『法月綸太郎の冒険』は
1.「死刑囚パズル」
2.「黒衣の家」
3.「カニバリズム小論」
4.「切り裂き魔」
5.「緑の扉は危険」
6.「土曜日の本」
7.「過ぎしに薔薇は……」
の7篇からなる短編集です。
法月綸太郎シリーズの中でも特に名作が多い短編集で、このシリーズは長編より短編の方が面白いんじゃないか、とすら思ったりしております(1番の傑作は長編の『頼子のために』ですけどね)。
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特に「死刑囚パズル」は法月綸太郎シリーズの真骨頂と言いますか、シリーズ短編の中でも特に傑作でしょう。
これは本格ミステリ好きなら読まなきゃ損!ってことでサクッとご紹介です。
『死刑囚パズル』
ホワイダニットの傑作です。
死刑が確定した有明という男がいました。
その死刑執行の日。
手錠をはめられて目隠しをされ、踏切台の上に立たされた死刑囚は首を縄に通される。
あとは足下の板がパカッと開いて落下し首を吊って死を待つのみ。
しかし。突然有明は苦しみ出し、体を痙攣させ動かなくなった。
有明は首を吊る直前に殺されたのです。
その後の調査で、有明が最後に飲んだお茶の中にニコチンが混入されていたことが判明したのですが。
もうお分かりの通り、【死刑が確定し、今まさに死刑執行される直前の有明をなぜ毒殺する必要があったのか?】がメインの謎となっています。
魅力的すぎる謎ですね。
もちろんそれだけでなく「なぜ1ヶ月前でも1週間前でもなく、今日でなくてはならなかったのか?」という謎も浮かび上がってきます。
その後の調査であらゆるピースが集まっていき、それらを論理的に考察し、パズルを完成させるように真相に行き着く倫太郎の推理は必見です。
華麗すぎてゾクゾクします。
『黒衣の家』
これは短い話ですが、ホワイダニット(なぜやったのか)の名品です。
とある老人の葬式が行われ、その一月後に今度はその妻が毒殺された。
その子供たちが怪しまれますが、彼らにはアリバイがあり犯行は不可能と思われる。
唯一アリバイがなかったのは孫の澄雄だが、彼はまだ小学生ですし何より動機がない……。
初めてこの短編を読んだとき、最後のページを読み戦慄したのを覚えています。
のちに「サイコパス診断」みたいな心理テストで友人に似たような話を聞かれた記憶があります。
この短編が元ネタなんですかねえ。
『カニバリズム小論』
大久保信という男が殺人を犯した。
しかも大久保はその死体をバラバラに解体し、五日間に渡ってその肉を食ったのです。
犯人も被害者も殺害方法も全てわかっており、【なぜ死体を食べたのか】という謎のみに特化した短編。
タイトルに「小論」とあるように、カニバリズムに対しての法月綸太郎の知識が存分に披露され、それだけでも十分に興味深く面白いです。
そして最後、法月綸太郎が推理した上で行き着いた【大久保はなぜ死体を食べたのか】の理由に戦慄するのです。
さ ら に。
最後の最後で「うわあ!」と叫んでしまうようなサプライズが。
このような展開は大好物です。
これを読めば法月綸太郎シリーズにハマる。
他の短編もクオリティが高いですが、この3篇が特に好きですね。
個人的な好みの問題を抜きにしても、特に優れた短編だと言えます。
未読であればぜひ。


コメント
コメント一覧 (2件)
いやあ、夏はやっぱり新本格。色々と読み返しながら、一人ニヤニヤしてしまいますねえ。法月綸太郎シリーズは、サクッと謎解きの美しさに触れたい時には本当にピッタリですよね。短編集も長編もどちらもクオリティが高いですし。夏の間にちょっとまとまった時間ができたら、がっつり生首に聞いてみろを楽しもうと思います。
新本格読み返してニヤニヤするのわかりますわあ。
法月綸太郎シリーズの短編はやっぱり何度読んでも面白いですね。改めて思いました。
今は新冒険を読み返してます。
あー生首に聞いてみろも読み返したくなってきましたー。がっつり読んでみますかね( ´∀`)