後まで読んでいただきたい、ということです。
というのも、本書は通常とは逆方向に話が進んでいくからです。
最終章である36章から始まり、次が35章、そして34章と、時間をさかのぼる構成になっているのです。
そのため読み始めると、本来なら序盤のはずが、いきなりクライマックスです。
なぜか犯人が目の前にいて、銃を手にして笑っています。
読者は状況がわからず、完全に「???」ですよね。
状況どころか、登場人物や人間関係などもよくわかりません。
もどかしいのですが、しかしここで本を閉じてはいけません。
これは結末から語られている物語であり、読み進めていくことで、必ず序章に行きつくからです。
具体的には最後の2章が、それに当たります。そこまで来ると、全ての謎が完全に解けます。
読んだ瞬間の開放感と言ったらもう!
脳内の霧が一気に晴れるかのように、あらゆることに合点がいき、とてつもなくスッキリします。
結末から語られるという異色の作品ですが、真相を楽しむという意味では、これはまさしくミステリー!
しかも読み終えたら、改めて結末を見たくなり、二度読みすること必至です。
つまり『オクトーバー・リスト』は、繰り返し読まずにはいられないほどの、ミステリー傑作と言えるのです。
ぜひ「???」に負けず、読み通してください!
サプライズの連続がたまらない
『オクトーバー・リスト』は、わずか3日間の物語です。
それが36章にもなっているのですから、1章あたりの経過時間は、数時間程度です。
つまり読者は、章を追うごとに数時間ずつさかのぼるわけです。
そのため何かが起こった時には、次の章でその起因が明らかになります。
ネタバレになるので詳細は伏せますが、たとえるなら、
「物をなくした。いつどこで落としたのか、わからない。しかし次の章を読むと、まさに落とした瞬間が描かれている」
といった具合です。
このように数時間刻みで逆行するので、そのたびに原因となる部分が見えます。
ここが、たまらなく面白い!
少しだけ例を挙げておきますと、途中で主人公のガブリエラが、刑事を殺してしまいます。
またガブリエラの娘の指が、送られてきたりもします。
このあまりにもショッキングな展開に、読んだ瞬間は「ギョッ!」とします。
しかしすぐ後の章で、原因やいきさつが見えるので「あぁ、そういうことだったのか!」とスッキリするのです。
『オクトーバー・リスト』は、その連続です。
サプライズとタネ明かしとが小刻みに出てくるので、読みながら全く退屈しません。
そしてこの数時間おきのサプライズを超えた先には、全3日分の出来事を集約した、超特大のサプライズが待ち構えています。
それが最後の2章分ですので、ぜひそこまでたどり着いてください。
サプライズが大きい分だけ、タネ明かしを盛大に楽しめますよ!
どんでん返しが好きならこの作品!
『オクトーバー・リスト』の作者ジェフリー・ディーヴァー氏は、アメリカのベストセラー作家です。
特にミステリーや犯罪小説を多く執筆されていて、それらは25ヵ国語に翻訳され、世界150ヵ国で読まれています。
これだけ世界的に脚光を浴びている作家ですが、その理由はなんといってもどんでん返しがすごいこと!
巧みな構成と微細な心理描写とで読者を騙し、最後の最後で、それまで隠していた真実を盛大に披露するのです。
このマジックショーのように見事な作風から、ジェフリー・ディーヴァー氏は「どんでん返しの魔術師」と呼ばれているくらいです。
そして本書『オクトーバー・リスト』は、このジェフリー・ディーヴァー氏らしさがギュッと詰まった作品です。
とにかく構成もサプライズも巧妙で、読後には
「そうだったのか!すっかり騙された!」
と、笑顔で氏に拍手喝采したくなるほどです。
そのため、どんでん返しが好きな方には、『オクトーバー・リスト』はかなりおすすめの作品です。
ぜひ隅々まで丁寧に読み込んで、氏の仕掛けた全ての罠に引っかかってください。
できれば、取るに足らないような出来事にも注目しておきましょう。
さらに、各章に挟まれているモノクロ写真もしっかり見ておくと良いでしょう。
そうすることで『オクトーバー・リスト』はより楽しく、より興奮して読むことができますよ。
そして読み終えたら、目次が出てきます。
普通、目次というと物語が始まる前に出てきますが、『オクトーバー・リスト』はラストから逆行する物語なので、一番最後に来るのです。
この目次がまた、たまらなく傑作です!
これほど素晴らしく面白いと思える目次が、この世に他にあるでしょうか?
そのくらい天晴れなので、これはもう本当に必見ですよ。
もちろん最初に見てはいけません。
全てを読み終えた後の、最高のご褒美として、大事にとっておきましょう!

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