今回は、先日2016/10/28に発売された貫井徳郎さんの新刊『壁の男』のあらすじや感想などを。
貫井さんといえば『慟哭』を始め、『プリズム』や『乱反射』などちょっと普通じゃない後味を残してくれる私も好きな作家さん。
そんな貫井さんの久しぶりの新刊です!ワクワクしないわけがありません。
タイトルは『壁の男』。
帯には「彼はなぜ、絵を描き続けたのか?」などと書いてありますし、すでに面白そうな雰囲気が溢れ出していますね。
早速、ご紹介させていただきましょう!(* >ω<)=3

貫井徳郎『壁の男』
栃木県に位置するとある町がすごいことになっている。
以前、フリーライターの鈴木はそんな情報を耳にしていた。
町の家や壁になんとも下手な「絵」が描かれているのだ。
最初の頃は馬鹿馬鹿しいとしか思わなかった鈴木も、あるテレビ番組を見て衝撃を受ける。
子供でももっと上手く描けるだろうというレベルの絵。その下手な絵が、町全体を覆い尽くす勢いで描かれている。
これはただ事ではない。描き手にあって真相を聞かなければ。
そう思った鈴木は即座にその町へ向う。
そしてそこで目にしたのは、異様とも思える光景だった。
塀には人、車、キリン、が確認できる。家の壁にはやはり人、そして像や熊らしきものがあった。赤を背景に、白や黄色の線で絵は描かれている。キリンは黄色、熊は黒というわかりやすい色で塗られているが、人はなぜか青だった。
濃淡はなく、全体に一本調子である。だからそれはどう見ても、子供の落書きのようだった。
『壁の男』P.6より引用
書いてみました。

こんな感じでしょうか。
子供の絵とは、時と場合により不気味に見えることがあります。
もし私が深夜にこの町に迷い込み、このような絵が町全体に描かれていたらきっと全力で逃げ出すでしょう。
個人的にそれくらいには不気味です。
で、それから町の人に話を聞き、その絵を描いたのは「伊刈(いかり)」という人物だということがわかります。
さっそく伊刈の家に訪問する鈴木。
しかし玄関の扉は開けてくれたものの伊刈の口数は少なく、結局重要なことは聞き出せずに伊刈は家の中に入って行ってしまった。
悔しさが残る鈴木は、なんとかもっと話を聞き出そうと奮闘し始めますが・・・。
これは一人の男の人生を描いた物語。

あらすじだけ見るとフリーライターの鈴木が主人公のように見えますが、今作の主役は完全に伊刈です。
これは、伊刈という一人の男の物語です。
というわけで、序章を過ぎるとほとんど伊刈の視点で物語が進められていきます(途中鈴木の話も挟みつつ)。
メインとなる謎は帯にも書いてあった通り、
「彼はなぜ、絵を描き続けたのか?」
ということになります。
こんな下手な絵を、なぜ町中に描くことになったのか。
これが気になりすぎて最後まで一気読みさせられることになります。
ラストもさすが、貫井さん。
ではこれはミステリー小説か?
というと、少し違うように思います。
これは一人の男の人生の記録でした。
もちろんその人生をだらだら書き綴るのではなく、貫井さんらしい見事な展開力でグイグイ読み進められてしまう構成になっいます。
そしてそのラスト。
ズバリ、なぜ伊刈が絵を描くことになったのかが明らかになるのですが、
その読後感はもうね、なんというか、言えませんよこれは。
ああ貫井さん。
今回はこういうパターンでくるのね。
って感じです。
ブラックに落とすのか、心をエグってくるのか、驚愕させるのか、それとも別のパターンか、、、あえて言わないでおきましょう。ふふふ(〃´∀`)
おわりに
というわけで今回は、貫井徳郎さんの『壁の男』をご紹介させていただきました。
久しぶりの新刊というだけあって期待値が高かったのですが、見事にその期待に答えてくれる良い作品でした。
この読後感はしばらく私の胸に残ることでしょう。
ぜひ、この言葉にできない読後感を味わっていただければ幸いです。
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それでは良い読書ライフを!(* >ω<)=3