出た。これヤバイやつだ。
メフィスト賞の中でもかなりメフィストしているやつだ(?)。
まず言えるのは、絶対に賛否別れるし、この設定が無理という方にはとことん無理な作品だということ。
人によっては「ふざけるな!」と怒鳴ってしまいたくなるかもしれません。
でも、私は大好きです。絶賛します。Amazonで評価をつけるなら、星5個つけます。
断言しましょう。これはメフィスト賞の中でも特に傑作だと(あくまでメフィスト賞として)。

柾木政宗『NO推理、NO探偵?』
「思ったんだけどさ」
「うん」
「アイちゃんがこれから、もっと有名で立派な名探偵になるためにさ」
「ためにさ?」
「推理って、別にいらなくない?」
P.15より
名探偵・美智駆アイと、その助手であり熱烈な応援団である取手ユウ。
アイはいつものように華麗なる推理を披露し、見事に犯人を突き止めることができました。
しかし去り際、犯人に催眠術をかけられ、アイは推理ができないようになってしまいます。
「うん。どうしよう私、頭が働かなくなってる!」
「これはナイスタイミング!これで推理をしない名探偵の登場だね。あ、無能と化したことだし、大至急アイちゃんを『名探偵』って誇大表示で呼ぶのはやめないと。そうしないとJAROが来ちゃう」
P.18より
ここからが始まり。
というわけで今作は、
推理ができなくなった探偵とその助手、という女子高生コンビが出くわした4つの事件+最終話で構成されているのですが……。
第1話『日常に謎っぽいやつ』
男の子はなぜ道に石を並べていたのか?という謎から始まる「日常の謎」っぽいやつ。
第2話『アクションミステリっぽいやつ』
3階から人が落ちてきて、それをきっかけに暴走族同士の争いに巻き込まれてしまう「アクションミステリっぽい」話。これはミステリなのか。
第3話『旅情ミステリっぽいやつ』
河川敷で女子大生の死体が発見される。手には「ふ菓子」の粉末が付着していた。そんな感じで「旅情ミステリ」を目指す二人の物語。
「今回のミッションは旅情ミステリでいこう。うちらで埼玉県川越市に行ってみようよ。その過程で旅情をうまく交えながら事件を解決しようよ!事件の舞台を歩いて、間違った仮説立てたせいであっちこっち歩いて旅情を感じて、なぜか最後はさりげないヒントを元に真相まで一直線!みたいな?」
P.108より
第4話『エロミスっぽいやつ』
花巻家という大豪邸で、「鍵のかかった部屋で首を吊った全裸の女性の死体」が見つかった。そんな事件をドタバタコメディで解決していく。
最終話『安楽椅子探偵っぽいやつ』
ネタバレになるので何も言えません。が、これがメインディシュ。
この最終話のための作品、と言った感じです。
はーなるほど。そうきますか。さすがメフィスト賞。ぶっ飛びました。
196ページまで正直辛かった。
推理できなくなった探偵がどうやって事件を解決していくの?ってところも見どころかと思いますが、正直どうでもいいです。一旦忘れましょう。
白井智之さんが「196ページを読むまでは舐めてました。本当にごめんなさい」というコメントを残されていますが、私も196ページまで本当にダメだと思っていました。
漫画のように読みやすいし、キャラクターも立ちまくりでアニメを見ているようでスルスル読めるんですけど、ミステリとしてあんまり面白くない。
196ページって、最終章です。最後の最後です。
ここまでたどり着くのに本当に長かった。途中で投げ出そうかと思いました。「ああ、これ完全に合わないやつかもしれない」ってギリギリまで思っていました。
でも、私の考えが甘かった。やられた。
196ページ辺りから「お、そういう感じ?」ってなってきて、「うわああ、メタい、メタすぎるよお!!」と興奮してしまう展開が続いていくのです。
途中でやめなくてよかった。1話から4話があんな感じだったのは、このためだったのか。
主人公たちのノリとキャラがキツイ、という意見もわかりますが、途中で諦めるのはもったいないです。頑張ってください。
完全に読者を選ぶ、メタすぎる作品
帯に「メフィスト賞史上最大の問題作」とありますが、あながち間違っていないと思います。
何度もいいますが、最後の最後まで「これ大丈夫かな……」と心配でした。
途中で本を投げつけたくなるかもしれないし、これを傑作だと言うなんてどうかしている!と思われるかもしれませんけど、私は全力でオススメしますよ。
とにかく、面白いと思っても思わなくても「こういう作品もあるのか」と体験できるだけでも貴重でしょう。こんなの滅多に味わえませんから。というか、2度と出会えませんから。

コメント
コメント一覧 (6件)
僕も読みましたよ読みましたよ僕も。
このブログで120%紹介されるなと確信していました。絶賛されるだろうなとも。
いやあ、最高にメフィストしてますよね。僕もこんなのが大大大好きです。最終話の興奮たるや凄まじいものがありました。このネタのためにここまでするかと(笑)。そこまでしちゃうのがメフィスト賞ですよね(笑笑)。同じシリーズで出るとしたらまた読んでみたいです。
アラシナオさん、やはり読まれてましたか!
というか、私の好みが完全にバレていますね笑
はい、絶賛しちゃいました。ほんと最高のメフィストですよね。最終話でこれだけニヤニヤしたのも久しぶりです。いやあ、このパターン、好きですわあ。
私も、同じシリーズが出たら絶対読んじゃいますね。2度と使えないやつですので、次回作はどんな感じになるのか、今からワクワクします……(´皿`●)
なんかどんな作品か全然見当つかないです(笑)
196ページに何がおこるの!?(笑)
ん~。まあ、メフィスト賞ならではなのでしょうか、、
気にならないって言ったら嘘になる(笑)
いやあ、これ、なかなかぶっ飛びますよ.笑
196ページから「うわあ」ってなります。
まさにメフィスト賞ならではです。その中でもかなりの問題作かと。
ふっふっふ。ぜひ気になってください(´∀`*)
記事を見ていつか読もうと思っていましたが、古本屋さんで見つけて購入、一気読みしちゃいました。
いやー、僕は好きです。最終章より前も、結構テイストは好きです。まあ、ラストの展開もあってかそれぞれの章は軽くなってら気もしますが、読みやすいですし、あの二人のキャラクターのやり取りは読んでいて楽しかったです。
メタさの極みとも言えるラストですが、読む価値はありますね!同じラストは使えないにしても、また本作のキャラクター達のやり取りは違う作品で読みたいです!
メフィスト賞、恐るべし!って感じでした。
とうとう読んでしまいましたか!この問題作を!笑
いや、でも好きっておっしゃっていただけてよかったです。私もこのパターンは大好きなんで。
キャラクターもいいですし、あのメタメタなラストは十分に一見の価値がありますよね!
ですねー私も密かにシリーズ化希望しているんですが、あれ以上のラストってどうなるんでしょう笑