国内ミステリー小説

市川哲也『屋上の名探偵』- 鮎川賞作家が爽やかに描く連作ミステリー

重度のシスコンである中葉悠介は、姉・詩織の水着が盗まれたことに怒り心頭。

しかし被害者である姉は騒ぎを大きくしたくないのだと言う。

そんな思いを知りつつも、事件に首を突っ込んだ悠介は現場に残された上履きから容疑者と思われる人物を割り出した。

だが容疑者と思われる人物には完璧なアリバイが存在した。

困り果てた悠介は東京からの転校生で名探偵と噂の蜜柑花子を頼ることに。

屋上でお弁当をつつく彼女に声をかけるが、彼女は注目されたくないのだと言う。

そこで彼女は探偵役として悠介を立てる。

無口だが抜群の推理力を持つ彼女が見出す結末とは一体?

恋愛がらみの学内事件の謎が解き明かされる―!

蜜柑花子の学生時代を描く連作短編集

「探偵とは何か?」をテーマにした「名探偵の証明」シリーズが前作で終了しました。

今作は、「名探偵の証明」シリーズで活躍していた蜜柑花子の学生時代を描く新しいシリーズ作品の一作目です。

主人公の「おれ」は学園の誰もが憧れる姉のことが大好きです。

ある日そんな姉の水着が盗まれるという事件が起こりました。

主人公は、クラスの地味な転校生、蜜柑花子に捜査を依頼。

蜜柑花子がどのようにして今現在の探偵となったのかを知るきっかけになる物語が見られます。

今作は連作短編形式でストーリーが進みます。

「みずきロジック」は発表済みの作品ですが、残りの「人体バニッシュ」「卒業間際のセンチメンタル」「ダイイングみたいなメッセージのパズル」の3作は書き下ろしです。

いずれも学園内で起きたちょっとした事件に着目し、主人公と蜜柑花子が次々に解決していきます。

「名探偵の証明」は探偵とは何かを読者に問いかけるような内容だったため謎解き要素は薄めでした。

今作は少年少女の成長を描くことがテーマにあるため、やはり謎解き要素は薄めです。

舞台が学園ということもあり、ミステリー小説の中でもかなり軽めに読める内容になっています。

個性豊かなキャラクターにも注目

蜜柑花子はある理由から目立つことを避けたいと思っています。

学園で起きた事件を解決すれば目立ってしまうことは必然であるため、推理は自分がおこない、探偵役を主人公に押しつけます。この二人のやりとりもユニークです。

現在はアイドル兼探偵として活躍している蜜柑花子の学生時代の秘密はもちろん、その周囲を取り巻く個性豊かなキャラクターにも注目です。

主人公は姉を溺愛していますが、そのエピソードが毎回登場するのもほほえましく読めるでしょう。

蜜柑花子の成長とともに主人公がどう成長していくのかについてもぜひチェックしてみてください。

他にも、学園内の恋愛模様などが描かれています。

ささいなことが事件のきっかけだったりトリックだったりするため、細かい部分までよく読みこみながら進めることをおすすめします。

ミステリー小説でありながらアニメに登場するようなキャラクターの性格やコメディな描写などもありますので、普段あまり小説を読まない方でもサクサク読めます。

ライトノベル系のミステリー小説をお探しの方にも満足していただける作品です。

青春ミステリー小説を読みたい方におすすめ

作者の市川哲也氏は2017年に鮎川哲也賞を受賞してミステリー作家としてデビューしたばかりの若手の作家です。

現在発表されているのは「名探偵の証明」、「名探偵の証明 密室館殺人事件」、「名探偵の証明 蜜柑花子の栄光」の三作からなるシリーズと、今作「屋上の名探偵」、次回作の「放課後の名探偵」の二作です。

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いずれも世界線や登場人物は共通なので、途中から読むよりは一作目から読み始める方がいいでしょう。

探偵という職業が社会的に認められている世界、その世界における探偵の存在意義などをある程度把握しながら読み進めることができます。

いずれもミステリー小説でありながらミステリー部分に新たな驚きや斬新なトリックが使われることはなく、定番だったり少し無理があったりするような内容です。

ですがその分人間ドラマに重きを置いた内容になっているので読み応えもあります。

探偵について、ミステリー小説についてなどが言及されており、ミステリー小説好きな方ほど考えさせられる部分があるでしょう。

ミステリー小説を読みたいけどちょっと軽いノリのものを読みたい、息抜きに読める短編作品を読みたいという方にもおすすめです。

今作が気に入ったら次回作『放課後の名探偵』もぜひチェックしてみてくださいね!

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anpo39
年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)
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